ブルガリアン・ダイアリー
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滞在24日目 リラ登山

2012年8月1日、滞在24日目。

山小屋の朝、目覚めがいい。
起きたらさっそく顔を洗って、出かける用意をする。
ニコライさんは僕たちの5人のうち真っ先に準備を済ませて、
「コーヒー飲む?」と聞いてくれた。

ニコライさんはあまり笑う方ではないけれど、
遠慮がちな僕に気を遣ってくれて食べ物を進めてくれたり、
日本のことを質問したりして会話を持とうとしてくれた。
見た目はこわもてでも、心は優しいブルガリアの男だ。

そんな心優しいニコライさんは、息子のニコライ君のしつけには容赦ない。
まだ眠たかったのか、むずがるニコライ君に、「ゆっくりしてないで早く着替えなさい!」と、
父親のニコライさん。
それでもぐずるニコライ君。
そして、父ニコライはとうとうお尻をバシッとたたいて、「言うことを聞きなさい!」
といったことを発してニコライ君をせかす。
ニコライさんは僕に、「ちょっとはずしてくれないか?」というようなことを言って、
僕は部屋を出た。
(言葉の意味ははっきりわからなかったが、表情とその場の空気を読んだ。
空気を読むというのは日本独特のものではなさそうだとこの時に感じた。)
僕が部屋を出た後、きつ~いお仕置きがなされたのだろう。

しばしの後、僕はコーヒーを飲んでしまい、
ニコライ父子も部屋から出てきて、みんな揃って山小屋を出発。
緩やかな坂道を歩いて、リフト乗り場に向かう。
リフトは片道10レヴァ(約600円)。

リフト待ちの間に、Zはこのように話した。
「リフトは2人乗りだ。ニコライ君とニコライさんは一緒に乗るだろう。
アンナはリフトに乗るのが怖いと言っているので私が一緒に乗ってあげることにする。
悪いけど、あなたは一人になるがそれでも構わないか?」と。

それはいやだといえず、男たるもの、一人でも乗ったろかい!と強がって、
"Няма проблем!"(問題ないよ!)と返事した。
順番が回ってきていよいよリフトに乗る。
リフトに乗るのは初めて。
自分はブルガリア人のおじさん(40代か50代)と相乗り。
終点まで黙っているのも感じ悪いかなと思って、
「ブルガリアの方ですか?」ときいた。
「そうだ。君は学生か?どこから来たのか?」と返事してくれ、
リラ山地には何度か来たことがあるということ、
リラ山地の景色はとても美しいと話してくれた。

荷物を落とすことがないよう、ギュッと両腕で押さえる。
下をのぞけば、ずいぶん下の方に地面が見える。
しばらく乗っているうちに、足をぶらぶらさせる余裕が出てきた。
リフト乗車は約15分間。

1日かけて登ると聞いていたのだが、これほど長い距離、そしてこれほど険しい道を
登るとは想像していなかった。
石がごろごろを転がっている場所、草が生えていて滑りやすいところ、
登りにくいところが多々あったけれど、とにかく前へ進もうと、
ペースを保ってみんなで進んでいく。

荷物や登山客を乗せた馬の一団がすれ違ったり、
山小屋があるところではトイレを済ませたり、
とにかく歩く、登ってゆく。

リラ山地には「リラの7つの湖」という湖水地帯があって、
僕たちは7つの湖を見るために歩いていった。
湖を1つ目、2つ目、3つ目と進んでいくにつれて標高は高くなり、
天気の変化がめまぐるしい。
スカッと青空が広がっていたかと思えば、霧が立ち込めて視界がひどく悪くなったり、
雨が降ったり、冷たい風が吹いたり。
「山の天気は変わりやすい」ということを、この時に初めて知った。

3つ目か4つ目の湖を過ぎたあたりで朝食。
昨夜の鶏肉の網焼きをパンで挟んだもの。
アンナさんが昨夜のうちに準備してくれていた。
さすが、レストランを切り盛りしているアンナさん。
手際のよさと、さりげない心遣いに感激。
(翌日、アンナさんとお兄さんのセルゲイさんのお店でランチをとった。
スタンダードなメニューだが、実に美味しい。繁盛しているようだった。)

チキンサンドとミネラルウォーターで朝食を済ませ、
食後の余韻に、来た道や遠くの湖を眺める。

腰を上げて、さらに先へ進む。
天気の変化が激しくなって、先に進むのが難しくなってきた。
6つ目の湖を見たところで、ニコライさんが、「先に進むのは時間がかかりそうだ。
7つ目は残念だけどあきらめよう」と話していた。
この時点で、それまで登ってきた中で一番高いところにさしかかっていた。
標高は2400~2500m。

7つすべて見れないのは実に残念だったが、来た時と違うルートを歩いて
近くの山小屋に向かい、昼食の時間。
相変わらず注文が下手な僕だったが、この時は案外すんなりと注文できた。
注文したのは、チキン・スープと茹でたジャガイモ。
本当はパンも注文したかったが、うまく言える自信がなかったため、あきらめた。
山小屋のテラスには、昼食をとる人たちでにぎわっていた。

昼食を済ませてさらに歩き、帰りのルートを進む。
リフトの下を曲がりくねった道があり、そこを下っていく。
そして、朝リフトに乗った地点に戻る。
なだらかな傾斜のついた原っぱに寝転び、空を見上げた。
こんなに爽快な気分は、なかなか味わえるものではない。

ニコライさんの車を停めていた駐車場に行き、一路ドゥプニッツァ駅へ。
駅に着いて、アンナさん一家と別れる。
僕とZはバスに乗り、ソフィアに戻る。
ソフィア中心部にある「ロシア記念碑」の前でバスを降り、ゆっくり歩いてNDK前の
アパートに帰る。
Zはあまり食事する気にならないようで、帰る途中で小さな食料品店で
切り売りのピザとアイスクリームを買う。

夕食を済ませて一息ついているうちに、元気が戻ってきた。
ワインを飲みながら話し込んでいるうちに、日付が変わっていた。
話は尽きないが、いいかげん寝ることにした。

心地よい疲れと、山を駆け巡った充実感を感じながら眠りに落ちた。


(写真1:7つの湖の1つ)
ブルガリアン・ダイアリー-езеро


(写真2:山小屋 リラの登山道にはいくつか山小屋がある)
ブルガリアン・ダイアリー-хижа


(写真3:リフト リラ国立公園の公式ウェブサイトからお借りしました)
ブルガリアン・ダイアリー-лифт
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