はじめまして。
ここの管理人、綾宮 椿です。
このブログはオリジナルの小説サイト
創造の匣 のために生まれた小説オンリーブログです。
なので、創造の匣を知らないと面白くないかもです。
行った事が無い方はぜひ!どれも精鋭の3人 (数の上では僕を含め) がオリジナルの小説を更新
■椿に喝を入れてみる
kurenaitubaki.grimson@gmail.com
はじめまして。
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kurenaitubaki.grimson@gmail.com
王は、血の海に視線を落とす。
面倒なことになったと忌むような目と、汚らしいものを見るような目がないまぜになっている。もはや、この中で誰よりも恐怖の色を失っているように見えた。
そして、その血の海に落ちているのはトレアの頭―
呆然とするしかなかった。状況が、事態が、呑み込めない。
観客はざわめいている。誰もが、初めて人間の生首を見てしまって、どうしたら良いのかわからなくなっている。
は、はは…乾いた笑いがこぼれた。
最初、その場にいる人間たちは、自分自身のことだけに精一杯で、誰も気づかなかった。顔を歪めているアリアの存在に。
―違うでしょ? そうじゃ、ないでしょ?
「ぁはははははははははははは!!!!!!!」
ぎょっとしたように、それこそ化け物でも見るみたいに、突然笑い出したアリアに視線が釘付けになる。
「トレア。トレア、トレア、トレア、トレア!!!!」
アリアはしゃがみこんで、血の海からトレアの首をすくいあげた。それを高く掲げる。ばたばたっと嫌な音がして血が落ちる。王の嫌悪を露にした表情が目に浮かぶ。
「そうじゃ、ないでしょ?」
何の躊躇もなくトレアの首を抱きしめた。その頭に顔をうずめる。
瞬間―
トレアの首と、体がどろどろ溶解していく。どろどろと、輪郭を失い始めた。まるで体の内側から血が涌き出るように。
ほとんどの人間が言葉にならない叫び声を上げている。目をそむけている人間も多い。
バラバラになっても再生する腕の次は―
"溶け出す人間の体"
「おはようのキスをしてあげる」アリアが云うと、広がっていた血が、急速にアリアを中心に集まりだし、形をつくり出した。
まるで血が、それぞれの血の一滴、一滴、どんな細かな一滴も命を持ったように動き出す。
そして、顔、流れる髪、肩、上半身から下半身へと、あっという間に"死んだはず"のトレアが、生前の姿そのままに現れた。
かぶった血液が油のように体からはじかれて、トレアの青白い素肌が露になる。
衣服もそのままに戻る。
時間を『省略』したように、何もかもが全て『元』に戻った。
「お嬢様、お恥ずかしい失態をみせました。申し訳ござません。」
もし、違いを挙げるなら、かかとにつくほど長く伸びた髪と、静かに開いた眼の色が赤みを帯びていること。
トレアは、薄く笑みを帯びる。
扉の近くにいた従者が、とうとう獣の咆哮に似た叫び声を上げた。
床にまで伸びた髪から、異様な音がそれに混じって聞こえてくる。
ゴクリ、と喉を鳴らす音。ゴクゴクと"何かを飲み干そうとする音"。
次に悲鳴をあげたのは護衛の人間だった。
「何なんだ、これはぁぁぁ!」
周りの血液を吸収し終えると、今度は『外』にまで飛び散った血液までも集める。
自分の体に浴びていた返り血が、まるで命をもったようにトレアの元へと集まる。
あり得ない、あり得ないと繰り返し叫ぶ。
―そう。確かに、今まで以上に、例外なく、これ以上ありえない事は、ないんじゃないかという事態が起きた。
トレアの髪が、床に流れた血を"吸っている"のだ。血が少しずつ髪の毛の元へと収束し、その度にゴクゴクと不気味な音が聞こえる。
辺りから一滴の血もなくなると、トレアの青みを帯びた髪は緋色へと変貌した。
「まさか、この城には吸血鬼が2匹も隠れていたのか!」
王が、吐き捨てる。
「誰かこいつらを殺せ! すぐに磔にしろ!火あぶりだ!!こいつらを殺せば、いくらでも報酬をやる!!」
躍起になって叫び、ほんの少しの希望を発見したような顔で
「そうだ、銀だ!こいつらは銀が嫌いなはず!誰か、すぐに―」
王は別の護衛が持っていた銃をもぎとる。そこで、ひぃっ!と小さな叫び声を漏らした。
「哀れな王よわたくしには、シルバー・ブレッドなど何の効果ももたらしません。」
いつの間にか、トレアは王のすぐ近くに迫っている。柔和な顔立ちだが、その顔は鬼のような狂気の表情をうかべている。
「なっ…あぁ…」
「トレアなら―この執事なら、生まれ付いての吸血鬼だから、撃たれればもの凄く痛いでしょうけど、わかるでしょ?いくら撃ったところで―」
「黙れ!!!」
いつか、銀薔薇の庭園にいた下女のように叫んで、自分の耳を覆って、聞こえないようにした。
「人間は、いつもそうだ。目の前に突きつけられた事実を認めたくなかったら、耳をふさぎ、声をあらげる。」
トレアはただ黙って付き従う執事の姿から、かけ離れて見えた。柔らかい顔はそのままだが、何か表現することのかなわない狂気のようなものに、満ちている。
「トレア、人間は本当のことを言ったら怒るのよ?それぐらいにしなさい。」
「御意〔イエス〕。」
怯え、おののく人間たちの中で、アリアとトレアはあまりに異常だった。
「そうそう、さっきの訂正していおいてね。」
「…な、何がだ?」
王はすっかり狼狽している。
「この城にいる吸血鬼は、2匹ではないわ。トレア一人よ!」
「何だと!? おかしいではないか!それでは、家臣が見た化け物は何だったというのだ。牙を生やし、とても人間の姿ではなかったと―」
「あれは、トレアよ。」
To be continued...
「お嬢様!」
悲痛な声をあげたのは、後ろで従者によって拘束された執事だ。
王は冷たい目で見た。まるで"ああ、いたんですか"とでも云うようだった。
「君はただの人間だろ?今は、一介の人間の出てくる場面ではないよ。」
トレアは、アリアに向かって何かを言いたげだった。それでも悔しそうに黙った。
「そう。執事なら執事らしく黙っていれば良いんだ。」
歓声と歓喜と熱した観客たちで、王も頭が熱くなっているんだろう。満足そうに頷いた。
「殺せ。」
冷めた声で、斧をもった護衛をうながす。まだ、傷の回復が完全でないアリアは静かに、斧を眺めるしか出来なかった。
無機質で、残酷な斧が、自分の頭か首にめがけて飛んでくる。
そもそも斧はというのは、刀や剣のように鋭利ではない。重たい刃を振りかざして、その勢いで断頭台のように振り落とし、えぐるように切断する。―それを体の遠心力だけで振り切ろうとするものだから、途中に骨にぶつかって止まった時、より苦痛を、発狂しそうな痛みを与えられることは間違いない。
だけど―あまりに予想外。あまりに想定外。もう、逃げることはとても出来そうにない。じれったい程に、アリアの体が動かない。
「お嬢様!!!!」
後ろで
執事が
さけんで いる―
一瞬の幕間
「うえぇぁぁッぁぁぁぁっぁぁぁ!」
アリアの腕が切断された時よりも数段ひどい叫び声…特にひどいのは、目の前にいる護衛の男だ。
―…"目の前にいる"?
我に返る。目の前には、血の海が広がっている。
―誰の、血?
その血につかるひとつの頭
―わたしじゃ、ない
自分の手を見てもう一度、血の海に視線を落とす。
「わぁぁっ どど、どういう事だよ!ヒト、ひ、人を…!」
護衛は呂律がおかしくなっている。
「おい、貴様らは何をやっていたのだ!」
震える声を精一杯に抑えながら叫ぶ、王―
ぱくぱくと、魚のように口を開けたり閉じたりしている従者たち。一人が、泣きそうな顔でも正気を取り戻している様子で言った。
「も、もも!申し訳ございません!一瞬にして、体中の間接を外して」
「そんな馬鹿なことがあるか!」
―体中の間接を? ははっ "彼"になら、それぐらい雑作も無いこと―
「あぁ、申し訳ございません。例え、今から死なれる身であっても、先に執事を殺害してしまって。」
To be continued.....
「さぁ、闇の王である吸血鬼よ。早くその腕をつなげなくては、死してしまうぞ。」
王は、再びアリアへと近づく。アリアから一瞬離れたのは、罵倒されて精神的にダメージを受けたからではなかった。切断された瞬間に飛び散る血を、受けないようにする為だった。
顔を隠したのは、アリアの驚く顔を想像して笑ってしまうのを、誰にも見せないようにする為。
そう考えると、どこまでも吐き気のする人種だった。
恍惚とした顔で笑ってアリアの顎を、手で無理やり上に上げさせた。さっきとは立場の逆転。王のターンになり、優越感から歓喜がにじみでている。
「この痴れ者が!」
アリアは残った利き腕で王の手を払い落とした。
「この体は、貴殿のような人間に触れられることを、そう簡単に許したりはしない。自分の身の汚らわしいことを自覚し、恥じるべきだわ!」
アリアは、気丈な姿で言い放った。しかし王は動揺しない。まるで、このことは想定の内だというように喜色を浮かべている。
広間にいる貴族たちは、二人のやり取りを見ているうちにようやく、にわかにただ事ではない、と認識し始めた。普通なら腕は切断されて生きていられるわけがない。それなのにアリアは顔色すら変わらないのだ。
アリアは自分の足で歩いて、腕を拾いあげた。
「さぁ吸血鬼よ!一体、どんな魔術を見せてくれるんだ?」
王は、皮肉を交えながらアリアに訊ねてきた。彼女はそれを気にとめもしない。
正しく言えば、気にとめることも出来ない。血を流しすぎ、痛みに意識も朦朧としてくる。
光の眩しいこの広間。
全体が白っぽい塗装をされているから、意識がぼんやりしてくるとあっという間に目の前が真っ白になれる。
冴え冴えと明るい鮮血の色を頼りに歩く。
それぐらいに、アリアは切羽詰まっている。余裕は、ない。あの啖呵も奇跡に近かった。
落ちた手を顔に近づけて向きを確認するという、間の抜けた動作のあと、腕に無理やり押し付ける。それは煙草の火を手のひらで捻り消すようで、周りから見れば、傷をえぐる自虐的行為以外の何ものでもない。しかし彼女の腕は、手を押し付けた瞬間からピタリと出血が止まった。びくびくと痙攣をおこしながら少しずつ…少しずつ、その切断面が綺麗に”元の状態”へと近づいていく。
広間の人間たちは、固唾を呑んで事の成り行きを見続けた。誰も事態を呑み込めないでいる。しかし、一番、近くで見ていた王は、ぱんぱんぱんと拍手をした。
「ははっ! 素晴らしい!素晴らしいぞ。これが、これが吸血鬼の力というものか―!!」
何故かやけくそにも見えた。広間にいる人間たちも、何人かは歓声に似た声を上げている。
「げ、現代医術の枠を超えましたなぁ!」
空笑いと意味のない言葉の羅列。
それでも、ほとんどは恐ろしさが勝ってしまい、きつく口を閉ざしている。
それはそうだ。人間の体がくっついたり、一瞬で髪がどんどん伸びて、その上色まで変わるなど常識の範疇ではかれることじゃない。人間ではないから、出来る。そう考えた方が当然簡単だし、それは自分のたちの目の前にいるのが本物の化け物であることをまざまざと証明してしまったことになる。
「どうだろう? 皆は、こんな化け物を城で飼っているなど、恐ろしいとは思わないか?」
王が言うその台詞には、全員が同意した。何人かが声をあげる。
「そうだ。こんな存在がいては、枕を高くして寝ることなど出来ない。」
「仕事にも集中できないから、せ、政務が滞ってしまうわ。」
老人のこの台詞に、ちらほらと笑う者がいた。笑いでもしなくては、最早正常な精神を保っていられないのかもしれない。それとも、こんな事で笑ってしまうぐらい頭が、おかしくなっているのかもしれない。
王は、極度の緊張とその反動で沸き立っている臣下たちを手で制した。
「そうだろう?この城の奥深くに棲む、この国の未来について最も解答に近い、回答を導き出したと謳われる7人の魔術師〔ウィザード〕たち。彼らですら、こんな小さな少女を殺すことをためらったのだ。」
おお、と不安そうな声があがる。
「それぐらい、この吸血鬼の女は恐ろしい!その上、彼女はわたしの母、つまりは自分の影武者を強い怨念と憎悪で、殺してしまったのだ!!」
それは初耳だと云わんばかりにざわめく。王も悲観にくれるような顔をした。
「わたしの母が若くして亡くなったのは、皆知っているだろう?あれは王位に就けなかった彼女の呪いのせいだと言われている!どうだ、恐ろしくはないか?」
全員の顔を見渡す。王の視線にうなづく者もいた。
「さぁ!皆よ よく集まってくれた。」
わざとらしいぐらい大仰に手を広げ、演技ががった口調で話す。
演説をしているのは、年を召して頬の肉が削げ落ちた一人の男だ。長身で、顔に刻まれた深い皺は彼の人生を物語っている。
アリアの影武者になった双子の妹の子供。現在、この国の頂点に立っている国王―
「この城には、実は知られていない隠し事が数多く存在するのだ。
もちろん、その全てを語るは禁忌の所作。王であるわたしにはとても出来ない。
しかし、今回はその中で最たるものを見せようと集まってもらった。」
王は人差し指を立て、勿体ぶった喋り方をする。その言葉に、観客たちは喜ぶように拍手をおくった。その身分はようとして知れないが、暇を持て余した貴族や臣下たちであるに違いなく、全員が派手な衣装と仮面を被っている。
豪奢を極めた玉座。その傍らにいる従者に目配せをした。それを受けた従者が、広間の一番大きな入り口に向かって、手を上に指し伸ばした。
「こちらが、時期王女の身でありながら、その身を地へと堕とした吸血鬼にございます!」
朗々とよく通る声で叫んだ。同時に、扉が開く。再び歓喜の声のようなものが響いた。
現れた吸血鬼は驚くほど幼かった。良くても15歳ごろの、少女と呼ぶのが相応しぐらいだ。それで、観客たちは歓喜の声からざわざわと疑念の言葉をあげかけている。
「皆が疑う気持ちはよくわかる。しかし吸血鬼は総じて年はとらないものだ。故にこの少女もこの姿でいながら、もう齢は数十年に達しようとしている!」
観客の反応はばらばらだった。それを信じて驚く者と、まだ疑っている者との差だ。けれど、王はそれに制することもしない。重い腰を玉座から浮かし、別の従者―というよりは真っ黒なローブを羽織っていながらも尚わかる、その体格の良さから判断して、護衛だと思われる男―を連れて、アリアの元へと歩み寄った。
「はじめまして。今宵は、お越し頂きとても嬉しく思っています。」
立派な淑女に、夜会でダンスにでも誘うかのように、優しく、柔らかな動きで手をとり、軽い会釈をした。
「わたしが、王位を継いでいたなら子を授かり、産み落とし、このぐらいの年まで成長していたのね。」アリアは見世物にされているにも関わらず、堂々としている。
「左様でございます。しかし、わたくしの母は早く亡くなってしまいました。貴女のその姿は、母そのもの。まるで、母が若かった頃の肖像画から抜き出してきたようです。
嗚呼、何と美しいことか…」
片方の手を胸にあて、もう片方の手は額に当てて、陶酔しているかのようなポーズだ。
「下らない。」
吐き捨てるように、残酷なまでに冷えた声が発せられた。もちろん、アリアが発した声だ。
「今、何と…?」王は狼狽しながら言った。
「下らない、と言ったのよ。到底、わたしを呼び出す理由には満たないわ。」
その一声に、ざわめいていた広間が水をうったように静まり返る。
王は、額に当てていた手で顔を覆うとよろめいたように2、3歩後ろに後退した。
「さて。改めてお聞き致しますわ。わたしをこの場に招聘〔しょうへい〕頂いたのは、どういった理由でございましょうか?」
何に対して、と云われても困るけれどアリアは何かに勝った。この場は既にアリアの手によって掌握されている。アリアは勝利を確信して、勝ち誇ったとも言える笑顔で”あえて”丁寧に挨拶をする。ドレスの裾をちょい、とつまんで深く頭を下げた。
その、刹那―
王はマントをたなびかせて、腕を天へと振り上げた。体中のあちこちに付けられた装飾が鈴のような音色を放つ。
その、腕が床に向かっておろされた瞬間に―
「いぃやぁぁぁぁぁぁ!!!」
誰か、1人ではなく、大勢の人間から、叫び声があがる。倒れる者や吐き出す者、顔を青ざめさせている者たち。
その原因である"当事者"の体からごっそり欠けてしまった"それ"。
綺麗な白緑〔びゃくろく〕…薄緑色のドレスが、真っ赤な血の色へとみるみるうちに染まっていく。
王は腕を断頭台のように振り落とす仕草で、横にいる従者に命令をかけたのだ。その、命令を受けた従者は黒いローブの下に一振りの斧のような武器を隠し持っていた。
そして―
斧はアリアの左手首から下を完全に斬りおとしてしまった。アリアの体からは、間抜けに見えるくらいに血が吹き出て、会釈した姿勢のまま硬直して、動けないでいる。
『どんな顔をしているのかもわからないが、恐らくは青ざめて歯の根もあわないぐらい震えそうなのを、必死に叱咤して、抑えようとしているのかもしれないな…!』
王はそんな事を考えていた。その間にもドレスは血という水分を吸収して、重たそうになり、血溜りを作っている。