水分がいっぱいのお芝居。

いいのかな、言っても。

あ、感想ではなく振り返った印象。

感想はまだ空に打ち上がったきり、胸に落ちてきませんので。

ストーリーには触れませんが、そんなわけで心のままに書きますけれども。

コンクリの打ちっ放しみたいな無機質なセットの中で

あらゆる水分が出てくる芝居。

まずはゴクゴク。

あの炭酸をあれだけ短時間にきれいに

泡切れも見事に飲み干す人を見たことないです。

更には色んな感情をほとばしらせた体からの

時にサラサラした、時にダラリと粘度の高い水分。

顔にへばりついたままでも、飛沫となって床に散っても

胸の中には幻の滝のようにとめどなく流れ込んでくるのです。

ラスト、粕谷は完全に燃え尽きていたから

あれだけの水分が放出されたんでしょうね。

カーテンコール、RON×Ⅱさんはちゃんと「人間」だったのに

虎ノ介さんは「ろうそくの黒い芯」だったもん。

そこには気持ちみたいな有機的なものは欠片も存在しない、みたいな。

きれいなうなじでお辞儀をなさっていました、吹き消された芯は。

ところで皆さんが感嘆している

あるいはおおいに期待なさっている独白のシーン。

私は直前の二人の緊迫したやりとりから一線を画して

すーっとトーンをクールダウンさせるあの感じ

あの冷えた空気の作り方が文字通りゾクッときます。

さて、詰まるところ、あなたは粕谷と友達になれますか?

いわんや、恋人には?

私は自分が粕谷だったら

自分のことが嫌いだと思う。

彼ほど彼を大事には思えない。そんな気がしています。