前置血管は、ワルトン膠質と呼ばれるへその緒を走る臍帯動脈と静脈を守る弾力のある組織がへその緒の一部でない状態(卵膜付着)で、それが、子宮口近くを走る状態です。
ひとたび、下からお産する事態になれば、それらの守られない血管が押しつぶされてしまったり、破水したときに断裂してしまうこともあるので、分娩前(破水前)に超音波診断し、破水前にいい頃合いで帝王切開をすることで赤ちゃんを助けてあげます。
しかし、まあ、破水を予測することは難しいので、お母さんになる妊婦さんにしても赤ちゃんにしても、爆弾をかかえているような状態なので、週数もかせぎたいし、早く産んで安心という思いのジレンマに参ってしまうものです。
超音波の発達やらで、だいぶ、妊娠中に、診断可能になってはきています。
それはよいことですが、診断されてしまうと、こんな重荷を背負わなければなりません。
破水をしないようにする。。。
入院していれば、本当に破水をしないかといったら、それは分かりません。。。
入院するメリットがあるといえば、
「万が一破水したときに、すぐに帝王切開をして助けることができる」
(因みに、入院中の帝王切開でも間に合わないこともあるともいわれています)
かもしれません。
でも、そう破水するものでもないですから、みんな入院するのはどうか?
でも、前置血管みたいなトラブルが起きれば赤ちゃんの命に関わるので、十分な保険になるのでは?
そんな疑問が渦を巻き、世界でも結論はないのです。
そんな世界の混沌に、我々のところから、ちょっとしたエビデンスを投じました。
うちで経験した21例の前置血管の方の経過です。
うちは、前置血管だからといって全員、管理入院させていませんでした。
なにか外来で異常があった場合、心拍数異常、おなかの張りが頻回、子宮口が開きかかっている、赤ちゃんの育ちがわるい。。。 場合だけ入院です。
そうやってきたところ、15人(7割)は入院が必要となり、6人は必要なく36週となり帝王切開をしました。
入院したひと15人のうち4人(27%)のひとは、緊急帝王切開を要しました。理由は破水したり、胎児心拍数異常がみつかったからです。
また、ほかの3人(20%)は、帝王切開をすこし前倒しでやりました。その理由はお腹が張り過ぎたり、育ちがわるくなったりでした。
それ以外の方は36週に予定で帝王切開しました。
入院した人たちも外来でみれたひとたちも、おおくは35-36週で2kg以上の元気な赤ちゃんを出産されました。
これらのことから、外来管理でもなにか怪しい徴候がなければ、必ずしも入院しなくてもよい。
(もちろん、入院して一大事に備えるという大きな保険というメリットは忘れずに!!)
むしろ、入院しなければいけないと判断された妊婦さんのほうが、リスクが多少増えるので帝王切開が前倒しになる可能性がある。
ということが分かりました。
まあ、数の少ない検討結果ですので、全てをこれで語ることはできないと思ってください。
よーく、主治医の先生と妊婦さんとのディスカッションをした上で、方針を決めるのがよいかと思います。
この論文が、どこかで、少しでも、管理の参考や妊婦さんの安心に繋がることを切に願います。
Journal of Perinatal Medicine in press