映画* Animal Kingdom | 有閑マダムは何を観ているのか? in California

有閑マダムは何を観ているのか? in California

映画に本に音楽。

山に海に庭。

インドア・アウトドア共に楽しみたい私の発見記録です。 




オーストラリアのメルボルンが舞台のこの映画。


一体、なぜこんな題名がついているのかと不思議に思っていたけれど、

映画を観終えると、これ以上ぴったりのタイトルはないと納得できます。


文明の発達した法治国家に暮らしていても、人間のもつ野蛮さ、野卑さ、暴力性が

なくなるわけではありません。

野生の王国と同じように、そこには弱者がいて、強者がいる。

強者は、弱者を支配したり、あるいは餌食にしたりしながら、我が物顔に振る舞い、

弱者は、強者から逃げるか、それとも機嫌をとって庇護を受けて生き延びるか。

弱肉強食の自然の掟は、現代の都会にも存在します。



母親を薬物中毒で突然亡くした17歳のジェイは、独りぼっちになり、

疎遠で、ほとんど音信不通になっていた母方の祖母に引取られる。


祖母と、三人の叔父との暮らしが始まり、自分の母親がなぜこの一家から距離を置き、

逃げていたのか理解する。

彼らは、銀行強盗やコカイン取引などを手がける犯罪一家だったのだ。




有閑マダムは何を観ているのか? in California-animal kingdom



ほとんど無表情で、母親が突然死したときでさえ、ほとんど何の感情も表さないジェイの視点で

描かれるこの家族の様子に、ぞっとするものを感じます。





有閑マダムは何を観ているのか? in California-animal kingdom



三兄弟の中で、一番年長の叔父ポープ。

一見、その辺にいる普通のオジサンなのだけれど、粘っこい陰険な目つきに、鳥肌が立ちそう。

この人を怒らせると、どんな残虐なことが起こるかわからない恐怖がつきまといます。



有閑マダムは何を観ているのか? in California-animal kingdom


一家をまとめるジェイの祖母は、粗野な息子達を抱きしめ、キスをし、

Are you alraight, baby?

と、猫なで声で話しかける優しい母親のようでいて、

その実、裏で糸を引き、力を握っている存在。


ジャッキー・ウィーバーは、この役でアカデミー助演女優賞の候補に選ばれていましたよね。



有閑マダムは何を観ているのか? in California-animal kingdom


決定的な証拠が掴めないまま、この一家を執拗に追う警察側もまた、

清廉潔白な正義の味方としてではなく、無抵抗の人間にいきなり発砲するような

野蛮な存在として描かれます。


警察と犯罪一家の、牙を向き合う力ずくの争いに巻き込まれていく未成年のジェイは、

いつの間にか傍観者ではなく、命の危険を感じる立場へと追いやられていきます。


ジェイの立場を理解し、彼を保護することに全力を尽くし、この一家の犯罪証明に協力を要請する

警官レッキー(ガイ・ピアース)。


弱者である君は、強者の家族の庇護の元にいれば安全だと思っていたかもしれない。

だけど、彼らはもう、強者ではなくなりつつある。

君を庇護するどころか、むしろ危害を加える者たちになっていることに、気付いているだろう?

自分の立ち位置をどこに置くのか、よく考えなさい。


レッキーの説得は、ジェイにどんな決断をさせるのか!?






有閑マダムは何を観ているのか? in California-animal kingdom


この話にどう片がつくのか読めなかったので、最後の最後にあっと驚きました。


ハリウッドの犯罪モノとは、一味も二味も違うこの映画。

芸達者な役者さんたちの演技も堪能しました。



有閑マダムは何を観ているのか? in California-animal kingdom




日本での公開時期はまだ未定のようです。