障害のある子どもと服薬について考える 〜まず大切にしたい視点〜
特別支援学校で日々、子どもたちと接していると、保護者の方から「薬は飲ませたほうがいいのでしょうか?」「副作用が心配です」といった相談を受けることがあります。
この記事では、障害のある子どもの「服薬」について、特別支援教育の現場で感じることや、支援に役立つ考え方をお伝えしていきます。
服薬は「最後の手段」ではありません
「薬に頼るのは負けだと思ってしまう」「できるだけ自然に育てたい」――こうした思いは、多くの保護者が持つ自然な気持ちです。
しかし、服薬は“子ども本人がより過ごしやすくなるための一つの選択肢”です。例えば、落ち着いて授業に参加できるようになったり、過剰な不安が和らぎ対人関係に前向きになれたり。薬がきっかけで「本来の姿」に近づけるケースも多くあります。
服薬が検討される場面
- 多動・衝動が激しく、生活や学習が難しくなっている
- こだわりや不安が強く、本人もつらそうにしている
- 気持ちの波が激しく、周囲とのトラブルが増えている
こうした状況が続くと、子ども本人の心身の負担はもちろん、家庭の生活にも影響が出てしまうことがあります。
「本人らしく」過ごすための選択肢
特別支援学校では、「本人が自分らしく過ごせること」を何より大切にしています。
薬によって困りごとが和らぎ、「安心して過ごせる」「気持ちを伝えやすくなる」「学習に集中しやすくなる」などの変化が見られることも多くあります。これは、“薬がその子の可能性を広げるきっかけ”になっているといえます。
こんな変化がありました(実際の支援現場より)
事例1:ある児童は、教室内で突然立ち歩き、大声を出すことがありました。学習は好きなのに集中が続かず、本人も困っている様子。医師と相談し、少量の薬を始めたことで、気持ちが安定し、活動に取り組む時間が少しずつ増えました。
事例2:毎朝「学校行きたくない…」と泣いていた子が、不安を和らげる薬を処方されたことで登校への抵抗感が減り、友だちとの関わりも自然になっていきました。
もちろん、薬だけがすべてを解決するわけではありませんが、「生活を整える支え」として効果を発揮する場面もあります。
服薬を始めるときに気をつけたいこと
- 医師との連携:必ず専門の医師と相談し、子どもに合った種類・量の薬を判断してもらいましょう。
- 生活環境の見直しも:薬だけに頼るのではなく、環境の工夫や関わり方の調整も合わせて行うことが大切です。
- 学校との共有:服薬による変化は、家庭だけでなく学校にも表れます。服薬開始・変更時は、教員と情報を共有し、日中の様子を見守ってもらいましょう。
副作用や懸念もきちんと知ろう
どんな薬にも副作用のリスクはあります。眠気、食欲低下、イライラ、体重増加などがよく知られています。医師はこうしたリスクも含めて処方を行いますが、保護者としても「気になる変化があればすぐ相談できる」姿勢でいることが大切です。
迷う気持ちは自然です
「本当に薬を使うべきか…」という迷いを抱えることは、親としてとても自然なことです。
でも、無理をしてがんばり続けるより、「本人らしさ」が守られ、「家族みんなが安心して生活できる」道を選ぶことは、決して悪いことではありません。
支援学校では、薬に対して中立的な立場をとりつつ、保護者の思いに寄り添いながら、必要な情報やサポートを行っています。
まとめ
- 服薬は、本人が「より安心して暮らせる」ための選択肢の一つ
- 副作用や医師との相談を含め、丁寧な準備と見守りが大切
- 服薬と環境調整は、どちらも重要な支援
次回は、実際に使われる薬の種類や、具体的な効用・副作用などについて詳しくお伝えします。