た。真浪が早口で見事にいい連ねた、商国が取り扱う品々の目録は、高比古の耳には真新しかった。
「毛皮や食い物はともかく、宝玉って、そんなにみんなが欲しがるものなのか?」
出雲の策士として、それだけにはとくに魅力を感じなかった。
「それぞれだよ。自分の身を飾りたい奴は、なにをおいても欲しがるし」
真浪のあっさりとした喋り方は、出し惜しみをする気はないといいたげで、正直に裏事情を話しているのだと高比古に認めさせた。
「越の宝玉の質は、倭国一だからね。はずれがないという意味で、どんな品物とも換えてもらえる一級品だよ。小さくても値打ちがあるから、運ぶのも楽だしな」
「運ぶのが、楽?」
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「そりゃ、そうさ。いくら人気があっても、船が沈みかけるような重い品じゃ、たくさん運べないからね。商売あがったりだよ。軽いものといえば、絹もうちのは上等と人気だ。塩は、海のない陸の国で必ず売れる。あとは、魚や貝も」
「魚や貝?」
「とくに、干し鮑(あわび)が人気だね」
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「上物の貝だよ。主に大陸向けさ。大陸の人は鮑が好きらしくて、倭国のものは珍しいと評判で、いい取り引きができる。織物や北の国の飾りも、意外に受けがいい。大陸では、珍しいものが受けるんだ」
童顔でにこにこと笑いながら、真浪は弛むこともなく知識を披露した。それから一度唇を閉じて、軽く目配せをした。
「出雲が欲しがるのは、書物だろ?」
高比古は、返す言葉に詰まった。
出雲の王宮には、大陸から持ち込んだ書物を仕舞う倉がある。それは、知っていたが――。
「ごめん、わからない」
正直に無知を伝えると、真浪はにっと笑った。馬鹿にするような真似はせず、むしろ真浪は、より丁寧に謎解きをしてみせた。
「出雲に要るのは、知恵らしいよ。大陸から持ち帰る漢籍や書物は、出雲に受けがいい。大陸帰りの越の匠(たくみ)も人気の品だね。建築から造船、制度にいたるまで、出雲は新しい技術に目がない」
さっきからそうだったが、真浪の口から流れ出ていく言葉はすらすらとしていて、自国の生業を知り尽くしているという風に、いいよどむことがなかった。
「出雲は、倭国一の鉄の産地だ。この戦の世に、誰もが欲しがる鉄を、大陸や韓(から)までわざわざ買い付けにいく必要もない。欲しいのは、それを操る技術だ。そうだろ?」
自国の生業――いや、彼は、越が取り引きをするすべての国の好みを知り尽くしているのだ。
高比古は、尊敬をこめて嘆息した。
「……恐れ入った」
こういう一族は、仲間にすればさぞかし心強いだろう。
越が出雲の友国であることを誇りに思う――。そう気持ちを込めたのが通じたのか、真浪は嬉しそうにはにかんだ。
「どういたしまして。今後ともごひいきに」
最後まで、商魂は逞しいようだが。
4章、越の若王 (2)
「港で越(こし)の船を見たよ。立派な造りだな」
「だろ、だろ? うちの宝玉の産地が近場の島ってこともあって、越は、昔から船を造るのが盛んなんだ。おかげで、館を建てるのも得意だよ。越の山には丈夫な木がたくさんあるしね」
「船を造るのが盛んだと、館を建てるのも得意なのか?」
「そりゃあ。木を使うんだから、もとは同じだろ? 木の匠(たくみ)にいわせれば、館を建てるほうが、船を造るよりよっぽど楽らしいけどね。船は、木組みをわずかでもしくじると船乗りを死なせてしまうから。出雲にも、越の木の匠は大勢移り住んでいるはずだよ」
「――そういえば、出雲には越の名がついた里があったな」
「それだよ。須佐乃男(すさのお)様の代に造られたはずだよ」
海風に