前回は→その7



 マスタードガスは、皮膚以外にも消化管造血器に障害を起こす事が知られていた。


 

 この造血器に対する作用を応用し、マスタードガスの誘導体であるナイトロジェンマスタード抗癌剤悪性リンパ腫に対して)として使用される。


ナイトロジェンマスタードの抗癌剤としての研究は第二次世界大戦中に米国で行われていた。

 しかし、化学兵器の研究自体が軍事機密であったことから戦争終結後の1946年まで公表されなかった。

一説には、この研究は試作品のナイトロジェンマスタードを用いた人体実験の際、白血病改善の著効があったためという。


【ここまで読んで気が付いた方おられましたか?】

マスタードガスというより、その誘導体のナイトロジェンマスタードが抗癌剤になっているという事。

何か、誘導体というと、薬として改めて開発したんじゃないの?

別物?って何も知らないと思いませんか・・・・?


ところがですね・・・・・・

【誘導体とは?】

有機化学の用語のひとつで、ある有機化合物を母体として考えたとき、官能基の導入、酸化還元、原子の置き換えなど、母体の構造や性質を大幅に変えない程度の改変がなされた化合物のこと。その改変は実際の化学反応として行えることもあるが、机上のものでも構わない。

例えば、クロロベンゼンベンゼンのクロロ誘導体、チオフェノールフェノールのチオ誘導体と表現される。

~以上~


『大幅に変えない程度の改変』つまり、ほぼ

マスタードガス=ナイトロジェンマスタード(抗癌剤)

ってなりますよね?

それをインプットして再びマスタードガスの主な性質を読んでみて下さい・・・・

           

【マスタードガスの人体への作用】

人体を構成する蛋白質DNAに対して強く作用することが知られており、蛋白質やDNAの窒素と反応し(アルキル化反応)、その構造を変性させたり、DNAのアルキル化により遺伝子を傷つけたりすることで毒性を発揮する

このため、皮膚や粘膜などを冒すほか、細胞分裂の阻害を引き起こし、さらに発癌に関連する遺伝子を傷つければ癌を発症する恐れがあり、発癌性を持つ

また、抗がん剤と同様の作用機序であるため、造血器や腸粘膜にも影響が出やすい。

~以上~


しかも・・・・・

ナイトロジェンマスタードという項目その物を調べてみると・・・

窒素マスタードとも呼ばれ化学兵器の一つ。


ナイトロジェンの成分を詳しく解説いたしますと・・・・

第一次世界大戦で使われたマスタードガス硫黄原子を窒素に置き換えた化合物との事


【しかし、これが抗癌剤の初期モデルである】

細胞毒性に着目して使用された最初の抗癌剤で、白血病悪性リンパ腫の治療薬として使われていた。


上の文章を読んでいると、マスタードガスは癌治療で使用するものなのに、発癌物資とか書いてるし、そもそも矛盾しているし

じゃあ一体何でこんな恐ろしい物が治療薬として使われ始めちゃった訳なの?って疑問に感じませんか?


実は、これはイタリアで起きてしまった悲劇がきっかけとなったのです・・・・・


その悲劇とは一体どんな事だったのでしょうか?



続きは→その9