続々イスタンブール編。

 

 

そして4年後にまたここへ。

 

今回のイスタンブール行きには特別な目的がありました。それは、

 

 

 

「オスマン様式のセファルディの典礼歌を聴きたい」

 

 

 

というもの。

 

 

 

実は、イスタンブールのセファルディのシナゴーグでは、スーフィー音楽につながった様式で祈りの歌が歌われているんです。

 

 

 

 

スーフィーとはイスラム神秘主義。

 

 

白い衣装に身を包んだ男性が、駒のようにくるくると旋回舞踊を踊る、あれ。

 

 

”ああ、あれか”と思われる人も多いでしょう。

 

 

 

 

イスラムのスーフィー音楽とユダヤの祈りがつながってる?!

 

 

 

 

今の宗教情勢などからみたら、考えにくいことかもしれません。

 

 

でもこれが連綿とつながって来ているんです。

 

 

 

 

 

17世紀、オスマン帝国で安定を得たセファルディ。

 

 

今のブルガリアに近い、エディルネという街で

 

セファルディのラビたちはオスマン古典音楽、すなわちスーフィー音楽を学びました。

 

そして、自分たちの典礼にその音楽を応用した。

 

 

 

なので、旋律はスーフィー音楽、でも言葉はヘブライ語、あるいはラディーノ語という、

 

まさにミックスカルチャーのような現象が起きました。

 

 

 

 

この、オスマン古典様式で祈るセファルディのラビたちは”マフティリーム”と呼ばれ、

 

今に至るまで、その伝統が受け継がれています。

 

 

 

 

ぜひこれを聴きに行きたい。

 

 

でもイスタンブールのシナゴーグはセキュリティがとても厳しく、

 

 

然るべきところからの紹介がないと入れません。

 

 

 

アメリカのセファルディ系の友人が、ここに来て入れてもらおうとした時ですら、ユダヤ人の証として

 

 

「シェマ・イスラエルの祈りを唱えられますか?」

 

 

とセキュリティで尋ねられ、やっと入れてもらえた、というほどです。

 

 

 

 

そこで私は、シェディにお願いして、どうしたら入れてもらえるか聞いてみました。

 

 

 

 

 

そして紹介されたのがイセット・バーナという、セファルディのミュージシャン。

 

 

イスタンブールのセファルディのお世話役という、キーパーソン的存在。

 

 

彼に連絡して色々聞いてみると、あちこちに共通の知り合いが!

 

 

 

 

 

「トルコで起こったことはアムステルダムを経由して、サンフランシスコまで届く」

 

 

と例えられるセファルディ・ネットワークの広さ。

 

 

 

 

イセットとあった翌日はユダヤの祝日、ペサハ。

 

過越の祭りです。

 

ここでペサハのディナーに招待して頂き、いよいよ翌朝、シナゴーグでの典礼へ。

 

 

 
 
 

 ガラタ塔近くのネヴェ・シャローム・シナゴーグ。

 

 

 

数あるイスタンブールのシナゴーグの中でも最大規模のシナゴーグです。

 

 
 
シナゴーグの入口
 
 

 
反対側から見た様子

 

 

 

 ダヴィデの星のステンドグラス

 

 
セキュリティにパスポートを見せた後は、重い鉄の扉が4箇所、
 
 
それをくぐり抜けた後、ハザン(典礼歌を歌うラビ)の高い声が聴こえてきました。
 

 
 


 

 

 

宙に何かを描くかのような旋律、時々聴こえてくる微分音(ピアノには出せない、微妙な音程)

 

 

トルコのアザーン(イスラム教の礼拝前の呼びかけ)に似て、男性だけど高い音域の声。

 

 

 

 

 

色んな様式のユダヤの典礼歌を聴いてきたけど、

 

 

マフティリームの旋律には目頭が熱くなってきて、

 

 

時折現れるとても印象的な旋律に

 

 

「はあっ!」と息を飲んでは、ため息をついてました。

 

 

完全に挙動不審な人(笑)

 

 

 

 

 

 

典礼が終わった後は朝食が用意されていて、

 

 

「一緒においで〜」

 

 

と招待して頂きました。

 

 

メンバーのほとんどがラディーノ話を話せます。普段の生活ではトルコ語。

 

 

トルコでは英語を話せる人が少なめなので、ヘブライ語とラディーノ語でのやりとり(笑)

 

 

 

 
 
 

そして結局 「歌って〜」ということになり、歌う(笑)

 

 

歌うと一気に距離が縮まって、ヴェールが一枚剥がれたかのように雰囲気が変わります。

 

 

 

音楽って、そうやって人と人との間を繋げていくものなんだと、

 

 

旅で歌うことになるたびにそう感じます。

 

 

 

 

 

国や宗教レベルでの様々な違い、でもそれを

 

 

音楽はいとも簡単に乗り越えていってしまう。

 

 

”マフティリーム”の存在に

 

 

その証を見せられたような気がします。

 

 

 

 
ネヴェ. シャロームのメンバーと。