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へその緒のはなし

「へその緒」を研究する産婦人科医のブログ。
かつては、みんながお世話になったはずである「へその緒」の神秘的なしくみと、その異常への挑戦を語る。

 先日、とある講演にいってまいりまして、またまたおへその超音波の話をしてきました。



 検査技師さんや助産師さんなどが多い会とのことでしたが、多くの質問、コメントをもらい、自分もいろいろ考えさせられた会でした。



 そのひとつが、今日のおはなし。




 臍帯脱出という異常があります。




 本来、頭位(赤ちゃんが頭から出てくる)であれば、赤ちゃんのからだの部分で頭が最も大きいので、頭が産道に密着して下がってきますので、首より下、へその緒も、頭がでるまでは、外にでません。



 しかし、あかちゃんよりも産道の前側にへその緒が垂れてきてしまう状態を臍帯下垂、脱出といいます。


 下垂は、破水する前に気づかれた場合で、まだ卵膜に包まれている状態。
 脱出は、破水してしまい、へその緒が産道や体外に飛び出てしまった状態。


 です。




 下垂も脱出も、狭い産道と赤ちゃんの頭とか体の一部に強く挟まれることになりますので、血流が悪くなり、苦しい状態になります。特に、破水して、とびでてしまった臍帯脱出は、へその緒の圧迫の影響だけでなく、温度が下がることによる血管収縮で、より苦しい状態になり、急いで分娩にしなければなりません。


 お腹のなかの都合なので、下垂することを避けることはできませんが、できれば破水する前の下垂の状態でみつけたいものです。






 臍帯下垂や脱出は、頭で産道を密閉していない状態、たとえば骨盤位(さかご)や、上に浮いてしまっている状態、たとえば双子、胎児が小さい場合、羊水が多い場合などに起こりやすいのです。



 しかし、起きる頻度はそんなに多くありません。頭位なら数千分の1ぐらいの頻度とか。





 そこで、悩ましいのは羊水が多い場合(羊水過多)なんです。。。。




 我々、産婦人科には帝王切開をしてよいかどうかの厳しい適応というものがありまして、安易に帝王切開をしてはいけないことになっています。それは、手術が多かれ少なかれ母体にも負担をかけるから、帝王切開するメリットとその負担のバランスで、ある程度のルールが設けられているのです。

 一番分かりやすいのは、前置胎盤で、下から産もうとすれば大出血になり母児ともに危ないので、帝王切開しなければならないというルールです。




 羊水過多は、とくにそのルール(コンセンサス)がありません。





 わたくしが、今回の講演で、うちの施設では羊水過多は基本帝王切開にすることが多いです、と述べたため質問をうけました。以前、他の学会で、お叱りをうけたこともあります。
 



 他の施設の先生方には、相当違和感を感じる方もいるのだと認識しました。




 羊水過多は、何らかの理由で羊水が多くなってしまい、羊水腔がパンパンに張っている状態。



 卵膜も水風船のごとくパンパンです。




 ちょっとの刺激で、いつ破ける(破水する)かわかりません。



 破水すると、羊水が一気に外にでますから、たまたまその時赤ちゃんが浮いていれば、その隙間からへその緒が飛び出して、臍帯脱出になるかもしれません。しかし、多くは何事もなくうまれることも知られています。



 それなら、帝王切開すればいいだろう、と思うか。

 そりゃ、やりすぎだろうと思うか。



なんです。




 今回は、そんな質問でした。



 でも、どっちがいいか。そんなのは、わしら産科医でも、神様ではないので分からないのです。




 「その都度、みんなで相談して決めるのがよいのではないでしょうか。」が私の答えです。



 医師、スタッフとともに、妊婦さんとそのご家族と一緒に、その病態、メリット、デメリットを理解し、簡単に決められない難しさを感じ、納得いく方法を選ぶべきだと。


 たまたま、私の施設は、へその緒の強さも、そのトラブルの怖さもよく研究しているところですので、どうしても、最終的に帝王切開を選んでしまう方向にもっていってしまいがちなのかもしれません。そうでない施設を否定できる理由もないのです。



 このブログの右につけた(PC版のみ?)アンケート調査でも、臍帯異常を分娩前にしりたいか?という質問に、200人の回答の98%は、知りたいもしくは、危険なときだけ知りたいが選択されています。



 妊婦さんに責任や選択を押し付けるのではありません。正しい情報提供と十分な相談の上での決定が大切なことだと思っています。ここが、へその緒の問題の最も難しいところなのかもしれません。






 またちなみに、うちでは、2%の知りたくない人のためにも、事前にアンケートをとっていて、情報提供を個別対応しています。知りたくない人には、こっそり、こちらでベターと思われる選択をしています。



 私も、改めて考えさせられた会でした。




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