プロゴルファー・沖田圭介の人生録
ここ数年、石川遼選手の活躍もあって大きな盛り上がりを見せている男子プロゴルフ。しかし、そんな盛り上がりを見せるずっと前から、マンガファンの心を熱くしてくれていた一人の日本人男子プロゴルファーがいることをご存じでしょうか。その男の名は沖田圭介。今回ご紹介させていただくマンガの主人公です。
風の大地
- 風の大地 52 優しすぎる人 (ビッグコミックス)/坂田 信弘

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原作 坂田信弘 画 かざま鋭二
<現在52巻まで刊行>
原作は、TVなどで厳しい教育を取り上げられることもある坂田塾の塾長を務められている坂田信弘氏。主人公の沖田の経歴(京都大学中退や、鹿沼カントリー倶楽部で研修生をしていた、など)は坂田氏のものと同じで、物語の最初の方は坂田氏の体験を元に進んでいたそうです。
さて、物語についてですが、24歳という年齢(プロゴルファーを目指す人間としては遅すぎる)からプロゴルファーを目指すことになった沖田圭介が、研修生の期間を経て、ゴルフを始めてわずか1年でプロテストに合格、その後日本だけでなく、海外のトーナメントや、四大大会と呼ばれる全英オープン、マスターズなどで華々しい成績を残していくというもの。これだけ聞くと、遅咲きの天才ゴルファーの大活躍を描く、非常にマンガ的な物語に感じるかも知れせんが、この作品はそれだけの物語ではありません。
確かに沖田は持ち前の優れた体格を生かした飛距離など、ゴルフ向きの才能を持ってはいるのですが、彼のもっとも優れた点は、どんな栄光を掴もうとも、どんな苦境に立たされようともたゆまぬ努力を続けるところ。そして、周りの人間を引きつける人間的な魅力と、他人のアドバイスを真摯に受け止める素直さなのです。そのことは宇賀神や笠崎といった人々の存在からも見て取れます。宇賀神は鹿沼カントリー倶楽部の食堂で働く料理人、笠崎は沖田の先輩研修生にあたる人物です。彼らはプロになれずにリタイア、もしくは長年プロになれないという人間で、すでにプロゴルファーになり、第一線で活躍する沖田からすれば、彼らからのアドバイスは忘れてしまってもしょうがないものかと考えるのが普通です。しかし、常に初心を忘れない沖田はマスターズの緊迫した場面でも彼らのことを思い出し、そのアドバイスを実践するのです。

○試合中に宇賀神からのアドバイスを思い出し、心の中で宇賀神に語りかける沖田。

○マスターズという大きな大会の緊張のパッティングでも、沖田は宇賀神の存在を忘れない。
その素直な人柄は、最初沖田に対して敵意や反感を抱いていた人間すらも彼の理解者としてしまうほど。本当に沖田圭介という男ほど「好漢」という表現の似合う人間はいないのではないでしょうか。

○エリートの長谷川は、初心者の沖田がプロを目指すことが気に食わず、ことあるごとに沖田に辛く当たる物語序盤のライバル的なキャラクター。


○しかし、最後には長谷川もともに戦った沖田を認める。原作屈指の熱いエピソードです。
また、プロゴルファーを描く際に切っても切れないのがキャディーの存在。沖田は大会ごとに地元の人間をキャディーとして雇います。彼くらいのランクの選手であれば、気の合う人間を試合に帯同させてしかるべきなのですが(事実沖田のライバルたちはそうしています)、そのキャディーたちにもドラマはあって、沖田に付いていくことができないんですね。そこで描かれるドラマもまた秀逸。本当にこの作品は試合中の緊迫感だけでなく、こういった試合の前後のドラマが素晴らしいんです。
そして、同じ坂田氏が原作を手がけた陸上競技のマンガ『奈緒子』と同じく、沖田を始めとする多くのキャラクターが自身の人生観を語る長いセリフもこの作品の特徴の1つ。各話のラストには沖田の心境や状態を語る詩のような文章も付けられています。初めて読んだ方は「文字が多すぎる」と辟易としてしまうかもしれまんが、できるだけこの文章も読んでみてください。中にはあなたの心に響く言葉もあるかもしれませんので。

○各話の最後に必ずある詩的な文章。これも『風の大地』の魅力の1つです。
単なるゴルフマンガではなく、沖田圭介という一人の男の人生を描くこの作品。現在52巻まで刊行、」と長い作品ではありますが、読み始めたら止まらない作品です。ぜひ一度読んでみてください。
☆GUMP☆
