2020年そろそろ季節も冬にさしかかるかなと思っていたある日、母親に「草刈り機は使えるか?」といきなり聞かれた。
使ったことはないが、スイッチ押して草を刈るだけだろうから、いけるだろうと思い、「いけるやろ」と答えた。
すると、昔祖父が住んでいた家(現在は空き家)の庭の草刈りを手伝ってくれと言われ、「ええで」ってことでその週末に父親と二人で草刈りをしに行くことになった。(母親は来ないんかい)
草刈り当日、空き家に到着したが、懐かしいという思いは全くなかった。
かなり小さいころに訪れたような記憶はあるが、家のことは全く覚えていない。
この家は田舎の狭い路地を入った先にあるため、車が入ってこれない。つまり、駐車場がない。
田舎で駐車場ないってないわーって思ったが、別に自分が住むわけじゃないからいいかと思った。
空き家に行くときは、いつも近くの公民館の前に車を停めさせてもらうそうで、その日もそうした。
草刈りなんて大したことないと思っていたが、土地は70坪以上あり、その半分ぐらいが庭なのでかなり広い。
寒いなと思っていたのに、途中から汗だくになってきた。
草刈りをしてる途中、近所のおっちゃん(おじいちゃん?)が2人やってきて、父親と話をしている。
どうやら1人は同級生らしい。息子ですと一言挨拶をしておいた。
とりあえず長い草は刈ったので、そろそろいいかということで実家に戻ることにした。
実家に到着して色々空き家の話をしてわかったことなんだが、最後に住んでいたのは祖父ではなく祖父の姉夫婦だそうだ。
その方々が亡くなったのは10年以上前、子供はいなかったそうで、それから誰も住んでいないらしい。
誰も住んでいない家の固定資産を10年以上払い続けているらしい。
今は父親名義になっているが、いずれ僕が相続するらしい。
いや、いらん。
そんな負の遺産いらんわ!
母は父にずっとあの空き家をなんとかしろと言い続けていたそうだが、全然動かなかったそうだ。
それなら僕がなんとかしてやろうと思い、いろいろとネットで調べてみた。
そこでまず、空き家バンクというものがあるので、そこに登録してみてはどうかと親に言った。
あんな家でももしかしたら売れるかもしれない、というか売らないといけない。
売るためには何をするべきかと考えたとき、空き家バンクの登録が一番いいだろうと考えた。市役所に相談して登録するだけならタダなので。
早めに行動するのがいいだろうということで、翌々週に有休を使って市役所に相談しに行った。
事前に電話で色々と聞いていたため、空き家バンク登録に必要な書類は全て揃えていた。
空き家の家はとりあえず300万とした。これが高いのか安いのかわからないが、家が300万円なら安いだろうと思ってそうした。(一応父親にも相談した。)
市役所の担当者と実際に家を見に行く日を決めないといけないと言われたが、平日だとまた仕事を休まないといけないので、今からダメですか?と言ってみたら、いいですよって言ってくれた。
それはラッキーってことで、さっそく行こうとしたが、空き家行くなら鍵がいるやんって思った。
「あ、カギないかも」って言ったら、横にいた父親が「持ってるで」と言った。
えらい!10年以上なんもしてこなかったけど、カギは持ってきてるやん!
ってことで無事担当者の方と空き家に行くことができた。(持ってきてなかったら取りに帰ればいいだけやけど。時間が結構かかるので)
そこで写真を何枚か撮って、市役所の空き家バンクのページに載せておきますと言ってくれた。
家財もほったらかしで、かなり散らかった家の写真だったが、それが現状なので仕方がない。
後日、市役所の方から、無事空き家バンクに登録されたという連絡があった。
家を売るには仲介会社が入るそうで、それが決まったら連絡しますとも言われた。
あとはあんな家でも買いたいと言ってくれる人が出てくるのを待つだけかと思った。
仲介会社も決まってしばらくしたある日、市役所の方からその会社が撤退したと連絡が入った。あの家を売るのを諦めたそうだ。
やばい、そんなにあの家売れないのか。
次の仲介会社を探してみますと市役所の方が言ってたので、よろしくお願いしますと返した。
数日後、仲介会社はどこどこに決まりましたと連絡があったので、よかったーと思った。
それからしばらくして市役所の方から連絡があり、仲介会社が撤退したと連絡があった。あれは売れないと言っていたそうだ。
やばい、どんだけあの家あかんねん。
次の仲介会社を探してみますと市役所の方が言ってたので、よろしくお願いしますと返した。
数日後、仲介会社はどこどこに決まりましたと連絡があったが、次もすぐに撤退するんではないかと不安になった。
1社目も2社目も直接会うことがないまま撤退されたが、3社目の方とは電話をして、空き家で一度会いましょうということになった。
3社目の方は丁寧で、電話で色々と話をした。家財が放置されたままだと印象が良くないので、まずはそれを片付けましょうと。
それもそうだなと思い、さっそく家財回収会社に見積依頼をした。
インターネットで何社か同時に見積をしてくれるサイトを見つけたので、そこで依頼をし、とある日曜日に3社が見積のために空き家に訪問することになった。仲介会社にもその話をしたところ、じゃあその日に会いましょうかということになった。
家財回収会社3社プラス仲介会社、その日はかなり忙しくなるなと思った。
家財回収見積をする日、スケジュールは以下の通りになっている。
10:00~ A社見積
11:30~ B社見積
13:00~ C社見積
15:00~ 仲介会社と初顔合わせ
お昼ご飯食べる暇あるかなーって思っていたが、最悪昼ごはんなしでもいいかと思ってもいた。
10時少し前にさっそく1社目到着。挨拶をして名刺をいただき、空き家の中を見てもらう。
入って早々に言われたのが、玄関にある金庫。これだけ処分するのに数万かかると。
マジか。これだけで数万なら全部でどんだけかかるねん。って不安になった。
その金庫は、イトーキのGOLD SAFE 89と言って、重さが軽く100キロオーバーだそうだ。そんなもん簡単にぽいと捨てられないよな。。
1社目の方は結構気さくで、色々話ができて楽しかった。
結構細かいところまで見てくれたので、信頼はできそうだ。
一通り見終わったので、見積は後日送りますということで、帰って行った。
1時間もかからずに終わったので、ちょっと暇になったかなと思っていたら、10分もしないうちに2社目がやってきた。
あれ、早すぎない?って思ったが、場所を確認しにきただけだったそう。
1社目終わったので、今からでもいいですよってことで、さっそく2社目も空き家を見てもらうことにした。
2社目には自分から金庫の話をしておいた。1社目にはこれが結構費用がかかると言われたと。
それは2社目も同じようで、金庫は処分がめんどくさいので費用がかかるそうだ。
2社目は2人で来ていて、むちゃくちゃ丁寧な会社だなという印象だった。しかもスーツ着てるし。
遺品をちゃんと分別して、大事なものがないかちゃんと確認してもらいます。だそうだ。
いや、全然知らん人が住んでたから、全部捨ててもらってええんやけど。なんの思い入れもないし。
2社目も結構楽しく色々話ができたが、1社目よりは丁寧すぎるので見積は高いだろうなと思った。
2社目が早く始まったおかげで、12時にはお昼休憩を取ることができた。
さて、13:00から3社目。
公民館前に駐車していた車で休憩していたので、数分前になって空き家に向かおうとしたが、近くをキョロキョロしながら歩いている土方の兄ちゃんがいる。まさかあの人じゃないよなって思い、空き家に向かうことにした。
すると、その兄ちゃんが後ろを付いてきて、家財回収の見積のためにきたと言い出した。
マジか、1,2社目と違いすぎる。もう不安や。3社目たぶんないわ。って思った。
その方は営業ではなく、たまたま近くに住んでいたから見てこいと言われたそうだ。やっぱり3社目はないな。
とりあえず全部写真撮っていいですか?って聞かれたので、どうぞと返事しておいた。
この人あの玄関にある金庫に見向きもしなかったが、どうせ3社目ないからいいかと思って何も言わなかった。まぁ全部写真撮るなら金庫も取るだろうし。
全部屋の写真を撮り終わったところで、今日はもう大丈夫ですって言われた。
いや、部屋はええけど玄関の金庫写真撮ってないで。1社目も2社目もこれがネックやって言ってたで!と思ったが、他に撮り忘れてるところはないですか?と聞いてみることにした。
すると、もう全部撮ったという返事。やっぱり3社目はないな。
たぶん一番安い見積を出してくるだろうけど、あとで色々追加料金取られそうやし、これは信頼できないわと。
3社目が終わったところで、仲介会社に電話をした。3社目も終わったので、少し早いですがいつ来てくれてもいいですよと。
ちょっと遠いところにいるので、あと一時間で行きますと言ってくれた。それまでは車で休もう。空き家は汚くてのんびりできないし。
約束の時間になって、仲介会社と初めましてのご挨拶。最初はどんな感じかわからなかったが、話をしているうちに感じのいい人だと思った。
しかも同い年ってことがわかり、会話が弾んだ。この仲介会社はいけると思った。
3社の見積は後日もらうということを伝えたところ、もし高かったらいいところ紹介するので言ってくださいと言われた。
そのいいところとはよく一緒に仕事をしている家財回収会社だそうで、金庫だけでもどのぐらいかかるか聞いてみましょうかということで電話で話を始めた。
たぶん2,3万ぐらいじゃないかと言っていたが、物を見てみないとわからないと言っていた。
そこで、もし今から来れるなら見に来れないか聞いてほしいと仲介会社にお願いしてみたところ、今ならいけるってことでさっそく来てもらうことにした。ついでに家財回収の見積もしてもらうことに。
このスムーズすぎる展開に、なんとなくここに家財回収をお願いすることになるのではないかと感じた。
会社が近くらしく、30分もしないうちにその方が到着。
まずは金庫を見て、思ったより小さいから3万はかからないなと言っていた。100キロオーバーでも小さいんや・・・
家財回収の見積もやってもらい、これはもう捨てたほうがいいとか色々アドバイスをもらい、前の3社には残してもいいと言っていたものも回収対象にして見積をしてもらうことになった。(この会社をD社とする。)
後日出てきた4社の見積は以下の通り。ちなみに自分の予想では30万ぐらい。
A社:予想額より少し高め。見積書が細かく書かれており、わかりやすい。
B社:丁寧なだけあって、やっぱり一番高い。予想より10万以上高いとちょっとね。
C社:A,B社よりは安い。だって金庫見てないしね。他も写真撮っただけでちゃんと見てるのか不安。
D社:どこよりも安い(25万)。しかも仲介会社と何度も仕事をしているため、信頼はできそう。
ということで、D社に即決。
家財回収会社も決まったところで、ほっと一息。
25万は思ったよりも安くなったけど、それでも結構かかる。空き家はいくらで売れるかわからないし。
そこで一つ思いついた。
金庫がなくなったらもう少し安くなるのではないか。
D社にさっそく電話で聞いてみる。
僕「あのー、金庫がなかったら少し値引き可能でしょうか。」
D社「そうですね。1万円ぐらいなら」
僕「わかりました。では24万円になるってことですね。」
ということになった。
とは言っても、処分するには数万かかるので、自分で処分するわけにはいかない。やることは引き取り手を見つけることだ。
そこで思いついたのはメルカリに出品すること。そのために空き家に写真を撮りに行くことにした。
色んな角度から撮り、サイズを測り、メルカリに出品してみた。(重さ:130kg、奥行き:58cm、高さ:73cm、横幅:52cm)
売れなくて当然、売れて儲けものってことで、金額は最低金額の300円にした。
「そんなもん売れんやろ」と親からは言われていたが、自分もそうだと思っていた。
出品して数日経過したが、当然売れない。しかし、閲覧数がやたらと多いことに気づいた。
他にも出品している商品はあるが、他は多くて50ぐらいの閲覧数なのに、金庫は200近かった。
ただ、いいねは1つもついていなかったので、「なんやこの金庫は!?」って興味本位で見ているだけなんだろうなと思った。
そうこうしているうちに家財回収まであと2週間となったある日曜日、いきなり金庫にコメントがついた。
「軽トラでまでの、積込みお手伝い可能でしょうか?」
マジか。これ売れるのか。
少し興奮気味で返信をする。
「是非手伝わせて下さい。」
その後色々やりとりをして、正式に購入された。
売上は300円だが、実質10,300円の価値がある。心の中で「よっしゃ」とガッツポーズをした。
その日に取りに行くという話だったが、あいにくの雨のため別日にしましょうとなった。
で、翌日の月曜日だが、偶然にも会社が休みだったので、翌日17時にしましょうということになった。
わくわくしたまま迎えた翌日。17時数分前に空き家に到着。
購入者の方とあいさつをして、空き家に入って玄関にある金庫を見る。
2人で台車に金庫を乗せようとする。
まったく持ち上がらない・・・
どうする。家から出すこともできないのに、最後には軽トラに積み込むという作業まで必要だ。
130kgを舐めていた。
2人で少し考えてみたが、まったくいい案が出ない。
そこで1つ思いついた。あの草刈りをした時に父親と話していた表の家の人は父親の同級生だったはず。もしかして助けてもらえるのではないか。
表の家に行き、ピンポンする。
僕「金庫運ぶの手伝ってもらえませんかー」
表の家の人「どうしたん?」
僕「金庫を家から出して軽トラに積み込みたいんです。」
表の家の人「えー、ちょっと待ってよ」
と言った感じで、話を聞いてくれた。
そのうち、表の家の人が「おーい」とちょっと先にある家の庭にいる人に声をかける。
「力貸してくれへんかー」→「力ないでー」
と言いながらもこっちに来て話を聞いてくれる。
そのうち、近くを自転車で通りかかった人に表の家の人が声をかける。
「力貸してくれへんかー」→「力ないでー」
この返事流行ってるのか。
2人とも知らない人だが、父親のことは知っているようで、「息子です」と挨拶をしておいた。
人が集まったところで家の金庫を見に行く。
「これはあーしたほうがいい」「いやこーしたほうがいい」などと言いながら、金庫を倒して台車に載せることができた!
よし、これで軽トラがあるところまで運ぼう。
しかし、5人でも130kgを持ち上げるのは大変で、軽トラの荷台に載せるとなると現実的ではなかった。
なんやかんや悩んでいるうちに、自転車のおっちゃんが、「家から木の板持ってくるわ!」と言って帰って行った。
その間に購入者に金庫の開け方を教えておくか。
「右に何回転して10に合わせる、左に何回転して8に合わせる・・・」などとやって金庫を開ける。
すると、扉だけ外せるやんってことが判明!
まずは扉だけ軽トラに積み込んだ。たかが扉だが、それだけでも数十キロはありそうなので、金庫が軽くなった。
そのうち自転車のおっちゃんが木の板を持って戻ってきた。
これで軽トラと地面の間に斜面を作り出し、その上に金庫を倒して滑るようにして軽トラに載せるというのだ。
そんな簡単に行くんかいなと思って試してみる。
まずは金庫を慎重に木の板の真ん中に載せる。
落ちないように慎重に金庫を軽トラの方に滑らせてみる。
うぉ!結構動く!これはいける!
と思ったら、1分もしないうちに軽トラに積み込むことができた。
やったー!ありがとうございます!!
手伝っていただいた方に感謝感謝。
父親が同級生だったおかげで声がかけやすかった。
十年以上空き家をほったらかしていたけど、表の家の人が同級生やったのはナイスやで!
※二人で金庫を持ち上げるのを諦めてから軽トラに載せるまで約30分程度の出来事です。
さて、金庫を積み込んで終わりと行きたいところだが、金庫を購入するような人なので、他にも何か興味があるんじゃないかと思い、空き家の中で欲しいものがあればなんでも持って帰ってくださいよと提案すると、見させていただきます!ということになった。
空き家は物がたくさんあるが、ほぼゴミばっかりだ。
購入者の方がめっちゃ古い扇風機や鬼瓦やはかりなどが欲しいと言ったので、どうぞどうぞと言った。
すると、「この家何があるかちゃんと見たほうがいいですよ。」と言われた。
どういうことかと聞いてみると、「売れるものがいっぱいあるかもしれない」ということだった。
そんな考えは全くなかったが、いろいろと調べてみると、もしかしたら売れるかもしれない箱に入った陶器やら花瓶やらが見つかった。
ものっすごい古い足踏みミシンも見つかり、これはこのまま捨てたらもったいないと言われた。
ということで、欲しいものがあったら持って帰ってくださいと言ったのに、自分が色々と持って帰ることになった。
もちろん欲しいと言っていただいたものは無料で持ち帰ってもらった。
その後、家に帰って空き家から持ち帰ったものをメルカリに出品してみたが、思いのほか売れる。
なんかちっちゃい銀杯(純銀で裏に内閣総理大臣と書いてる)なんかは1万円以上で売れた。
他にも5,000円で売れたものもあり、空き家から持ち帰ってきたものだけで数万円の利益になった。
300円で出した金庫のおかげで、家財回収費が1万円安くなり、メルカリの利益が数万円増えた。
半分冗談で金庫を出品したのに、こんなにいいことがあるだなんて思いもしてなかった。
人目につくようにすることがいかに大事なのかということがよくわかった。
駐車場がなく50万でも売れるかどうかわからないと言われている空き家だが、住宅サイトに掲載することで誰かが見てくれるかもしれない。
そして、運よく興味を持ってくれた方が購入してくれるかもしれない。
そんな期待を抱かせてくれる出来事だった。
どうか空き家が売れますように・・・




