第2回:「どう伝える?ネットとの付き合い方」〜理解に応じた伝え方・ルールの作り方〜
前回は、知的障害や発達障害のある子どもたちが直面しやすいネットトラブルの実例と背景についてお伝えしました。今回は、そうした危険から子どもを守るために、どのように「伝える」か、「教える」かに焦点を当てていきます。
■「禁止」ではなく「わかる伝え方」を
ネットトラブルの心配があると、「もう触らせない!」としたくなる気持ちはごもっともです。ですが、それでは子どもは「なぜダメなのか」が理解できず、裏で使ったり、隠して使ったりするようになることもあります。
大切なのは、子どもが納得しながらネットやSNSと“付き合う力”を身につけることです。
そのためには、以下のような視点での「伝え方」を考えていく必要があります。
- 子どもの理解レベルに合わせる
- 曖昧な言葉は避け、具体的に伝える
- 抽象的なルールではなく、目に見える形にする
- 本人がルールを一緒に作ることで納得感を高める
■ 理解レベルに合わせた説明とは?
例えば「個人情報は出してはいけません」という伝え方。これは大人には通じますが、知的障害のある子どもには伝わりにくいことがあります。具体的にどう言えば伝わるのでしょうか。
以下のように、より具体的な言葉に置き換えることが有効です。
- 「名前は言わない」→「●●ちゃんって名前は、ネットで言わないよ」
- 「家のことは言わない」→「お家の場所や、電話番号は書かないよ」
- 「知らない人とは話さない」→「ゲームで出てくる“知らない人”とは、お話ししないよ」
「知らない人」とは誰のことか、「情報」とは何を指すのか。子どもが理解できる範囲まで言葉をかみくだくことが第一歩です。
■ ルールは「一緒に作る」から守れる
「使う時間は1日30分まで」
「夜9時以降は使わない」
「知らない人とやりとりしない」
こうしたルールを大人が一方的に決めても、子どもにはなかなか浸透しません。一緒に考えることで、「守る意味」がわかるようになります。
たとえば以下のような手順で、ルール作りを進めてみてください。
- まずは現状を確認:「どんなときに使っている?」「困ったことはあった?」
- 子どもの意見を聞く:「どうしたら使いやすいと思う?」「どこまでならできそう?」
- ルールを具体化:「朝の支度が終わったらOK」「学校の宿題ができたら10分」
- 視覚化して貼る:「イラスト付きポスター」「使っていい時間を表で表示」
そして、守れたら一緒に喜ぶ、守れなかったときも叱るのではなく「何が難しかった?」と振り返る姿勢を大切にします。
■「正しさ」よりも「安全さ」
ネットやSNSの世界には、さまざまな価値観や情報があふれています。その中で「どれが本当?」「これはやってもいいの?」と子どもたちは迷います。
このとき大切なのは、正しいかどうかの判断ではなく、安全かどうかという視点です。
例えばこんな伝え方をすると、子どもも理解しやすくなります。
- 「これはやっていいのかな?」→「これは大人といっしょに見てから決めよう」
- 「誰かにこう言われた」→「何か困ったら、必ず大人に聞こうね」
- 「よくわからないけど楽しそう」→「わからないものは、やらない・開かない」
つまり、自分で決めきれないときに「大人に相談する」という選択肢を常に持てるようにすることが、最大の安全策です。
■ どこまで制限すべき?そのバランス
「この子にはまだSNSは早いと思う」「でも、クラスで流行ってるし…」
そんなふうに迷うときもあるかもしれません。
年齢や発達段階に応じて、以下のような指針が参考になります。
| 年齢・段階 | ネットとの関わり方 |
|---|---|
| 小学生低学年 | 保護者と一緒に使用、見る範囲を限定 |
| 小学生高学年 | 家庭でのルール作りと視覚的な管理 |
| 中学生 | アカウント管理、フィルタリングと家庭での会話を両立 |
| 高校生 | 責任のある使用、危険事例の共有と自主性の育成 |
「この年齢だからこれはOK」という一律の基準ではなく、その子の理解・状況・支援体制をもとにした柔軟な対応が求められます。
■ 保護者も“アップデート”を
保護者自身が、ネットやSNSに不慣れな場合もあるかもしれません。「難しそう」「知らないアプリばかりで…」と尻込みしたくなることも。
でも、子どもを守るために、保護者自身も少しずつ“ネットの世界”を学ぶことは非常に大きな力になります。
今は保護者向けの研修や学習資料も増えてきました。次回の記事では、そうした「防ぐ力を育てる支援」や「リテラシー教育の工夫」について詳しくお伝えします。
■ まとめ
- 伝え方は、子どもの理解に応じて具体的に
- ルールは「押しつけ」ではなく「一緒に作る」
- 判断が難しいときは、「必ず大人に相談する」
- 保護者も情報をアップデートしながら寄り添う
「危ないから使わせない」ではなく、「どうすれば安心して使えるか」を一緒に考えることが、ネット社会に生きる子どもたちへの最大の支援となります。
次回【第3回】では、「防ぐ力を育てるには〜ネットリテラシーを支える教育・支援の工夫〜」をお届けします。