新田次郎氏の、この小説で雪山の壮絶さを思い知った気がする。


ここでも、組織人としての人間模様や、競争心、虚栄心が描かれていた。


厳冬期の八甲田山越えを、来るべき戦争に備え実施する目的であったが、そういう雪山においても、生き残ることができるか、といったような、いわば人体実験に等しいことが実際に行われた事について、現代に生きる私を、なんとも恐ろしいことだと思わしめる。


集団は、声の大きい人の意見で流されていく傾向があることは、私も時折感じることがある。


たとえば、それだけのそういう人が、運よく権力を得、実際に生死を分ける判断を下さなければ


成らないとき、きっとこういう悲惨なことがおきるのだろうと思う。



神田大尉、徳島大尉の組織における境遇や、その地位にいたるまでの過程、人間性が対象的で


その差が、結果の違いを生んだように思えた。そのようにストーリーを組んでいるのだろうと思う。




孤高の人もそうだが、雪山での死は不適切な判断に甘んじた結果生じるものであるように言っている。

極限状態において、他人、たとえば上司や友人などの判断が正しいと判断できるか、自らの能力が


それについて高い場合、自分の判断を適切と考えることができるか、プライドや組織内での上限関係、


性格、そういう余計なものを排除し、だれであれ信頼できるか、という点を客観的に冷静に判断できなければ


生きることができないのが、雪山なのだろうと思った。



たぶん、私は、人を見抜いて信頼を寄せることができない人なので、本能的にパーティーを組んだ登山が


嫌いで、単独行が好きなんだろうなぁ


八甲田山死の彷徨 (新潮文庫)/新田 次郎



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