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経済学に無知なることは罪ではない.しかし無知なるままに経済問題を声高に論じることはまったく無責任であるといえる.(ロスバード)

TwitterID 男前先生 @_dt4u / 所属機関組織に無関係の個人としての不定期落書き / すべては良識に基づきます

 日本の輸出産業はトップの自動車に大きく依存している。いまどき,自動車だ。

 

 この自動車産業に次ぐ,2位の年間8兆1000億円(24年)を稼ぎ出しているのがインバウンドである。統計上はインバウンドは輸出で換算されるので間違っていないだろう。

 24年は3700万人,25年は万博もあって4300万人を突破するだろうといわれている。いわずと知れた「成長産業」であり,他国を例に見てもまだまだ伸びしろのある産業だ。

 フランスは年間1億人,スペインは8500万人の観光客がある。ちなみにフランスは人口6800万人,スペインは4900万人だから,人口の1.5倍から1.7倍の観光客を受け入れているのであって,そこから見ると日本は人口1億2000万人に対し観光客4300万人,人口比約0.36倍とまだまだ伸びしろがあるといえるのだ。

 

 一方でオーバーツーリズムの問題がささやかれている。

 

 新幹線に乗ってもバスに乗っても,すべての外国人が手荷物配送サービスを利用するわけではないから,どうしてもどでかいスーツケースを通路に放置し,地域のマナーや慣習を理解せずに意図せず迷惑行為をしているといった問題も,一部の観光客でみられる。

 ここで勘違いしてはいけないのが,すべての観光客が害を及ぼしているのではないということだ。大方の外国人は日本の文化をリスペクトし,礼節正しく行動している。そもそも迷惑行為をそうとも思わない感度の鈍い人間というのは,どこの国にも一定数存在するものだ。

 

 こうした外国人観光客の多くが三大都市を目的地に集まってくる。そしてまた景勝地などに散って観光を楽しんでいる。彼らの行動力はわれわれ日本人の想像をはるかに上回っており,休むことなく毎日,せっせと観光地をめぐる。長期休暇を充ててきている人もいるから,さながら日本一周にちかい足取りで,さすがの日本人でもそこまで回ったことがないような数の観光地巡りを楽しんでいる人たちも少なくないのだ。

 

 一方で日本人はというと,彼らインバウンドの多くが英語を駆使してコミュニケーションがとれるのに比し,ほとんどの人がちょっとした道案内もできない。多くの日本人は外国人とのコミュニケーションがとっても苦手だ。これは今後,大きな課題になってくるだろう。私の知っている英語教師は英会話にまるで自信がないと言っている始末だ。日本,がんばれ。

 もっとも,小売りや飲食店などの多くはタッチパネルで注文の収受ができるようになっているため,今後もこの流れで普及が続けばインバウンドの恩恵に浴することができるだろう。問題はちょっとした会話,説明に対応できないことだ。この点で,日本の教育にも努力目標の置き換えが進むことが急がれる。

 

 問題というか懸念されることがひとつあって,それはインバウンドを受け入れる観光地で,十分な宿泊キャパシティが足りない,ということだ。

 某温泉ではインバウンド利用が急増して,日本人観光客が予約をとれないという問題に直面している。それは部屋数の問題に限らず,宿泊料金が高騰して本来来るべきだった日本人が価格に二の足を踏んで泣く泣く,あきらめるという現実がある。

 もっとも,経済的好循環が生まれるのは好ましいことなのだが,当の日本人からすると外国人との間に格差を感じずにはいられないだろう。そもそも日本人で8週間も休みの取れる勤め人がどれだけいるだろうか。彼らは当たり前に8週間,9週間の休みをとって日本旅行を楽しんでいるのだ。日本人にできる芸当じゃない。

 

 よほど日本が魅力を失うようなことさえしなければ,今後もインバウンドは伸び続けるだろう。フランスや中国と,あるいはそれ以上に食の恵みにあふれた日本である。食事だけを楽しみに,いわばガストロノミーツーリズムで訪れる観光客も珍しくはない。

 日本あるいは日本人に求められるのは少しの英語力と,地方地域の情報発信だ。食や文化を今一度,また情報発信の手法も見直すべき時が来ている。

 オーバーツーリズムの問題も,それを拒絶することばかりでなく,具体的な解決策を練り,地域づくりや適度な距離感を創出すべきときだろう。