ネックレス愛知県稲沢市の桜木琢磨市議(70)=無所属=が渡航先の中国広東省で、覚醒剤所持の疑いで中国公安当局に拘束された事件が、日中間の新たな火種となりそうだ。事件の真相は明らかになっていないが、桜木市議は中国に対する厳しい発言で知られる対中強硬派。中国側が日本政府との取引材料に使うとの見方も浮上している。
「現在捜査を行っているところだ。詳細は必要な時が来れば公表する」
中国外務省の洪磊(こうらい)副報道局長は15日の定例記者会見でこう述べ、桜木市議の拘束を認めた。中国の刑法で麻薬密輸の最高刑は死刑。2010年には日本人4人の死刑が執行されたほか、11年にも40代の日本人男性に死刑判決が下されている。
市議会の議事録によると、桜木市議は2007年に「戦後60年以上過ぎても中国、韓国に謝罪をさせられているが、なぜこれをやめないのか」「中国、韓国は偏向教育をしている」と発言するなど、対中強硬派としても知られていた。市議会関係者の1人は「桜木さんのそういう発言が、中国当局に目をつけられて、ハメられたのではないか」と語る。
こうした見方について、中国事情に詳しい作家の宮崎正弘氏は「その可能性は低い」とした上で、こう続ける。
「中国では麻薬犯罪が多く、マフィアは軍や地方政府の一部とも結びついている。それだけに中国政府は頭を悩ませており、そういうところに外国人が入ってきたら、見せしめとして厳罰で臨むのではないか」
とはいえ、10年9月に中国漁船衝突事件が発生した直後には、体当たりした船長を拘束した報復措置として、中国当局が準大手ゼネコンケイトスペード「フジタ」の邦人社員4人を拘束した経緯もある。中国政府には“前科”があることも踏まえ、日本政府は同市議の扱いについて注意深く情報収集している。