楽曲解説
本日リリースのアルバム「LOST ASH」、もう聴いていただけたでしょうか。今作がバンドの最後の音源であり、6年間の集大成といえる作品なわけだけれど、僕LOST ASH Dyeの最後の仕事として、アルバム楽曲解説をさせて頂きたいと思います。
総評
今作のリリースが決定したのは解散決定後だったのだけれど、はじめは純然たる3rdアルバムを作ろうと思っていました。が、結果的には”最後”という意識が色濃くでている仕上がりになったかと思います。全曲通して、アレンジ、ミックス、マスタリングとやったわけだけれど、色々なレコーディングスタイルを試してきましたが、やっぱりこれが一番いいやと再認識しました。自分の理想は自分で叶えるしかありません。(お金があれば別)大変だけど心から納得いく作品ができました。大抵、完成後に、もっとこうすればよかったとか、考えるんですが、今作はほとんどなかったのがその証拠かと思います。
また、ライブバンドという立場上、実演するときの場合を想定しないということは通常ありえないわけだけれど、今作に限り実演の機会自体がないことが分かっているという、ある意味特殊な状況での製作だったので、少なからず、いや、かなりその影響は受けての作品構成となっています。そういった意味でも、最後に制約なく純粋にやりたいことだけやってるアルバムなのかと思います。
1.DAMN music&lyrics Dye
個人的に、1曲目にSEを入れる風潮は好きではありません、とは何度も言ってきたんだけれど、その通りに、アルバムへの期待感が一番高いときに”アッパーな新曲”、これ鉄板だと思うんですね。2曲目への布石、アルバム本編へ繋がる重要なもの、みたいなレビューをやたら見かけるんですが、1曲にしたらいいんじゃないかと思います。
この曲は、直訳でチクショウ!みたいな意味ですが、歌詞はその通り、恋も仕事もなかなかうまくいかないねって内容です。アレンジは原点回帰をテーマに、音色や打ち込みの入れ方など、初期のLOST ASHを強く意識しています。今の感性ならこのシンセの使い方はしませんね多分。過去の音源を知っている方は、シンプルに、あ~LOST ASHって昔からこんな感じだよね、と思えたら正解です。
2.UNDER THE SKIN
music&lyrics Dye
ターミネーターへのオマージュを込めた1曲。イントロからAメロに終始使われているリズムはあまりにも象徴的ですが、イントロのストリングスもほぼ原曲のままオマージュ。また歌詞も映画ターミネーター2内で出てくるセリフがふんだんに盛り込まれています。一番のこだわりポイントはイントロ前の「GET DOWN →ガチャリ →バーン」のブリッジ。新型ターミネーターT1000扮するロバートパトリックと旧型ターミネーターT800扮するシュワちゃんに、ジョンコナーが挟み討ちにあうシーンをそのまま再現。映画ターミネーター2の序盤の名シーン、観れば全てが分かります。サビは90年代らしいメロディラインとブラスアレンジですね。ホントに自分の趣味が満載で今聴くとある意味笑えてくるくらいです。でも曲作りで遊ぶとはこういうことだと思うんですね。
3.BACK×FOWARD
music Dye lyrics Daiki
これはいわゆるA面感を意図的に押し出した曲です。このころには感覚や衝動で曲を作ることは完全になくなっていたので、非常に教科書的な曲といえるでしょう。イントロはサビのフレーズをギターでなぞり、Aメロはビートをきかせてノリよく、Bメロはハーフダウン+ラップ、サビは転調しておきまりの4-5-3-6進行。この手垢のついたテンプレ感には逆に僕のエンタメに対するストイックさを感じずにはいられません。細かいアレンジをいえば、イントロ入りやサビ入りで僕の単発の声をエフェクティブに使うのはエレクトロっぽいアプローチかなとか思いますが、そんなのはささいなことで、総じて感じるのは、ただただ王道。
4.Don't look back.
music&lyrics Sai
さて、今作一番の重い曲ですね。ベースフレーズ全てにサブベース(より低周波帯域を足したベース)を重ねクラブミュージックによせた低音重視のミックス。ベーシストが作った曲だからなのか、メロディを聴いたときにパッとこのアレンジの方向性が見えました。まあShowさんの曲と双極な位置づけにしようと思ってたので振りきる必要があったというのもあります。随所にスラップベースと、普段映画音楽に使われるようなリズム音源を複数重ねてとても重厚なブリッジパート(サビ前などに出てくる繋ぎの役割を果たすもの、橋渡しパート)がいくつも出てきます。ちなみにど頭の”はっはっはっは”の吐息は僕です、エロい。他人の曲はもともと頭に完成イメージがないので変なストッパーがかからずなんでもできちゃいますね。結果今作のキラーチューン的存在になったのではないかと思っています。
5.THE ROAD
music Dye lyrics Daiki
いつかよいタイミングで出せたらと思って作り置いていたメロディに今のバンドの現状から作った歌詞を載せて出来た曲です。一応リード曲になるのかな?終始明るさが前に出ていますが、どこか切なさも感じるようなメロディライン、キーも高めで歌も難易度高です。サビは前半と後半でコードふわりが変わり、メロディも繰り返さずに展開します。他にないしそれでいてキャッチー、個人的にすごくよいメロディラインが出来たと思っています。いい仕事してますね。
6.Seize Your Mind
music&lyrics Dye
これは知らない人には新曲に思えるかもしれませんが、6年前に無料配布したLOST ASH最初の音源であり、そのリアレンジ、再レコーディングバージョンです。ミックスしていて、やっぱり初期衝動は強いなと感じました。今この曲は、作れないとは言わないが作らない。なにが違うんだろう。作風が違う、そう感じました。確かにコード進行やアレンジ力は今に劣るんだけれど、それを払拭する”トガリ”がありますね。ギターのフレーズのテンション感が高い、歌が暗い、など。今とは違うトゲトゲしさが漂います。このころはギターが左右違うフレーズを弾くことが多いのも特徴の一つ。あまり打ち込みを入れず、洋楽のギターロックに傾倒していた時期です。時間は人を変えますね。
7.MESSAGE
music Dye lyrics Daiki
シングルは割愛。雑誌のインタビューみて。
8.LAST OF THE DAY
music Show lyrics Daiki
今作唯一のShowさんの曲です。Saiさんの曲と双極であり対極に位置づけることを意識したので全体的に優しい雰囲気の曲に仕上げました。上がってきた歌詞も切ない内容だったのでその思惑は驚くほどうまくいったと感心しています。終始使われているアコースティックギター、メインのギターの音色も普段と比べて歪みを抑えたクランチよりの音作り、LOST ASHには珍しいアプローチの曲です。イントロの英語のコーラスパートは僕の声なんですが、なんて言ってるか忘れました。ちゃんと意味ある言葉作ったはずなんだけどな。またDon't look back.と逆に、生のバンドサウンドのみで構成しようと意識しました。ロキノン臭がしますね。
9.KODOKUNOKAKERA
music Dye lyrics Daiki
シングルは割愛。雑誌のインタビューみて。
10.FEEL THE MOMENT
music Dye lyrics Daiki
この曲は1年ぐらい前にほとんどできていて、それに歌詞を載せて完成した曲です。ストイックなギターリフものを作りたくて、ほぼ打ち込みなしのバンドサウンドで勝負した曲です。アレンジってどうしても色々足したくなるんです、一見豪華になるし、すごい難しいことやってるように聴こえる。でも足し算だけだと歌のニュアンスが消えたりやギターの細かいフレーズを入れづらくなるんです。引き算して成立させるのは難しいんだけどそのぶん各パートが際立ってうまくいけばかっこいい、そこを狙った曲であります。特にこの曲はギターがいい仕事してますね。そのフレーズを作った僕はもっといい仕事してますね。また、シンプルにAメロ→サビというのもあまりなかったのでやってみました。個人的に気に入ってます。実はBメロを入れる入れない論争があったんですが。”あえて”っていう便利な言葉を発明した人、ありがとう。
11.STAY GOLD
music Dye lyrics Daiki
割愛
12.MILLIONS
music&lyrics Dye
アルバムラストを飾るバラードです。実質LOSTASH最後の曲となりました。LOST ASHのアルバムには全作必ず最後にバラードがくるという慣習がありまして(自分でそうしているだけなんだが)今回もそれを踏襲しています。そしてこの曲は1stのMY FAITHと2ndのTHE CHARMSに対するアンサーソングという位置づけで製作しました。MY FAITHで出てくる”道”というテーマと、THE CHARMSで描いたファンと僕らの関係。この2曲が前提となり、その回答、続きみたいな位置づけです。アウトロのギターソロもどこかMY FAITHソロの面影を感じませんでしょうか。そういった曲と曲の繋がり、一貫するストーリーを感じてくれたら嬉しいです。バンド活動6年間で、出会いや別れ、体験、愛、本当に”たくさん=MILLIONS”をもらいました。そんな数えきれないものをくれたファンのみんなへの感謝の気持ちを歌に乗せて最後に伝えたい、そんな歌です。
長らく描きましたが、いかがでしょうか。意外にこだわってるなと思う部分もあれば、そんな適当なの?って思う部分もあるでしょう。事実は小説より奇なり、そんなもんです。
以上、アルバム楽曲解説でした。