(後編)

 

(後日。戦闘したり、笑ったりするコマ)

カルナ『最近の俺の槍は調子が良い。元々そこまで

悪かった訳ではないが、小気味がいいまでに技が

決まっている気がする。気分だけで、こうも違うものだろうか?』

(戦闘シーン)

(ぐだこと目が合う)

(にっこりするぐだこ)

(笑うカルナ)

カルナ『マスターに応えて、人理を修正する。その為にこの槍を振るう!』

(敵を一撃で打ち砕くカルナのコマ)

(難なく戻ってくるカルナ)

カルナ「マス…(微笑み)」

ロビンフッド「マスター!!」

ロビン「見てたか!マスター俺の活躍!」

(ぐだこの髪をぐしゃぐしゃっとする)。

ぐだこ「ちょっとロビン!髪ぐちゃぐちゃにしないで」

ロビン「おっと失礼。少しオタクに似合う髪型にしてやろうかと思ってね」

ぐだこ「どんな髪型だ!!」

(呆然と見ているカルナ)

ぐだこ「それよりカルナさん。今何か言わなかったっけ?」

カルナ「…いや…」

(呆然顔のまま踵を返す)。

カルナ「気のせいだ」

ロビン「何だぁ~?」

(ツカツカ早足で歩くカルナ。横に回るロビン)

ロビン「おい、カルナ。オタクどうした?何か表情が険しいぞ?」

カルナ「どうもしない」

ロビン「どうもしない事ないだろう?どうしたよ」

(肩を触ろうとするロビン)

カルナ「触るな!!」

(バシっと振り払うカルナ)

ロビン「おい!本当にどうした?何を怒っている?オタクがそれ程怒るなんて」

カルナ「えっ?」

ロビン「えっ?」

カルナ「俺は怒っているか?」

ロビン「オタク…自分の気持ちを俺に聞く?」

カルナ「……」

カルナ『そういえば、何だか胸がムカムカする』

カルナ『これは…もしや…サーヴァントでも風邪を引くのだろうか!!』

カルナ『いや、だが、そんなこと今までない。つまりこれは!サーヴァントに効く毒か何かを

気づかずに戦闘中貰ってしまったのかもしれない』

カルナ「済まない。ロビン。戦闘中、毒か何かを貰ってしまったようで,

つい、態度が悪くなってしまったようだ」

ロビン「そりゃあ、大変だ。ずっと続くことなんてないだろうけれども、サーヴァントといえども少し休んでおきな。

あとで食べやすいプリンでも赤い弓兵のとこからくすねてきて持ってきてやるよ。無理するんじゃねーですよ」

カルナ「ああ…済まない」

カルナ『サーヴァントに食べたり寝たりする必要はないが、少し寝ておくか。寝たら治っているかもしれない』

(部屋の一角で寝転ぶ)

カルナ『気を遣ってプリンを持ってきてくれるなんて、ロビンは誰にでも優しい気の利いた良いやつだな…。』

(まどろみ始めるカルナ)

カルナ『ところでプリンとは…何だろう?』

(朝の光と鳥が飛ぶ表現)

(目を覚ますカルナ)

(横に吸呑とメモ書き)

(頭上アングルからのカット。メモを手に取って読む。ロビンの顔のイメージ映像も)

ロビン『サーヴァントでも水が飲みたくなるかもしれないから吸呑置いておいたぞ。

横に小さい冷蔵庫を借りたから、プリンはその中だ。起きたら食べな』

カルナ『マメだな。流石、ロビン。世話焼きと言われるだけはある』

カルナ『これがプリンか』(窓際の壁によりかかってプリン食べる)

(場面変わって立ち上がる)

カルナ『だが、お陰様で気持ち悪さはなくなったような。もう、毒はなくなったかな?』

(カルデアの廊下を歩くカルナ)

(気づいて前を向く)

カルナ『アルジュナ!?』

(いつにもなく嬉しそうにニコニコしているアルジュナ)

カルナ『何だあの顔?あんな顔初めて見た。誰と』

カルナ『…ここは、マスタールーム!』

(驚いた顔のカルナ)

カルナ『何だろう?まだ体調が?』

カルナ『何だか動悸がする』

アルジュナ「マスター。それでは」

ぐだこ「うん。じゃあ、それでよろしくね」

ジュナ「お任せください」

(機嫌良く、方向を変える)

(顔を上げてカルナに気づく)

ジュナ「カルナ!!」

ジュナ「何だ?その呆けた顔は?」

カルナ「…えっ?」

ジュナ「さては、私がマスターに呼ばれるのを見ていたな。卑しい奴め!羨ましかろう!最高のサーヴァントは、この私。

マスターに頼りにされるのは、この私だ!!」

カルナ「…そうか」

(うなだれながら)

ジュナ「そうかじゃない!お前は!!少しは食ってかかってこないか!」

カルナ「お前は何でも怒るな」

カルナ「アルジュナ…お前。いつにもない顔をしていたな。見たことのない顔だった」

ジュナ「当然だろう。マスターをお慕いしているのだから」

カルナ「…えっ!」

ジュナ「何を驚く?」

カルナ「サーヴァントとマスターだぞ?」

ジュナ「それが何だ?私程の最高のサーヴァントに何か問題が?」

カルナ「えっ?ない?のか?」

ジュナ「無いな。私が私の気持ちを言うのに何の問題がある?選ぶのはマスターだ。

勿論、ここには名だたるサーヴァントが揃い、マスターを慕っている者も多いが、

それが何だ?最高のサーヴァントはこの私。マスターの特別な存在になるのは、この私だ」

カルナ「…そうか」

(フラフラと向きを変える)

ジュナ「待て!カルナ!お前も言うことがあるだろう!」

カルナ「何を?」

ジュナ「お前もマスターを好きだろう!」

カルナ「ああ、何だ。それならそうだぞ。勿論。良い主従を築きたいと思っている」

ジュナ「そうじゃないっ!!」

ジュナ「お前もマスターを異性としてお慕いしているだろう?」

カルナ「???お前は何を言っているんだ?」

ジュナ「お前こそ何を言っているんだ?」

ジュナ「お前、ショックを受けているんだろう?」

カルナ「?」

ジュナ「首を傾げるな!!」

カルナ「要求が多いぞ?アルジュナ」

ジュナ「あああ~~~!!もう!!お前と話していると嫌になる!」

ジュナ「お前はどうなんだ!カルナ!私がマスターと特別な関係になったらどう思うんだ?」

カルナ「…俺は…」

カルナ「俺は、驚いたが…」

カルナ「お前ならば、きっとマスターを幸せにしてくれるのだろうと」

ジュナ「はっ?」

カルナ「きっと、マスターが幸せだったなら、俺は嬉しいだろうと…思っていた」

ジュナ「何を言っているんだ?お前は?」

カルナ「お前は幸運にも恵まれている。実力もある。お前ならば、きっと…マスターの笑顔を崩すことはない。」

ジュナ「おい!カルナ!」

カルナ「きっと、マスターが苦しい顔をしていたら、俺は辛いだろう。だが、お前とならば、マスターは幸せになるだろう」

ジュナ「カルナ。お前それは…」

カルナ「特に応援はしないが、お前がマスターと特別な関係になるのなら、それはそれで良いと俺は思う」

ジュナ「お前はバカか!」

カルナ「確かに勉学という教育は受けていないが」

ジュナ「だから、そうじゃない!!」

カルナ「もう、良いだろう。アルジュナ。俺はマスターの幸せを祈る」

ジュナ「~~~~~~~!!」

(立ち去るカルナの背中に大声で叫ぶ)

ジュナ「カルナーーー!!そういうところだぞ!」

ジュナ「私はお前のそういうところが大嫌いなんだぁ~!!」

(立ち去っていくカルナ)

(場面変わってカルナ頭上からのアングルのコマ)

カルナ『アルジュナなら、色々なものに恵まれている。マスターもずっと幸せなはずだ。

俺のように何も出来ない奴でもなければ、不運ばかりに襲われて

苦しませる事もないだろう。それを考えるとホッとする。少なくともあいつと一緒なら、

マスターは幸せになれる。俺と一緒に居て、苦しませてしまう事もない。

それを想像すると体が震える程怖い。俺が壊してしまう。何もかも。

だけれど、アルジュナならば。あいつと一緒なら、何からも守ってくれるだろうし、

マスターは幸せになるだろう。そう思うと嬉しい』

カルナ『!?』

(下アングルから、驚く顔のカルナと落ちる涙)

カルナ『涙?泣いているのか?俺は?』

カルナ『胸が痛い…。まだ毒が消えてないらしい』

(歩いていくカルナ)

(間のコマ)

(場面変わって、居並ぶサーヴァント)

ぐだこ「今日の種火狩りのメンバーは、この5人とフレンド頼光様です」

ロビン「おい、カルナ。オタク具合はどうだ?」

カルナ「むっ!問題ない。少し具合が悪いようだが、種火狩りなら簡単なクエストだ」

ロビン「頼むぜー。オタクのことは頼りにしてるんだよ」

(こくりと頷くカルナ)

(バシュッ!槍が光り手にするコマ)

(しかし、また、槍が消えるコマ)

カルナ『なっ!槍が!』

(勢い良く迫ってくる黎明の神腕)

カルナ『くっ!こうなったら目で』

(目から光線を出そうとする)

(しかし、途中で消える)

カルナ『なっ!』

ロビン「カルナー!」

(光のコマ)

(間のコマ)

カルナ「うっ!」

ナイチンゲール(婦長)「目覚めましたか?カルナ」

カルナ「ナイチンゲール?」

婦長「怪我をしてここに運びこまれました。既にマスターが回復を施したようですが、

体調不良で宝具等使えなくなったと聞きましたので調べました」

カルナ「そうだ!ナイチンゲール!俺は、呪いか魔術的な何かにかかっているらしい!治してくれ!」

婦長「…結論から申しますと」

カルナ「ナイチンゲール!」

婦長「あなたの体に異常はありません。呪いも、魔術的な作用を含めて全て良好です」

カルナ「えっ?」

カルナ「だが、俺は術が」

婦長「何度でも申します。カルナ。あなたの体には何の異常も見受けられません。

あなたの術が使えなくなったのなら、それはあなた自身の問題です」

カルナ「そ…うか、もしかしてあの時だけでもう、戻っているのかも。槍よ!」

(ブンッ!一瞬槍が出る)

(バンッ!!破裂音がして槍が消える)。

カルナ「う…そだ…。魔力がない訳でもないのに。能力がなくなるなんて。

そんなサーヴァントなんて聞いた事がない!!俺には…」

カルナ『俺にはこれしかないのに…!!』

(ベッドでうずくまるカルナ)。

(間のコマ)

(場面が変わってぐだこ)

ぐだこ「カルナさんは?」

マシュ「外の雪山の中です。体自体に異常はなく、サーヴァントなので

平気でいられると言っても、いかんせん…もう、3日目です」

ぐだこ「そう…」(椅子から立ち上がる)

マシュ「先輩?どこへ」

ぐだこ「カルナさんのところへ行ってくる。マシュ。1人で行く。モニターをお願い。」

ぐだこ「でも、何かあったら、助けてくれる?」(厚いコートを羽織りながら)

マシュ「勿論です。先輩」

(真っ暗な中の吹雪の雪山に立つカルナ)

(ぜえぜえ言いがなら薄い透明な槍を掲げる)

カルナ「焼き尽くせ!ヴァサヴィ・シャクティ!!」

(槍に炎が灯る)

(バリンッ)(槍が弾ける)

カルナ「うっ!」

(破裂した衝撃で雪に投げ出される)

カルナ「ハア…ハア…戻らない…俺の力が…戻らない…」

カルナ『俺には…これしかないのに!!これしか…俺にはないのに!!俺は多くを望まないのに!!

どうして何もかもを奪われる!!戦えないサーヴァントなんて存在意義があるのか!!』

(横になって上を見る。雪が降ってくる絵のコマ)

(回想)

「カルナ」

「カルナ」

「親無しの子!身分の低い子!変な奴だ!お前はずっと1人だ!仲間もいない」

「身分の低い!卑しい奴め!お前が焚きつけるから、ドゥルヨーダナがパーンダヴァ5兄弟と戦争などする羽目に!」

「人殺し!人殺し!お前のやった事は単なる破滅だ!武功などではない!お前だけでなく!

周りを破滅へ追いやったんだ。ドゥルヨーダナ王子は、5兄弟と国を分け合うだけで良かったんだ」

「破滅の子よ!呪いの子よ!」

「お前等!この世に居なければ良かったのに!」

(寝転ぶカルナに雪が降り注ぐ)

カルナ『俺の世界は何もない。白い。ただ、真っ白い。それはただ、ただ何もない世界。それでも俺は…』

カルナ『俺は唯一、唯一戦うことだけは…それだけは…守ってきたのに』

カルナ「あ…ああああ…ああああああっ!!」

カルナ「うわああああああああっ!!」

(顔を覆って大絶叫する)。

(顔を覆うカルナの背後から声と足だけコマに映り込む)

ぐだこ「カルナさん?」

カルナ「何故ここに来た、マスター?」

(背後の姿手前がぐだこ。振り向かないまま背中向きのカルナの絵)

カルナ「俺は今、お前のことなど相手にしている気分じゃない。お前の気分になど構ってやれない!消えろ!」

ぐだこ「生憎。残念ながら。私もカルナさんの気分が良いと思って来た訳ではないわ」

カルナ「では、何故来た。こんな俺を…笑いに来たか。こうして心配して来たお前に…

こんな事をいう俺を…嘲笑いに来たか!!こうして!!メッキが剥がれてしまえば、

噛み付く俺の小ささを!!笑いに来たか!!」

カルナ「…終わりにしよう。マスター。契約を…。俺は戦えなくなってしまった。

俺がいれば寧ろ足でまといだ。戦えないサーヴァントに価値などない。ここで…終わりにしよう」

ぐだこ「カルナさんなら…そろそろそういうと思っていた。だから、来たの」

カルナ「マスター。では…」

ぐだこ「カルナさん。生憎だけど。私は優しい女ではないわ。更なる残酷を突きつけに来たの。

ダ・ヴィンチちゃんに特別にカルデア式の令呪を強化して貰ってきたわ。」

カルナ「マスター?」

ぐだこ「令呪を持って命ずる!!英雄カルナの契約の離脱を禁ずる!」

カルナ「!!!」

ぐだこ「重ねて命ずる!!英雄カルナの自害を禁ずる!!」

カルナ「マスター!!待て!マスター!」

カルナ「マス…!!」

(令呪とカルナが光って命令が受理される)

カルナ「マスター!なんてことを!!令呪を二画も」

ぐだこ「カルナさん。うちのカルデアは、余裕がない。あなたには居てもらいます」

カルナ「俺には今、戦う力がない!」

ぐだこ「それでも。」

ぐだこ「それでも居て欲しい」

ぐだこ「カルナさんには、残酷な事をしている。きっと戦えずに来たら他のサーヴァントにも文句をいう人も出てくるかもしれない。

それでも、もしかしたら、ずっと戦えないかもしれないけれども…。一緒に来て。ずっと泥の中でも…あがいて!!」

カルナ「…うっ…うううっ」

カルナ「ああああああああっ!!!」

(泣き出すカルナ)

カルナ「マスター…俺は…こんな情けない姿…誰にも…お前にも見せたくなかった」

ぐだこ「そうでしょうね。…ごめんね。カルナさん」

(泣き崩れるカルナを抱きしめる)

ぐだこ「帰ろう一緒に…カルデアに…」

カルナ『英雄とは何だろう?武功が多かった者か?皆を引っ張った者か?俺はいつも情けなく…俺は…俺は…』

(場面変わって)

マシュ「先輩。カルナさんを慰めに行ったのではなかったのですか?あのカルナさんが

あんなにボロボロになっているのに。あれでは…」

ぐだこ「そうでしょうね。少しでも優しい言葉をかけて欲しかったかもしれない。

だけど、人生をかけて培った能力を失ったカルナさんの気持ちを容易い言葉では癒してあげることも、代わってあげることも出来ない。

失ったものの計り知れなさは、人が何か言ったところで簡単に癒える事はない。

それどころか、カルナさんの性格なら、自分を追い詰めるかもしれない。もう、役に立たない、居てもしょうがないと。

…いや、既にそうなっているでしょう」

マシュ「先輩。それならば尚更、何でこんな時にもっと優しい言葉をかけてあげないんですか?

日頃の先輩ならば」

ぐだこ「マシュ」

マシュ「はい!」

ぐだこ「私に考えがある。上手くいくかどうか分からないけれども。私を信じて協力してくれる?」

マシュ「…はい、先輩」

(場面変わって朝)

ぐだこ「今日の戦闘のメンバーを知らせます…」

カルナ『俺は…力が戻る事がなければ、もう二度とクエストには出向く事もない…

メンバーに加わる事もないが…』(手をじっと見る)(気づいたような顔をするコマ)

カルナ『全てのメンバーの発表が終わったようだ。それでは、俺は部屋に戻るとしよう』

ぐだこ「戦闘に加わる全メンバーを発表しました。…そして、最後に控えにカルナ」

カルナ『!!』

(ザワザワ)

(ざわつくサーヴァント)

カルナ「おい!マスター!俺は戦えない!」

ぐだこ「私の身辺を守ってもらいます。宝具は使えなくても、足の速さは健在でしょ?」

カルナ「マスター!」

(カルナの背後から声だけ)

「おい、カルナは戦えなくなったんじゃなかったのか。戦闘に出すって」

「マスターのお気に入り?特別扱いか?」

(カルナ振り向く)

(誰も喋らない)

ぐだこ「カルナ。マスター命令です(冷淡な表情のままで)」

カルナ「!!」(驚きの表情)

(唇を噛んで下を向くカルナ)

カルナ「…命令とあらば」

ぐだこ「カルナさん。一緒に行くよ」

カルナ「マスター。何を考えているんだ?」

ぐだこ「落ち着いて。カルナさん。ほら、これ。飲み物でも飲んで」

カルナ「サーヴァントに飲み物は不要だ」

ぐだこ「まあ、いいから」

(ぐだこを見たままコップを奪って飲むカルナ)

カルナ「マスター!!」

カルナ「…あれ?」

(空間が歪む)

(間のコマ)

(カルナ目を開ける)

(寝転がっていた)

(敵と相対しているモードレッド、アルトリア、マーリンが目に入る)

カルナ「何だ?俺は寝ていたのか?戦闘中に後ろで」(座りながら)

(座って眺めるカルナを上アングルから。ぐだこのスカートも映る)

(カルナ目線を上げて立っているマスターを見るコマ)

カルナ「マスター。どうして俺を連れて来た。逃げる位は訳ないが、

俺は戦える力がない。お前はこんなサーヴァントを切り捨てるべきだ。

何故こんなお節介を焼いた?お前が俺のマスターだからか?」

ぐだこ「そうね」

カルナ「それが余計だと」

ぐだこ「そして、カルナさんと築いた絆があるから」

カルナ「!!」

ぐだこ「私には、どんなに聞こえの良い言葉を並べても、カルナさんの喪失感を埋める事は出来ない。

だけど、人は、何も出来ない、自分では及ばない敵を前にしても行かねばならない事がある。

足でまといにもなる。疎まれる事もある」

ぐだこ「それでも、どんなに恐怖しても、乗り越えなければならない時がある。

逃げたくもなるでしょう。実際に…逃げても良い。別の道もあるかもしれない。

でも、それでも、この先、カルナさんの力がどうしても戻らなかったとしても、

別の道を行くにしても、ここから…私達からも逃げないで。カルナさんは

役立たずなんかじゃない。私は、どの子も絶対に一緒に連れていく」

カルナ「マスター…だが…俺は、戦う事以外してこなかった。他のサーヴァントのように

他の事になど役に立たんよ」

ぐだこ「まだ分からないじゃない。それよりもカルナさん。

私達の差し出す手まで振り払わないで」

(座っているカルナに手を差し伸べる)

カルナ「マスター…」

カルナ『だが…マスター…。俺は…この俺は…。』

モードレッド「戦闘終わったぜ。ザコなんざ。オレ達にかかればあっと言う間だ」

カルナ「!!」

カルナ「ちょっと待て!モードレッド。血がついているが床に敵など居ないぞ!」

モードレッド「何っ?」

(間のコマ。)

「フハハハハハ…我が一族の悲願達成する時来たり、

魔力の塊のような輩がきたぞ…ハハハハハ……あと、一歩。あと、一歩」

(体を引きずりながら台座にある宝石に近づく)

「我が命を使い…復活の時は来たれりぃぃ!!」

(走り出すモードレッド達)

(血のついた点々を辿り隠し部屋にたどり着く)

モードレッド「まだ、死んでいなかったか!だが、これで終わりだぜ」

モードレッド「はっ!」

(ザンッ!)(走り込んでそのまま真っ二つに切り裂くモードレッド)。

モードレッド「はっ!さっきので仕留められてなかったみたいだが、俺にかかれば…何?」

(黒い霧状のものが集まり、屈強な鎧の槍兵になる)

「フハハハハ!まだ足りぬか?お前達を倒すのに力が!良質な魔力達よ」

モードレッド「どうなってやがる。あいつ。倒す前より強くなってやがる」

鎧兵「お前達の弱点を思い浮かべるが良い」

(ピカっ!)(槍鎧兵の眼が光る)

モードレッド「うっ!」

アルトリア「惑わされるな!先ほど霧が集まる時、核が見えました」

アルトリア「つまり」

(走り出しながら剣を構えるアルトリア。後ろアングルから)

アルトリア「ここだぁ!!」

(鎧兵の頭上から一刀両断にし、中にある黒い丸い核がパリンと割れる)

モードレッド「やったあ~!父上!!」

アルトリア「どうという事はありません」

カルナ「やはり、お前達程の英霊となれば幾ら敵が現れても相手ではないようだな」

アルトリア「当然です」

「ランサーならばな」

(ドスッと音がして目を見開くアルトリアと。アルトリアの腹をエアで貫く金髪の男)

アルトリア「あ…あああ…お前…は…ギルガメッシュ…」

「ギルガメッシュ?この姿の男の事か…だが…いや?」

「簡単には消えさせぬよ」

(アルトリアを貫いたまま、エアから激しい光りが放たれ空気が揺れる)

アルトリア「あああああああ!」

ぐだこ「アルトリアー」

モードレッド「父上ー!」

モードレッド「あいつ、父上の魔力を吸っている!!」

ぐだこ「マーリン!モードレッドを強化!モードレッド!宝具を!!

あいつは分身をつくっている!分身を作る前に吹っ飛ばして!」

モードレッド「ラジャーだ。マスター」

マーリン「それじゃあ」

ギル?「させぬよ」

マーリン「えっ?」

(天の鎖が四方八方から出てマーリンの全身をくまなくさし貫く)

マーリン「あああああああああっ!!!!」

マーリン「ホント、役立たずでごめん」

(スウッとマーリンの体が消えて退去する)

ぐだこ「マーリン!!」

ギル?「おおっとしまった!魔力を取らぬ内に倒してしまった」

アルトリア「あああああああっ!」

ぐだこ「アルトリア!!カルデアに退去して!早く!戻ればやり直せる」

アルトリア「…マス…ター…」

アルトリア「すまない、マスター」

(金色の光を放って体がスウッと消えていく)。

モードレッド「調子に乗るなぁ!!」

(モードレッド飛び出すが、無数の黄金の剣がモードレッドにいっせいに突き刺さる)

モードレッド「うわあああああああ!!」(目を見開く)

モードレッド「父…上…」

(倒れて金色に光り消えていく)

カルナ「くそっ!セイバーにアーチャーでは、分が悪い!!」(槍を出すカルナ)

カルナ「せいっ!」

(ギルもどきに頭上から槍を振りかぶる)

ギル?「何だ?これは?」

(軽くパシッと止められる。消えかけた半透明の槍)

(ブンッ!)(軽く飛ばされる)

(ドンッ!)(壁に激しく当たって落ちる)

カルナ「ぐっ!」

カルナ『そうか…俺は…宝具が使えなかった…』

ギル?「何だ?お前は、それ程の魔力を要しながらも宝具が半透明の消えかけとは?

見たところ槍は兎も角、自分の身体自身である宝具すら使えていないようだが」

ギル?「だが、丁度良い」

ギル?「我々一族の願いは、聖杯レベルの奇跡を随時行える程の魔力を蓄え、

我が一族を復活させ、我らで支配する事。その為に倒した相手の魔力を石に蓄えてきた。

この身は、核さえあれば幾らでも分裂出来、そして、倒される程、相手が強い相手を

思い浮かべる程強くなる。そして」

ギル?「固有結界!!」

(魔術で別の空間が発生する)。

ギル?「ここに囚われてしまっては、最早、出口はない。お前達の死は決まったぞ」

カルナ「良いのか?魔力を奪いたいなら後続の3人がまだ来ていないぞ?」

ギル?「お前達は気付かなかったのか?離れていたせいか。私の分身が既に後続の部隊など殲滅したのを」

カルナ「!!」

カルナ『駄目だ。今の俺では戦えない…』

カルナ『だが…魔力なら!!』

カルナ『あいつは、ああいうが、この固有結界には欠点が2つある』

カルナ『1つは、あいつが死ねば消えてなくなる事だ』

カルナ『もう1つは、もう、それを壊す火力がある者がいないが

あいつのすぐ隣。左の隅に結界のほころびがある。強い者の能力をコピー出来ても、

自分自身は大層な術者ではないのだろう。欠陥だ。そして、あいつは俺が弱い事に

油断して今、核を分けていない。あいつ1人だ。』

カルナ『俺の中に魔力はある。いかに今の俺が弱くても…。俺があいつの傍で自爆すれば火力は足りる』

カルナ「マスター…」

ぐだこ「カルナさん?」

カルナ「俺は、本当に暗くてどうしようもない奴で。力が無くなっていつまでもぐずぐずして、
    
    お前を困らせたが、本当に有難かった。そして、お前の事を認めている」

カルナ「誇っていい。お前は最高の俺のマスターだ」

ぐだこ「カルナさん?」

ギル?「何をぐだぐだ言っている!!」

(ギルもどきの後ろが金色に光って剣が飛び出そうとしている)

カルナ『来るがいい!お前の技が当たった時、俺の中で圧縮し、

    範囲を限定した魔力が再生させない程に爆発する。

    少なくとも固有結界は保てない!!』

(ギルもどきに向かうカルナの静止画)

(迫り来る大量の光の剣)

カルナ『今だ!』

(ドンッ)(カルナ顔アップ。衝撃に揺れている)

(真顔のカルナの顔の前に血が舞う)

(目だけ左を見る)

(カルナを突き飛ばし、脇腹に剣が突き刺さるぐだこの絵)

ドシャッ。(血を浴びて目を見開くカルナ)

(へたり込むカルナと横に血だらけで倒れるぐだこ)

カルナ「…マスター?」

(カルナ。両手に浴びた血をアップ)
    
カルナ「マスター!!!何故だ!!マスター!」

カルナ「お前が死んだら仕方ない!俺など生きていても!いや、カルデアの英霊達も

    お前が居なければ保てない!それなのに!何故!!」

ぐだこ「…ナさん」

カルナ「!!マスター!」

ぐだこ「ナさん…」(ゴホッと血を吐く)

カルナ「マスター!もう喋るな!」

ギル?「ええい、しょうがない奴らめ、これでは魔力の取りようもない。仲良く死ぬがいいわ!」

(背後に光る金の剣)

(決意の表情でギルもどきを睨み、マスターの前に立つカルナ)

(回想)

『カルナ…カルナよ』『お前は疫病神だ』『お前が居るから皆が不幸なのだ』

『お前のせいで皆が死んだ』『お前は誰にも相応しくないよ。何故ならお前が忌人だからだ』

カルナ『何度も蘇る屍人の言葉…臆病な俺を怯えさせる…マスターよ。何度お前が

    俺に真剣に向き合ってくれても、俺は逃げ続けた』

『そうだ。カルナ。それがお前の真実だ。英雄などとは程遠い。臆病者こそがお前だ』(影が喋る)

カルナ『そうだ。俺は臆病者…』

『そうだ。カルナ。カルナ。消えるがいい。臆病者は忌人は消えるが良い!誰もお前を惜しまない』

カルナ『だが…そんなことは…』

(カッと目を見開くカルナ)

(マスターの前に立ちはだかるカルナに迫る無数の光りの剣)

カルナ「そんなことはどうでも良い!!」

カルナ『マスターを!!この少女を守る!俺の全てをかけて!!』

(ジャキン)(音を立てて槍が実体化して顕在)。

カルナ「うぉおおおおおおおっ!」

(ブオンッ!)(強烈に槍をひと振り)

ギル?「何っ!?」

(ギインッ!)(ギィン!)(ギルの後ろに全て宝剣が返ってくる)。

(ブオンッ)(背後の固有結界が消えていく)

ギル?「何だ?貴様!槍が…」

(槍を構えて睨み上げる)

カルナ「うぉおおお!」

(振り上げた槍が当たって、ギルもどきが壁に打ち付けられる)

ギル?「うごぉ!」

ギル?「何だ?お前は?さっきまでと全然違う!」

ギル?「くそっ!エヌマ…」

ギル?「何っ!!」

(既に隣に居て槍を構えるカルナ)

カルナ「焼き尽くせ!!」(槍に炎が集まる)

カルナ「ヴァサヴィ・シャクティ!!」

ギル?「ぐわああああああああっ!!!」

(ギルもどきが炎に巻かれて黒焦げになる)

(神殿の全体の天井を炎が突き破り建物が崩壊していく絵)

カルナ「マスター!!」

ぐだこ「カ…ルナさん…」

カルナ「マスター!早くカルデアに通信を取って治してやる!早く!」

ぐだこ「カルナさん…くっ、約束して!もう…もう…カルデアを出ていこうとか…

    自分だけが死ぬとか…そういったことやろうとしないで…」

カルナ「マスター!もう喋るな!!約束する!約束するから!!死ぬな!!」

カルナ「お前が…お前が居なければ!!お前が…大事なんだ!!」

ぐだこ「…本当ね!カルナさん…嬉…しい…」

カルナ「ああ!!今、カルデアに!」

ぐだこ「あ、大丈夫。よいしょっと!」

(ひょいっと軽々上半身を起こすぐだこ)

カルナ「…はっ?」

ぐだこ「それじゃあ、もう一言」

ぐだこ「私は、絶対うちのサーヴァンとの皆を置いては行かない!何があっても!!

1人で逃げ出そうだなんて甘く考えたら!その時は地獄の果てまで追っていくから!

逃げられるとか今後も夢々思うなよ!!カルナさん!!」

(びしっと決めるぐだこ)

カルナ「…マスター…怪我は?」

ぐだこ「怪我ね?」

ぐだこ「カルナさん!今。私自分で怪我を治せる『カルデア』を着ているのでしたん♬」

カルナ「…えっ…」

ぐだこ「いや~!カルナさんの宝具直って良かった!丁度良く当たる感じ本当大変だった。

嘘だとカルナさんにはバレちゃうし」

カルナ「……」(4つんばいに脱力している)

ぐだこ「ついでにいうと、スムーズにカルナさんをシュミレーションに連れていく為に、

バレそうで真顔つくったり、ダ・ヴィンチちゃんにプログラム作ってもらったり、

英霊用の睡眠薬作ってもらったり、それはもう、大変だった~」

カルナ「シュミ…レーション?」

カルナ「じゃあ、他の英霊達は…」

ぐだこ「元々、皆、無事です。健康な状態でカルデアに居ま~す」

カルナ「あの敵は」

ぐだこ「架空の敵かな?胡散臭さ爆発」

カルナ「…おい!マスター…」

ぐだこ「おっ!来ちゃう?久しぶりに来ちゃう?カルナさんの心をえぐる名言集。『面白くないぞ!』が」

ぐだこ「よ~し、久しぶりに聞いちゃうぞ!どうぞ!」

カルナ「…プッ!」

ぐだこ「プッ?」

カルナ「お前は…お前は、とんでもないマスターだな」

(涙出して笑っているカルナ)。

ぐだこ「おおっ?」

ぐだこ「カルナさん…笑い上戸になってない?」

カルナ「…そうか?」

カルナ「今、凄く笑いたかったんだ。フフッ」

カルナ「…約束しよう。マスター。俺の槍をお前の為に振るう。

    俺は俺の契約が終わるまで。お前の傍をずっと離れない」

ぐだこ「良い心がけだ」

カルナ「だから、これからは、お前も俺の傍を離れるな」
(ぐだこの手を握って自分の方に引き寄せるカルナ)

ぐだこ「勿論!私はあなたのマスターですからね!!」(自信満々)

カルナ「…お前…」(分かっていないなという顔)

ぐだこ「何?」

カルナ「…いや、良い。今は」

ぐだこ「変なの。カルナさん。」

ぐだこ「お、そうこうする内にだいぶ時間が経ったね。

    そろそろシュミレーション室を出よう。カルナさん」

カルナ「ああ…」

カルナ『長い…悪夢を見ていたようだった。だが…今は…』

ぐだこ「んっ?どうしたの?カルナさんジッと見て」

カルナ「いや、行こう。マスター」

(廊下に出る)

ぐだこ「おっ!雪だ。まあ、カルデアの外は山だし、いつも雪なんだけど」

カルナ「……マスター」

カルナ「インドにも…雪は降るんだ。北の方だけなのだが」

ぐだこ「そうなの?」

カルナ「俺も一度見たことがある。あの光景を」

カルナ「厳しく寒い環境の高い高い山に雪が降り積もる。

    だが、それは、やがて雪解けし、ガンジス川へと流れていき、

    インドの過酷な暑さをしのぐ、恵みの水となる。それはそれは雄大な眺めだ」

ぐだこ「へえ~」

カルナ「マスター。いつか見せたいな。インドのガンジスの雄大な眺めを。俺の故郷を…」

カルナ『俺の世界は真っ白い。白く白く真っ白く。ただ何もない』

(ヒマラヤ山脈の頂上で雪の中、歩く幼少のカルナ)

カルナ『だが、それは…いつしか雪解けし、恵みの水となる』

(元気なぐだこを見るカルナ)

カルナ『マスター…。お前に会えて 良かった』

(にっこりするカルナアップ)。

「白」完