著者: 本田 桂子, 鷹野 薫
タイトル: マッキンゼー 事業再生―ターンアラウンドで企業価値を高める
昨年はダイエー、カネボウと大きな会社が次々と破綻し「事業再生」というのが脚光をあびた。ちょうど昨年末にあの著名な戦略コンサルティングファームのマッキンゼーから事業再生に関する本が出版されたので読んでみた。
本書は大きく2つのパートにわかれている。
前半は、マッキンゼークォータリーに掲載された海外の事業再生のケーススタディー集、そして後半というか最終章はマッキンゼーの本田さんと産業再生機構の冨山さんとの対談だ。
前半のケーススタディは海外での事例+そこから得られる示唆。
示唆は凡庸で特に得るところはなし。
面白かったのは本田・冨山両氏の対談。
冨山氏が自分の手がけた再生案件の経験を踏まえ、何が日本で事業再生をすすめるにあたって障害になるのか語っており興味深く読むことができた。
事業再生にあたっての必要なプロシージャはシンプルである。
①この会社は再生するに値するか評価する
(再生に値しないなら清算する)
②財務リストラを行って当面の資金繰りをなんとかする
③将来の持続的成長を見据えて事業の再構築をする
ところが、なぜこれがうまくいかないか?
それは、日本で債権者であるメインバンクが事業再生の主導権を握ることが多いが、彼らが財務リストラのスキルしかもちあわせず、①と③で躓いてしまうそうだ。
①で、当該事業が持続的にキャッシュをうみだせそうかどうか判断しなければいけないのに、再建人が資産評価しかできない。
また、再建人がまともな事業評価ができないので、②で事業の継続に必要な資産まで売ってしまう。
さらに、③についてもどうやって持続的な競争優位を確立できるか考えることができない。
要するに銀行主導の再建というのは、資産売却・債権放棄等による財務リストラ一辺倒というパターン多く、その結果として縮小均衡に陥り、最後は死に至ってしまうことが多いそうだ。
要は財務と事業両方わかる経営再建人が日本に少ないってことらしい。
そこで産業再生機構が活躍するってわけね。なるほど!