ゆめゆめ物語~☾のブログ~

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ライトノベルや漫画、アニメ感想を不定期に
ハイテンションに更新するブログ。

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どうもです。この話に本来なら挿絵を入れる予定があったんですが、やや滞っており、そのうち追加しますのでご了承を…!
それでは毎度毎度ロークオリティですがよろしくお願いします。

「結構降りてきたわね」

下層に降りる階段を降り切った時、不意に千歳がそう言った。無論先ほどの群狼を退けた後の話である。

「そうですね。前回と同じパターンならここ。または最上階。もしくは隠し空間にでもありそうですがどこにあるともまだわかりませんね。今の所闇雲に下だけ進んでいるだけですからあんまり関係ないですが。」

悠斗は何かを書きながら片手間にそう応じた。線と区画された図形の様なものを書いている。それは地図だった。間取り図のようにある程度分かるよう、通路の長さなどを悠斗のさじ加減で書かれている。その地図はかなりの階層を記しており、現時点での最下層は地下四階に及んでいるほど深かった。

「柊真。どう? この城に何か期待できそうな文字とか刻んでなかった?」

「チトちゃん…何かざっくりした物言いだね~。ん~でもまぁもう下に降りることはないと思うよ?」

どういう意味?…と千歳は柊真に問い返した。その問答に悠斗も地図を見ながら聞き耳を立てている。

「ん~地下でもここはもうだいぶ深いからこのままだと海出ちゃうし、このあたりが最下層だと思うよ?」

あぁ。…と得心した様子の千歳。いくら城を地下にまで広げられると言っても限度はある。むしろここまで地下深くに空間を作れること自体が異常なのだと解釈した。

 そうしている内に悠斗たちはまた十字路をの前に立ち、悠斗の描いた地図を眺めていた。この場所は数度来た場所であり、もうここを訪れるのは三度目。つまり、もう残された道は一つである。

悠斗は先ほどまで歩いていた道に△印をつける。これは一度通った道だが、隠し扉などの可能性を考慮して書き分けるためである。それも確認した上で再度地図を見て、方向を確認し残された道を進んだ。

 

 ☾ ☽

 

 それからまた数分経ち、悠斗たちは再び分かれ道に対面する。…ただし今度は行き止まり。一方は列車の加減速を行うようなハンドルレバーが壁に埋め込まれており、もう一方の通路には大鏡があった。双方ともにそれらがあるだけで、行き止まり。この地下深くに来てまでそんなものを置く必要性がない事から、この二つは隠しギミックの根幹を担うものだと確信した。無論これらの判断はゲームが元である。

「とりあえずレバー倒してみる?」

千歳は藪から棒にそんな事を言った。既にレバーに手をかけ今にも倒しかねない腕の位置である。そんな後先を考えない直情的な発想である発言に悠斗はいつものように反論する。

「バカですか貴女は!ゲームじゃないんですからもっと慎重に行動してください。…それと、このレバーは十中八九トラップかフェイクでしょう。正しい手順を踏んだり、これの他に本当のレバーやらがあるとみて間違いないですね」

「……情報元は?」

千歳は得意顔で語る悠斗にジト目で睨みつける。対する悠斗も気取ったようにやれやれとこう返した。

「……某ダンジョンゲーム?」

「アンタのも信用性ないわよっ!!」

千歳は先ほどまでの自分の思考を棚に上げそう叫んだ。悠斗にも「その発言をよーく覚えて反対側に鏡ありますから見てきます?」と言われてしまう始末だが。

(それでもないよりはマシだと思うけどね~…)そんな千歳の発発言を受けてふと柊真はそう思った。だから下手に手を出すのは得策ではない。…という悠斗の意見は当然と思った柊真、は二人にこう告げる。

「は~い。二人ともそこまでにしてちゃんと考えようよ~。何にせよここにレバーとか鏡さんがある時点で不自然なんだからここに何かあるのは違いないよ~」

「何か…ね。でも、謎解こうにもこうもヒントが少ないんじゃ探しようがないでしょ。どうする?」

「とりあえず実験してみましょう。チトちゃん。適当に2、3体ほど土傀儡作ってくれます? 慎重に行くにはできる限り我々の危険を減らしておきませんと…ね」

悠斗は『土製の傀儡を使って検証実験をしたい。』…そういう事を言いたいのだと千歳は即座に察した。見た目に合わず荒っぽい発想である。と、そう感じた。

「…うん。いいわよ。土石系魔法は結構得意だし、ウェルヴフもあるから詠唱なしでも十分作れるからさっそく試してみよっか。…最初は何をさせる?」

千歳は指で空中に円を描きながら二人にそう問う。悠斗と柊真は一瞬悩んでから各々に答える。

「とりあえず一体にはレバーを倒させましょうか」

「んー。鏡をよく調べさせるとか」

「あんた等よく偉そうに物言えたわね…! 結局無策じゃん!」

「冗談冗談。ですがレバーを土傀儡に倒させるというのは本当ですよ」

わなわなと怒り心頭の千歳をなだめるように悠斗は、はははははとキザに笑う。そして悠斗が笑っている間に土傀儡が2体。城壁を原料として小学生低学年ほどの大きさの土傀儡が出来上がった。一つ一つがファンシーなモグラのようなデザインをしている。各々の個体にはヘルメット帽子、グラサンをそれぞれ装着している。

不意を突かれたように驚く千歳。
「ですがチトちゃんも気になりません?もともとレバーを倒したかったのは貴女ですし」
確かにその通りなのだが、千歳は、いつの間にか先ほどと立場が入れ替わっていることに少し戸惑ったのである。だからその問いに千歳は曖昧な返答をした。

「ぼくが思うに悠斗はレバーを倒すことで何が起こるかを確かめたいわけだね~。それがヒントになるかもしれないし~はたまた関係ないかもしれない…とか?」

戸惑う千歳をフォローするように柊真がそんな事を言った。

「大体はそんなところです。…というかチトちゃんいつもは俺や柊真より頭いいはずなんですがどうしました?」

「う…うるさいわね。ちょっと混乱してるのよ…。前回みたいにトラップも何にもなしにいきなりボス戦やると思ってたから想定外。まさか謎解きに腐心するとはね」

千歳は髪の毛をポリポリと掻く。(今日調子が良くないのはそう言う事なのだな~)と柊真は思う。探索に思ったよりも手間や時間がかかっていることに少なからずストレスを感じているのだ。

土傀儡の内の一体、ヘルメットをしている個体をレバーに近づけさせ、悠斗たちはある程度距離を取った。およそ15mほどレバーから通路の分岐点の手前まで戻り、土傀儡を遠隔操作し様子をうかがう。土傀儡は歩く度ぴょこぴょこと足音を立て、足で歩いているというより全身ではねていた。

「チトちゃん。何であんな愛らしい系の見た目にしたんですか!? 何かあった時忍びないでしょうが!」

「しょうがないじゃない! 土石系が得意って言っても一回土傀儡としての容姿をアレに決めちゃったら変更は難しいんだから!」

「さらば~。ヘルメ君。お地蔵さんと遊びましょ。お地蔵さんと遊びましょ~…」

「不吉なこと言わないでくださいよ! それより懐かしいですねその謎の遊び! 昔何かの遊びでやりましたよね!? すっごいシュールでしたよね!?」

その昔。柊真発祥の一発遊びにこのお地蔵さんと遊びましょ…というひたすらにその言葉をお経のように唱え続け、特定の人物の周囲を集団で囲むという謎の遊びがあった。いわゆる「かごめかごめ」のような遊びなのだが、最大の違いはこれは遊びではあってもゲームではないという事である。…つまりルールも目的もなくひたすらに回って唱えるだけの遊びなのだが、これのこのシュールさが何故か小学生の頃の悠斗たちにほんの一瞬大ブームを起こし、今なお記憶の片隅に残すまでに印象付けられている。ちなみに千歳が先の僧正マガフツの事を、最後まで「お地蔵さん」と呼んでいたのはこのためである。その遊びは「死にネタ」として扱われており、ご愁傷様などとほぼ同意である。

 やがてヘルメット土傀儡は問題のレバーに触れる。その瞬間悠斗たちは騒ぐのを止め、息をのんでヘルメットを凝視する。すると…ヘルメットは愛らしいしぐさでレバーを倒し、倒した瞬間にどこからともなく現れた鎖で繋がれた手錠に前後足を拘束された。

「「「――――――――――はい?」」」

「………!? !!!?」

ヘルメットは前足の手錠を目認すると、即座に後ろ脚をパタパタと動かし同じく拘束されていることに驚愕する。それらの動作の度に全身を震わせパニックになる。パニックのまま暴れて抜け出そうと試みるが、当然手錠。拘束器具である。抵抗虚しくびくともしない。

そこに畳み掛けるようにレバーの周辺で地響きが発生した。発生源は間違いなくレバーである。その肝心のレバーは地響きとともに壁の中へと吸い込まれていくように壁の方へと動いていく。その様子を見てヘルメットはますますパニックを起こす。

「…ねぇ。チトちゃん…何だかぼく――」

「みなまで言わないで。…大丈夫。いや大丈夫じゃないけど安心して。…あたしも嫌な予感がするから」

レバーが壁の中に埋まるように移動して行き、ちょうど埋まりきった時だった。突然凄まじい勢いで天井が大きく動いた。具体的にはねじが外れるように――である。

「ちょっ…! あれってまずくない!? 助けないと…!」

千歳を始めとした三人が慌ててヘルメットのもとへと動こうとした時、再び天井は大きく動き始めた。なんと天井が落下し(・・・)、ヘルメットを含めた城の床ごと押し沈められた(・・・・・・・・・・)のだ。そして天井が床と入れ替わるように天井は床となり、天井は少し遠くなった代わりに上階の天井が見えるようになった。ヘルメットが天井に潰される寸前、心なしか悲しげに見えたのは気のせいではないことは確かだった。おまけに土傀儡であるヘルメットは、本来のモグラと違いかなり大型である。故に辛うじて動かせる前足の爪を駆使し穴を掘ろうと考えるも、この巨体ではそれほど大きな穴を作り出せるはずもなく、あえなく虚しい抵抗として終わってしまったのである。

「「「…………………」」」

悠斗は唖然とし、柊真はただただ苦笑いを重ね、千歳はショックで口を開けたり閉めたりして激しく動揺している。案の定罠だったとはいえ、悠斗はまさか千歳の作る土傀儡の見た目がファンシー且つ生物的なものだとは全く予想していなかった。無論土が原料なので生命が宿っている訳ではないが、千歳が構成した魔法のプログラムがたまたまそういう仕様だったという事である。だが、三人の中には紛れもない罪悪感がズキズキと心を突き刺していた。

――と、そんな時だった。いつの間にやら壁の中に埋まっていたレバーが、再び元の位置に戻っており、そこには先ほどまでの状況とは違うものがあった。壁の中からガチャポンのように何かが落ちてきたからである。それに気づいた悠斗は急いでそれを拾う。どうやらネームプレートほどの大きさのプレートである。プラスチックのような素材で何か文字の様な記号が書いてあるが、それは悠斗には読めない。

「久々にショッキングなものを…。ん~? それってオケアニウヌス語だね。…どれどれ?『裏の裏の裏は裏』だってさ~。……めんどくさっ!」

柊真のノリツッコミ。レアではなく比較的に多かったりする。そんな二人をよそに、千歳は残された土傀儡とともにお経を唱えていた。

「助けられなくてごめん…! 君の犠牲は無駄にはしないからね…。な~む~」

 

 ☾ ☽

 

 それから三人は、今度は反対側の鏡のある行き止まりへと来ていた。鏡はマジックミラーかとふんだが普通に映したままを反射している。一部が歪んだりするような偏光ガラスではない様である。

「さて…ここからは俺の推測ですが。ちょっと先ほどの土傀儡の聖戦(実験)で得たこれが関係しているのではないかと」

悠斗は先ほど拾ったオケアニウヌス語で書かれたプレートと鏡を眺める。そして悠斗はプレートを持って鏡を探り始めた。それも紐で吊るされている鏡の裏側を(・・・・・)である。

「……え? 何してんの悠斗~?」

「先ほどのプレートに書いてあったでしょう?『裏の裏の裏は裏』と。結局は裏なんですから鏡の裏側を探っているのですよ。予想通りこの大鏡はカモフラージュで裏にはこんなものがありましたよ?」

悠斗は得意げに大鏡を動かし、鏡の裏を柊真と千歳に見せつける。

「……くぼみ? あぁ、そのくぼみにそのプレートをはめ込むのね。…その周りにも何か模様があるけど」

「その通り。…さて、柊真。この鏡を通してもう一度読んでもらえます?」

 

悠斗はプレートを壁にはめ込み、掛吊るされた大鏡を外して柊真のもとに行く。そして鏡を再度プレートに向けた瞬間最初に柊真が。数秒遅れて千歳はその意図を察した。

「あぁ、そっか! プレートの文字が見えるように壁にはめ込ませて、それを鏡を通して見ると文字が変わるんだ!」

千歳は嬉々としてそう言った。先ほどまでやや重い気持ちに(さいな)まれていたがこれを見て少し気が晴れたようだった。それはもちろん柊真も、悠斗も同じことだった。

「う~んとね。『上右22番目の8番目の床を制せよ』…だって」

「ほうほう。つまり『この部屋の床の上から22番目、右から8番目の石を手で押せ。』という事でしょう。ひどく面倒なギミックでしたが、ようやくたどり着けたみたいですね!」

悠斗も柄になくはしゃいでいる様子だった。これまでの数日間のフラストレーションがたまり溜まっていた…という事である。

 

指定された床を押すと、床が開き地下へと続く階段が現れる。

階段の下は少し薄暗かったが、千歳の作った魔法の明かりで階段の最下層にある門に記された文字を読むことができた。

――『隠者の光』。…それがこの部屋の名前だった。

「いよいよですね。前回のようにただやられるわけではありませんよ」

「そうだね~。今回は作戦もあるし、大丈夫かな~」

「んじゃ! 準備も整ったところで…いきましょっか!」

三人は戦闘態勢を整え、ドアを開いた。

どうもご無沙汰です。世界樹の迷宮Ⅳ買おうと金貯め中の☾です。
どうやら話を短くまとめるのが苦手なようで…では、今回もいくつかに分けて区切りのよさそうなところまで更新したいと思いま~す。

Chapter2 アルカナと謎の島

 島に漂着ではなく、意識的に上陸した悠斗たちは、できるだけ前回の漂着地点に近い場所に拠点を作ろうと考えた。ただでさえ未だ未知の土地。できる限りの安全性を考慮したが故だった。悠斗たちは装備もやや変更し、できる限りの戦闘準備を町で済ませてきていた。悠斗は前回と変わらず全身黒づくめのコートに違いはないが、今回は内側に胸当てを装着したり、同じような黒コートに見えても布自体が厚く頑丈になっているなど細部に違いがあった。中でも最大の変化は、悠斗の武器がサバイバルナイフから細めの片手直剣になったことである。柊真は金属製のガントレットを装着していること以外は防具にそう変化はなかったがシルエットを見れば明らかに変化している。武器が悠斗と同じだったそれが、身の丈ほどの大剣に姿を変えているからである。対して千歳はサバイバルに来ている意識がないのかと問いたくなるようなほとんど普段着である。トレードマークの帽子やポンチョを除けば前回島に来た時と服装を変えただけの装備。強いてあげるならば白木の箒。神器:ウェルヴフが最大の違いだろうか。機動性を重視した防具とみるならば、まだ優秀な方かもしれないが防御面は期待できそうにない装備である。

 

そしてそんな三人が今、どの城で何をしているかと言えば…絶賛逃走中である。

「いやぁぁぁぁぁぁ!! これトラップよね!? コレトラップよねぇっ!?」

地図上にて№9と書かれた城の内部では、ひたすらな悲鳴が上がっていた。――そう、今現在悠斗、柊真、千歳の盗賊団は大アルカナ№9隠者の城を攻略している。千歳を始めとしたこの盗賊団一派が最初に入った魔術師の城を、あまりにも簡単に通過できてしまったことから無意識の内に脳裏から除外していたある意味当然の可能性…。それはトラップである。

罠の可能性ぐらいは考えていても不思議ではないのだが、そこで作用したのが、千歳が今まさに手にしている神器ウェルヴフを入手したことによる少しの慢心だった。有体に言うならば調子に乗っていた…である。

「わー! チトちゃんまずいよこの先行き止まりだよ~! このゴロゴロ鉄球何とかしないと~!」

ありがちなトラップではあるが狭い通路を巨大な鉄球が転がるという…そんなトラップに今対面している。

「よしっ! 間に合った! 土石系下級上位魔法…ファル・ドゥルール!」

千歳が箒の柄を床にたたきつける。すると同時に、床が陥没し千歳たちはそこに落ちる。幅が鉄球の半分ほどしかない小さな穴だったため鉄球はそのまま通過し、数秒後轟音を立てて音は静まった。

「か、間一髪でしたね。…それにチトちゃんが土石系ルール属まで使えるとは…やや驚きでした」

「ゼェ…ゼェ…。あぁそれはね出港前に魔道書読んで簡単なものだけど習得してきたのよ。…思ったとおりに変形できるとは思ってなかったけどね」

「チトちゃんすごいね~。土石系って結構難しいよね~?」

「ホント…箒様々ね。流石にあたしもこれがなかったら神器集めとか考えなかったわよ」

悠斗も、千歳も、柊真も額に汗を握ってはいたが、まだ満身創痍というほど疲弊はしていないようだった。

避難場所から出た直後、千歳は確認の意味もかねて二人にこう問う。

「ねぇ。トラップ解除の知識とかあるのよね? 特に担当の柊真」

うっ!…と柊真にしては珍しい痛いところを突かれたという顔だった。いつもニコニコなスタンスがやや崩れて困り顔である。

「ほ、ほら! 結局罠があることに気づいたのって三日前だしぼくもまだ慣れてないんだよ~。そ、それに道中にあるトラップ全部発見なんてプロでも難しい…よ~?」

どこか言い訳がましい言い回しではあるが、一理なくはないので千歳もあまり深く言及はしない様にした。

「…そうね。まぁ生存率上げるためだし、出来ればでいいからトラップ発見よろしく。あと、悠斗アンタここ来てからほとんど喋ってないけどどうしたの?」

千歳は悠斗にそう問いかけた。

「……いえ。この城を次に攻略すると決めた時からずっとモヤモヤしてることがあるんですよ。」

モヤモヤ?…と千歳は復唱する。そしてそれと同時に千歳は考察した。

(モヤモヤすること…? ひょっとしてこの城は攻略しづらいかも…とか? いや、でもそんなこと悠斗が一目でわかるわけないし、じゃあ他に何か…?)

…と色々考えてみるが千歳は遂に考えるのを止め、悠斗に問う。すると悠斗はこう答えた。

 

「どうして順番通りにいかないのかと思いましてね」

「別にどうだっていいでしょそんなことはぁっ!」

悠斗のそんな回答に千歳は憤慨した。いちいち感情表現の豊かな女子大生である。

「どうでもいい…ことはないでしょう! なぜナンバリングがはっきりしてるものを順番通りにやらないのですかあなたは!」

悠斗も同じくやや怒り気味で反論する。一方、その口論にあぶれた柊真は待っている間退屈なので周囲への警戒と罠の探知をしていた。ところ構わず彼らはいつも通りだった。

「いーじゃん別に! じゃあもし最初に入った城が中途半端な11とかだったらどうする気だったのよ?」

「無論。1から順に回って11飛ばしの12を攻略し以下略でしょう!」

「めんどくさっ! …ひどくめんどくさっ! あれでしょアンタシリーズモノのゲームは最初からやらないと気が済まないタイプでしょ!」

「いえ! 普通にシリーズモノはそのまま以下続行でそれ以前はやりません」

「首尾一貫しなさいよアンタはぁっ!」

そう叫んでブチ切れる千歳。見かけに似合わずヒステリックな性格のようで、悪く言えば情緒不安定である。未だにらみ合い第二ラウンドが始まろうとしたその時。柊真が悠斗と千歳の肩をポンポンと二回叩く。そのことにより二人は静止した。

「二人とも~それぐらいにして早く行こうよ~。めぼしいトラップはもう解除したから少しは進みやすくなるよ~」

その言葉で二人も我に返ったらしく、ほんの数秒黙り込んだ。それから悠斗が先んじてこう言った。

「では、柊真に免じてせめて12、13番は順番通りに攻略しましょう」

「何なのその数字のこだわり…。まぁ、じゃあ柊真に免じて12、13はそれで」

悠斗の言い分を、呆れ顔で聞いていた千歳も少しして渋々なし崩し的に意見を通し、妥協した。千歳の本音としては近い順で構わなかったのだが意地の張り合いで認めなかっただけであり、別にどちらでも構わなかったからである。悠斗の言い分はそのままではあるが。

 

☾ ☽

 

 それから数十分後。相も変わらずトラップ尽くしではあったが、柊真が出来る限り多くの罠を早期発見してくれた。そのためゆっくりではあるが、確実に進んでいた。――だが、この城での攻略の障害はトラップだけではなかった。

「…! 柊真、その右側から何か来る。悠斗も注意して!」

城の地下中層。前回と同じ構造ならそろそろ城にたどり着くであろう地点。今悠斗たちのいる20畳ほどの大広間から分かれている通路の一つを指差し、千歳はそう言った。特殊系ヒュース属の魔法の一種。アピルダムで半径20m範囲を索敵しているのである。索敵とはいっても熱探知ではあるが。

「またですか…! 出来れば戦いやすい人型だといいんですが」

悠斗は腰に差してある片手直剣を抜き、懐から何かの紙を取り出す。それは、魔法陣が書かれたものだった。悠斗は取り出した魔法陣の紙を直剣に当て詠唱を唱え始める。

「悠斗~ちょっと気が早いよ~? そりゃ何度も出てこられて面倒なのはわかるけどー」

すでに攻撃姿勢に入っている悠斗に柊真はそうなだめた。だがその柊真本人も肩に背負った大剣の柄に手をのばしていることから柊真もほぼ臨戦状態である。千歳もまた(しか)りである。

「いや~今更ながらモンスターまで出るとは…。ほとんどダンジョンRPGよねこの島。フツーに考えれば人のいない場所に住み着いた…ってだけなんだろうけどね」

千歳がそんなことを言った瞬間。そいつは姿を現した。

排気ガスを浴びたような真っ黒な毛並みに、鋭くとがった耳。前足、後ろ脚ともに発達した体。目を見続ければ飲まれそうになるほどの威圧感を持った目。それは紛れもなく狼そのものだった。先の番人マガフツのように狂気じみた姿かたちをしている訳ではなく、大きさも大きめではあるが一応常識の範疇である。

ただ一つこの狼やマガフツに共通した点。…それは、生気のなさだった。

「どうも変よねこいつら。息もしてるし、ちゃんと殺せるから生きてはいるんだろうけど…何?この気味の悪さは」

 

悠斗たちが最初に戦ったモンスターは、やや大型の蛇だった。

その蛇にあったのは蛇の食事中の時であり、蛇は食事を邪魔されたものと思い攻撃した。悠斗はその存在に気づいてはいたが、食事中なら藪をつつく真似はすまいと素通りしようとしたが攻撃してくるのだからやむを得ない。と二、三度回避行動を取りつつ反撃し、蛇を撃退した。その際片手直剣が嫌に血しぶきを上げて辺りに飛び散り、おまけに食事中だったため、食していた獲物が嫌に胃液に浸かったままはらわたから出てきた折、場が凍りついたのはまた別の話である。つまりはそれらの蛇がちゃんと死に、そして食事をしていたという事である。このことからここの生物の多くは、ゾンビのように動いてはいるが死んでいる訳ではなく、ちゃんと生きているという事になる。だからこその気味の悪さだが生態系がある以上ここは大自然である。そのことに三人は心の底から安堵していた。

――生きているなら、倒せる。

「二人とも。ここは俺が先行して一撃与えます。その後回避しますから柊真は追撃を。チトちゃんは周囲を警戒していてください」

柊真は大剣を抜き、千歳はウェルヴフを持ち直した。つまりは肯定のジェスチャーである。

悠斗はそれを確認すると剣に当てていた魔法陣の紙の中心を強く押す。すると剣が赤く光り発火する。炎熱系イル属の下級中位魔法ラス・イルである。めらめらと燃え上がった炎剣を見た狼は刹那。躊躇したものの悠斗視点から見て時計回りに旋回して接近する。そんな行動に悠斗は身をかがめ剣を地面すれすれの位置に構える。カウンターを狙っているのかと柊真には見えたがそれは次の瞬間に判明した。

「キャインっ!?」

唐突にそんな声が上がった。声もした方向も狼のものだとすぐに分かった。なぜか? 理由は簡単である。悠斗は屈んだ時にゴルフボールほどの小さな石を拾い上げ、剣を構えた直後投擲した(・・・・)。そう、炎の剣も狼の視線を誘うための囮である。投げた石は狼の左足の付け根に命中し、怯ませることに成功した。

「柊真! 今です!」

「ん~! ちゃんとわかってるよ!」

柊真はその隙を狙い急接近。飛び込むような形で体験を横薙ぎに振るう。大剣は見事に命中し狼の体を宙に弾き飛ばした。体は分断されてはいないが、傷の深さから見ても致命傷に違いはない。振り切った大剣は空を切り剣劇の勢いをやがて鎮める。

「さて、柊真。安心はしていられませんよ。…何せ狼ですから確実に群れでしょうしね」

悠斗の剣の炎が解かれ、もともとの剣の銀色が姿を現す。

「…! 悠斗、柊真。五匹くらいこっちに近づいてくる。気を付けて!」

千歳はそう叫ぶと、箒を掴み足元に魔法陣を展開する。先日試し打ちした時より幾分魔法陣は複雑な模様である。展開する際に詠唱も行っていたためこの魔法陣も魔法によって形成されている。

「さぁて…とっとと倒して先に行くわよ!」

先ほどと同じ種類の狼が群れを成して大広間に飛び出してきた。

 

正直ここまで長くなるとは思ってなかったです。ですが一連の流れとして連続投稿しています。
それでは第八話どうぞ。

「残る謎で今すぐ解決できそうなのは、やはりこれでしょうね」

悠斗はもはや残骸であるマガフツの中から真っ白な体色をした箒を取り出した。あの巨体なマガフツの使用していたものの割には意外に小さいが、悠斗や千歳が持つにはやや大きい印象である。義務教育時代に使用していた箒とは似ても似つかぬほどの存在感。何より、この箒のひたすらな白さだけが異様さを強調していた。木製にもかかわらず鉄にも劣らないと思わせる芯の強さすら感じさせる。

「……っ!? …これは!? …そ、想像以上ですね」

白木の箒を手にした瞬間、悠斗は驚嘆した。だが、悠斗ほどではないが驚いたのは千歳も同じことだった。「何て魔力…! こんなのたかが箒が持てる貯蔵量をはるかに超えてる…」

二人の驚きよ様に唯一納得いっていないのは、魔法や術式に何の知識も能力も持たない柊真である。柊真のように魔法に関わりを持たない者はいまいち感受性がないのである。

「悠斗! ちょっとそれ使わせて!」

そう言って千歳はやや強引に悠斗から白木の箒を受け取る。

「……! うわっ。あたしに扱いきれるかなコレ。…ま、とりあえず」

千歳は白木の箒を構える。すると足元に箒の全長を半径とした魔法陣が形成される。陣は、瓦礫を投擲した時よりもはるかに複雑で、本来ならこれほど複雑な魔法陣を利用するならばチョークか何か筆記物で前もって陣を描くのが定説である。だが、今回は違った。簡単な魔法陣ならまだしも、千歳が頭に思い描いただけで形成できてしまったのだから。――そして千歳が小さく魔法名を詠唱すると同時に部屋の中心が冷気に包まれる。目視できるほどの冷気の流れが渦巻き状に部屋の中心に収束していくのが分かった。

(この感じですと…氷結系魔法ヒュリ属。それもこの規模なら中級上位のファル・ヒュリウス…!?元々のチトちゃんですとせいぜい中級下位のヒュリウスが限度でしたからこれだけでも十二分にこの箒のすさまじさが窺えますね…)

基本属性魔法にはいくつか種類があり、炎熱系魔法イル属。水流系魔法ヌギ属。氷結系魔法ヒュリ属。電撃系魔法ソーズ属。風司系魔法ギル属。土石系魔法ルール属。など、ほかにも多彩な魔法が存在し、効力のランク分けとして、下級、中級、上級と分けられ、更にその中にも下位、中位、上位と分別される。なかでも上級からは使用難易度が劇的に上昇し、その中でもトップクラスである上級上位の魔法は魔法使いとして一生をささげた者でもようやく使えるほどのレベルである。

そうこうしている内にやがて氷点下に達した冷気は千歳によって形を成され、一気に凍結する。

すると石で造られた城の床を突き破るようにして氷の塔が現れた。形成の際に只の氷のままでは芸がないと思った千歳がそう形を整えたのだった。その氷の塔は優に高さ3mを超え、未だ冷気を放ち続けている。

「うわ~。チトちゃんすごいよ~! Cooooooooolびゅーてぃー!」

「ネイティブっぽく発音するのかひらがなっぽく発音するのかどっちかにしてもらえます?…ですがこれは見事ですね。」

もともと一般人である悠斗たちにとって中級上位魔法などそうそう見れるはずもなく二人は高揚していた。だが、それを発動させた張本人であるところの千歳が、この事実に納得できていなかった。

「嘘…でしょ。いくらなんでも…こんな…」

千歳は目の前の出来事に驚愕し、ほとんど放心状態になっていた。

「いやいや。いつも強気なチトちゃんらしくもないですね。ですがこれは間違いなくその箒とチトちゃんによる力ですよ? …しかし魔道具との相性がここまでいいとはチトちゃんもレアですね」

「確かにね~。どんなに魔力が高い魔法使いも相性が悪いと全然できないことはできないらしいし」

そんな千歳に二人は意気揚々と話しかけるが、千歳は苦笑いをするだけだった。

「……チトちゃん? おーい! 大丈夫? ほら、ファル・ヒュリウスだよ~?」

「………………違う」

千歳は柊真の言葉をはっきりと否定した。その言葉に悠斗と柊真は戸惑う。

「あたしもびっくりして今も気分が落ち着かないんだけど…これ――

 

――ラス・ヒュリ(・・・・・・)だよ」

「「―――――――――――え?」」

ラス・ヒュリは、氷結系魔法下級中位(・・・・)である。どうやってもラス・ヒュリ程度では30㎝程度の氷の塊をつくるのがせいぜいである。しかも本来ラス・ヒュリは地に固定されて発動するような魔法ではない。

逆に言えば、床に固定しなければまずいと千歳が途中で発動位置をとっさに変更したという事だった。

「まず最初にしょぼいの撃ってから連続で魔法発動しようとしてたんだけど…」

「何です? その無駄なサービス精神」

「い、いーじゃん別に! それより、この箒よ確か…ウェルヴフって言ったっけ? …これ相当やばい品でしょ…」

悠斗と柊真が渋々肯定する。千歳に遅れて二人も下級魔法が中級上位に匹敵するほどに効力が増すという事の異常さを理解し始めていた。…だが、千歳は――

「ってことはさ。アルカナにそって存在(ある)ってことは神器はまだこの島にあるってことじゃない!?」

満面の笑みでウェルヴフを見たあと悠斗と柊真を見ていた。恐らく本日最高の笑顔である。

「何で嬉々としてるんですかアンタは」

「うわぁ…チトちゃん良い顔しってる~!」

対する悠斗はげんなり顔で、柊真は棒読みで千歳をはやし立てるようにそう言った。

「よしっ! 決めた! あたしこの『神器』を全部集める!」

「またアンタはロクでもない事思いつきますね!? 聞いてました!? またこの僧正見たくバカみたいにでかい化物が、あほみたいに規格外な手段で、キチガイみたいに突っ込んでくる侵入者を抹殺しに来るんですよ!?」

「あんた今若干ドSモード入ってなかった?」

「悠斗とは思えないほどの口の悪さだったね~」

小学生レベルの罵声ではあるが。――この時の二人の心境はほぼ同一だった。

「そりゃ危険だろけどさ。ほら、だってこれもあるし。」

千歳は見せつけるようにウェルヴフを小刻みに掌で揺らした。千歳の言う通りこの箒を使えば逃げの一手だけでなく、僧正:マガフツの様な番人とも渡り合えるかもしれない。…だが、依然危険なことに変わりはないのだ。

「今回のようにすでに瀕死だった…なんてご都合主義は当然もう二度とないでしょう」

「そりゃそうでしょ。そりゃこれだけの代物だし、それぐらいは覚悟してるわよ」

必死に思いとどまるように説得する悠斗。だが、千歳も譲るつもりはないようだった。

「……それに。わかってると思うけど、アタシの性格的にさ」

「一度決めたことは頑として突き通す…ですよね。」

にらみ合うように悠斗と千歳は目を合わせる。悠斗としては幼馴染を一人危険な場所行かせるわけにはいかなかった。だからといって自分や柊真がついていくにしても同じようにリスクが伴う。だからそもそもいかないように説得したいのだが、どうやら望みは叶いそうになかった。

やがて、観念したように悠斗はこうい言った。

「……わかりました。ただし、その箒をもってしても到底達成不可能だとわかれば、流石にこの件からは手を引いてもらいますよ? それと無論俺も同行します。柊真はどうします?」

「ん~?もちろん行くよ~。ってよりぼくを仲間外れにしないでほしいなぁ…。だから聞いてくれてありがとー悠斗―!」

そう言って柊真は万歳をするように感情表現した。異国の地にいるとは思えないほどの緊張感のなさだ。

「そうなるとあたし達は盗賊団。って感じかな。ほら、実質奪う訳だし」

「普通に犯罪集団じゃないですか」

「大学生で盗賊団か~。(あったら)しぃ~!」

千歳が何か提案し、悠斗がおかしな点を指摘して対立し、柊真は一人おとぼけたように中立にいる。それが――彼らの人間関係だった。

「ですが! まずは準備ですよ二人とも。とりあえずチトちゃんはそのウェルヴフでいいとして、俺と柊真がサポートに回るのにサバイバルナイフでは話にならないでしょう?」

「え? 一回戻るの? そりゃあ…一理あるけどどうやってまたここに戻るの?」

千歳が悠斗にそう問い返した。

「そこは現代機器を最大に利用して、船が自動で航路を記録しているはずです。…ですがこんな島ですからね。念には念を置いてチトちゃん。記憶魔法でも一応航路を残しておいてください。」

「お~! さっすが悠斗~! リーダーはチトちゃんだけど指揮能力は高いね~。そこにしびれる憧れる~!」

そう言って、柊真は悠斗に抱き着くようにのしかかった。

身長差から悠斗の体は大きく傾き千歳をラリアットする形で千歳もろとも倒れ込む。――嫌な音がした。

「すみませんチトちゃ…「痛ったぁぁぁぁぁぁぁぁっ!? 首が! ぐきっ! って!!首がギャグチックにぐきっ! って!」

「……………………」

転倒したこと自体がどうでもよく思えるようなほど柊真の下の悠斗の下の千歳は首を抑えて暴れていた。ここで上から離れればそのままあちこちを転がりまわりそうだった。しかし絵面的にそれはまずいだろうと敢えて離れずにいた。二人の地味な優しさである。

「く、首が…っ!ダメ。あたしもうお嫁にいけない…!」

「なんでそうなるんです…。あと、謝りますからとりあえず落ち着いてください」

柊真が示し合わせたように悠斗と千歳の上から離れた。それに続くように悠斗も立ち上がる。ちょうど十字状に積み重なっていたので顔が見えなかったが、千歳はマジ泣きしていた。

「う…恨むわよあんたら…!」

「「ごめんなさい」」

いまいち緊張感のないまま三人は神器:ウェルヴフといくつかの宝物庫の中身を持ってその場を後にした。この島に漂着する原因となった嵐はすっかり収まり、航海の障害はほぼなくなったと言えた。…食料が尽きるのではというところで、船は辛くも自国に帰ることに成功した。 

そして――準備を十分にし、出港したのはその帰国からおよそ二週間後の話だった。

と今回は以上! 当初は二つほどで済ませるつもりがいつの間にやらこんな分量に…orz
こんな感じでこれからも更新できていくかわかりませんが、スランプに入る前にどんどん書いていく予定です。それではまた会える日まで。では!

どうも。おそらくはこれで本日はあと2つだと思います。それでは長々書いて申し訳ありませんが、どうぞ。

「……ビンゴですね。」

千歳と柊真が部屋に入ったときに、悠斗が開口一番に発した言葉である。

「柊真! これを解読できますか?」

そう言って悠斗は宝物庫の箱に入っていた何かを柊真に投げ渡した。柊真はそれを顔面で受け止め落下したそれをとっさに手にした。ひもで縛られた紙の束…つまりは本のようである。

「風化してない…ってことは、読めるかもね~。何で持ち出されてないかわかんないけどな~。ん~この城の歴史書みたいだねこの本。」

柊真はぱらぱらとページをめくりながらそう言った。柊真の言う通り、古い本ではあるが、文字擦れや紙自体がボロボロではないようだった。

「今後何かに使えるかもしれませんし、すべての解読に時間はかかるでしょう? ですから今はそれは置いておきまして、次はこれです。」

またも箱から何か取出した。今度は何かの紙のようである。紐で留めてあった紙をくるくると広げていく。どうやらそれは、地図のようだった。

「地図ってことは…この島のかな~。」

「その通り。この島の地図です。緊急時の損失で失われるであろう記録のためにバックアップとしてここに収納していたのでしょう。他にも名簿など紙類が多いですね」

「ふ~ん。変なの~この地図だといっぱいお城あるけどこの城ならお城のマークの上にⅠ。みたいに他の所にも色んな数字があるね~」

その言葉に悠斗も同意した。地図には全部で21の城の記号が用いられ、おそらく悠斗たちが現在いるであろう城の上にはⅠと記載され、周辺にはⅨ、ⅩⅥなどがある。島全体の大きさは分かりやすく例えれば日本よりもやや大きめ。と言ったところだろうか。

「……ちょっと待って! 今、この城はⅠ。って書いてあるって言った!?」

先ほどまでずっと落ち込んでいた千歳が突然血相を変えて悠斗たちの傍に早歩きで駆け寄ってくる。千歳は悠斗の持つ地図を凝視すると、ほんの数秒また黙り込み顔を上げた。

「やっぱり。この『魔術師の間』って聞いた時から怪しいとは思っていたけどこれで確信に変わった」

「「……?」」

頭上に疑問符を浮かべそうな悠斗と柊真に千歳はこう続けた。

「タロットよ。タロット。この島の城の上に書いてある数字はタロットの大アルカナを指し示してるのよ」

その言葉を聞いてやや得心したのは柊真で、悠斗は依然分からずじまいである。

「タロットっていう占いの一つで運勢を示すものでも特に重要視されるのが大アルカナ。それは全部で…確か二十二種類あって、その中の№1に当たるのが魔術師」

「ぼくもそう詳しい訳じゃないんだけど、アルカナはたまに聞くから大体わかるよ~。う~んそっかー。魔術師は錬金術師じゃなくてアルカナの方だったみたいだね~。ちょっとショック」あぁ。なるほど…と。ようやく納得のいった様子の悠斗。

「つまりこの島の城々はタロットの大アルカナに模したこの『魔術師の間』のような部屋を有している…という事でいいんでしょうか?」

「そういう事なんでしょうね。でも、なんでここが魔術師なのかとか、そのことに何の意味があるかとか、そもそもここはどことか他にも色々謎はあるけどね」

「う~ん。あのお坊さんの言葉になんかヒントがあったりするのかな~?」

柊真にそう言われ、悠斗たちは精一杯あの僧正マガフツの言葉を思い出す。

我、魔術師{マガフツ}。白木の箒…神器:{ウェルヴフ}を守護するモノなり

 

これは〝はじまり″だ。

確かなる望みを探し、旅人は力を得る。言いようのない力は、やがて旅人にとってその力をはじまりとするだろう。汝、その力を正しく行使できるか。我が今ここに問おう。

愚かなる旅人よ。願え。祈れ。想像せよ――それがすべて始まりでありそれが答えなり 

確か、そんな感じの内容だったはずですと悠斗は三人に確認を取った。発現した悠斗自身も言葉の一つ一つを頭の中で復唱していく。

 

「………………神器?」

最初に言葉を発したのは千歳だった。

「白木の箒…ってさっきのお地蔵さんが持ってたあの箒よね?」

千歳は小さく横目で宝物庫の外を伺うがここからでは発見はできないだろう。

「他にも気になることはいくつかありますね。チトちゃん。これらの言葉の意味はタロットに関係が?」

「うん。一応それらしい言葉ではあるわよ。№1の魔術師は新たな始まりを意味するカードだし、きっかけって言ったら伝わる?」

きっかけ。千歳はそう言った。――つまりこれが悠斗、柊真、千歳の内の誰かにとってまたは全員にとっての何らかの天気だという事なのだろうか?悠斗の脳裏にはそういったことがよぎっていた。そしてもう一つほぼ確定したことがあった。これはこの島の城がタロットの大アルカナを模しているとわかった時からほぼ確信していた一つの可能性。

「ってことはお城の数だけあのでっかいお坊さんみたいなのがいるんだよね~」

「……そうなるわね。厄介なことに。占いをかじっていた所為でとんでもないことに気づいちゃったもんよ。まったく」

やや千歳は疲れた様子でそう言った。ただの好奇心はとても深い謎を引き当ててしまったという現実に心労が過去にないほどに溜まっている様子だった。しょうがないですね…と悠斗は宝物に入っていたものすべてを抱え部屋を出る。千歳と柊真も釈然としない気持ちではあったが、このままここにいてもしかないと、悠斗に続いた。

では前回の続きです。
ちなみに今日の更新ではもうイラスト投稿はないかと。
ではではどうぞ

「これ…トラップの一種でいいわよね…?」      

「そのようですね。入った瞬間に攻撃してくるぐらいですから和解は望めなさそうですが…」

「ん~。かといって逃げるのはもっと無理そうだねー。ほらーそこに転がってる死体が物語ってるよー」

そう言って柊真はゆっくりと視線をあちこちに転がっている死体に向ける。無論骸骨だが鎧は辛うじて形が残っていた。しかし、死体は十数体あったがそのほとんどが鎧の状態が多種多様。金属が捩じ切れているものから半液状になって再度固まったようなもの、内側から爆破されたとしか思えないように消し飛んだ鎧などこのマガフツの攻撃手段はかなりバリエーションに富んでいるようだった。

「どう考えても殴って出来る様な跡じゃないからあの階段前は出て正解だったみたいね…」

千歳は戦慄した。先ほど拾った城壁の破片を片手に持ちつつも千歳はポンチョの裏に仕込んでいたダガーナイフを取出し、二人と同じく構えた。

「それじゃ…全員の無事を最優先としましょ。見たところあの向こうの扉はカギがかかってるようには見えないから隙を見てあそこに走り込んでやり過ごし、また隙を見て今度は逃げ出すって方針でいい?」

「いやいやいや。普通に出入り口の階段目がけて走った方が生存率は高いでしょう。…大体鍵がかってないってどうしてわかるんです?」

「うーん。でもあいつを何とかしない事には階段まで走って行こうにも全員では無理だろうし、第一どうにかしても近づかない事には話にならないわけでしょ」

「しかし…その肝心の扉が開いていればの前提で…」

「いや、だって普通にちょっと開いてるし」

は?――と悠斗は警戒を緩めないようにマガフツの守る扉を見る。すると、確かに千歳の言うように扉は少し開いていた。何ともずさんな番人である。

「じゃああたしがこの破片投げて注意をあたしに引かせるからその間に悠斗と柊真であのお地蔵さんの片足どっちでもいいから一点集中して転ばせてくれる? そんであとは扉目がけてダッシュ! OK!?」

「良い訳ないでしょうが。あんな5m、10mするデカ物どうやって転ばせるんです? しかもコレ(・・)で」

悠斗は手にしたサバイバルナイフをフリフリと揺らして強調する。確かに、生物ならまだしも相手は喋るとはいえ岩の塊である。とても刃渡り18㎝ほどののナイフで体勢を崩すほどのダメージを与えられるとは思えない。それこそ生物なら腱を切ることもできなくはないだろうが。

「あー。それもそうね。悠斗じゃ(・・・・)荷が重いか。それじゃ柊真! 頑張ってね!」

プチッ!―――仮にここがまマンガ世界であるなら確実にそんなオノマトペが使用されていることだろう。そして悠斗はわなわなと全身を小刻みに震わせて手に持ったサバイバルナイフをくるっと一回転させ持ち直した。…そして、どこか余裕のあった態度は消えうせ雰囲気はもはや別人に変わっていた。

ほう?

どこか声色まで変わっているような気までするほどに人格が豹変した。それを見た千歳は悠斗に見えないように小さくガッツポーズをとり、柊真は「あー。やっちゃったー」と言わんばかりにあきれ顔になっていた。つまりは彼らにとってはよくある光景なのだ。つまりこれは普段の飄々とした態度の悠斗とは真逆の別人格(・・・)。それもある一定の条件でしか現れることのない裏人格。…そしてその条件とは――。

「どうやら…この俺を()め腐っているようだな」

嘗められていると感じた瞬間である。その瞬間に悠斗は普段のサポート重視のスタンスから攻撃的なこの千歳風に言うなら『ドSモード』を体現し、性格から考え方まで魔王のように変貌する。

「そこまで言うならばいいだろう。おい柿色みかん。」

「柿色みかんて…。それで、何?」

どうやら千歳の事を指しているらしかった。来ているポンチョが襟元が緑色で、ベースがオレンジ色、それから千歳自身の髪色を合わせてそう呼んだらしかった。いまいち分からないセンスだった。

「注意を引くための石に小規模で構わないから爆発付与の魔法をかけておけ。どうせぶち殺すのだから原型をなくしやすくしておこう。」

「いや、別に殺す気はなくて、ただ向こうの扉の中逃げ込んじゃえば勝ちなんだって」

「分からん果実め。この石ころが壁を破壊して追ってこんとも限らんだろう」

「あ。…でもどっち道宝物庫の中身は欲しいしあそこの中には行くわよ?てか果実って」

もはや特徴を挙げる気も失せているらしかった。意外にせっかちな上気が短いらしい。

「その後俺と黄のっぽが全力でねじ伏せるから追撃するように奴の顔面に魔法を打ち続けろ」

「偉そうな口ぶりの割にすっごい根性論じゃない!? いつになく不安なんだけどぉ!?」

「チトちゃ~ん。悠斗~あんまりのんびりしてる暇もないようだけど…」

柊真の警告通りマガフツは空中に置いていた白い箒を手にし、何やら詠唱を唱え始めていた。詠唱が必要な魔法ともなればかなりの威力を誇るモノだろう。

「――という訳だ。ひとまずは俺の作戦に従ってもらおう」

「悠斗ってよりはもともとはチトちゃんの作戦だったと思うけどねー」

「しーっ! 柊真しーっ!」

「そーこーのー黄のっぽに柿色みかん。さっさと作戦を開始するぞ…!」

悠斗がそう言い終えると同時に悠斗と柊真は二方向に展開し、マガフツに接近する。動きとしては妙に手馴れているが無論一般人であり、戦闘などは経験したことはない。――だが、千歳のトラブルメイカーによってこのような異常事態はもう慣れっこだった。

そしてその張本人千歳も空中に指で六芒星を円で囲った半径5㎝ほどの小さな魔法陣を描き、その中心目がけて思いきり拾った瓦礫を力の限りに投擲する。瓦礫が円の中心を貫いた瞬間、描いた魔法陣が赤く光る。だが狙いは外れ、マガフツの頭ではなく、袈裟で隠れた脇腹に命中する。

「―――――――――あ」

着弾した瓦礫は先にかけていた爆破付加魔法の作用で小規模な爆発を起こす。大きなダメージは見られないがよろめかせるだけの衝撃ではあるみたいだ。某アクションで言う小ダル爆弾と同じような威力。といった感じだろうか。悠斗は千歳の狙いが外れたことに軽く舌打ちしたものの、当初の予定通り片足を一点攻撃し、転倒させる作戦を実行するため柊真に先んじて左足にサバイバルナイフを突き立てようと特攻する。

(左足の足場にはいくつか大きなひびが入っている。おまけにそのひびは全て瓦礫の上だ。これほどの巨体がバランスを崩さないわけがない…! さぁ無様に転倒するがいいバカが!)

しかし、もう攻撃範囲間近というところで悠斗はあることに気づいた。それは違和感としか言いようのない事だった。だが、禍々しいオーラの漂うこの5m10mを超える巨体を持つこの魔術師:マガフツがの動きが完全に停止…否、崩れ去っていく(・・・・・・・)ことには悠斗は驚きを禁じ得なかった。その瞬間、悠斗は高ぶっていた気持ちが途端に醒めていくのを感じた。

「な…!? たったあれだけの攻撃で!?」

爆発付与をかけたと言っても、所詮は詠唱抜きの小規模爆発。せいぜい爆竹程度の爆破しか起きないだろう。だが、現実には恐らくその一撃でこの僧正は撃破出来てしまったことになるのだろう。だが、その事実には悠斗や柊真はもちろん、投擲した千歳が何より驚愕していた。

やがて…爆破のあった右わき腹を中心に右腕、首の半分、右足と近い順に崩壊していく。まるで初めからそうであったかのように崩れ続けた。そして右足首が崩れ落ちた辺りから崩壊は止まり、大きくシルエットの変わった状態のまま、体勢を崩し正面に倒れかかった。倒れた時に起こった風圧が悠斗たちの頬を通る。無論バランスを崩し始めた段階で悠斗たちは各々マガフツからは離れていたのだが、何とも釈然としない結末だった。

「……………………」

 ――三人はただ茫然としていた。

余りの衝撃的な事の連続に悠斗たちはちょっとした放心状態となっていた。部屋に入った瞬間に突然の攻撃。そして、視界に入った巨大な僧正。それがほんの少しの反撃で倒せてしまったという滑稽さ。その一つ一つの断片が、この空虚な状況を作り出していた。

 

「………何なんです? この状況は…?」

悠斗は、困惑する気持ちの中ただただバラバラに砕けた岩の塊を見下ろしている。どうやらあの強気な人格は既に消えているようだった。

「いや~。おかしい。よね~? 壁を殴っても傷一つついてない位固いんだからあんな爆破位で崩れそうにないけどな~…」

柊真も納得できていないようだった。二人は顔を見合わせ苦笑いをするしかなかったのだが。そして、瓦礫を投擲した張本人である千歳は、右手の人差し指を唇に当てひたすら死したマガフツを見つめている。

「……あ! 悠斗! 柊真! あれ見て!」

千歳は走りだし、マガフツの傍に寄る。そしてこのマガフツの崩壊のきっかけとなった右わき腹に重なっている袈裟をめくった。

「………これは!」

悠斗は千歳と同じく走ってマガフツに寄り、柊真はあくまでマイペースに悠斗と千歳についていく。

「分かる? 恐らくでしか言えないけど、このお地蔵さんはもう瀕死寸前だったのよ。」

千歳がめくった袈裟の内側には四方50㎝ほどの大きな穴が開いていたのでる。右半身は爆破で崩れていたため虫食いのようになってはいるが。痕跡だけでもその荘厳さは一目で見て取れた。それも、その穴はドリルで削り飛ばしたような乱暴な傷痕。だが何故服の裏側に直接このような大仰な跡が残っているのかは千歳たちには全く分からない。

「う~ん。お坊さん自体はだいぶ風化が進んでるみたいだけど~この傷はその前って感じだね~」

「ならば何らかの戦闘で致命傷を負わされていた…。という事ですかね。ですがこんな化物どうやって…」

「何かこいつ戦車持ってきても勝てる気しないんだけど…」

笑えない冗談だった。実際にどんな火薬兵器を使おうとそうそう相手取れることはないだろう。

「ん~。そうなるとここに来る前に倒れていた死体たちが関係してるのかなぁ~」

柊真が転がったマガフツの残骸を拾っては凝視し、また拾っては凝視している。

「この先にある宝物庫の中身を求めて…という感じですかね?上層に上がるほどに死体が少なかったにもかかわらず、ここではまた死体が増えていますし、これは確実でしょう」

「あ。そうだ! 宝物庫よ宝物庫。最初はあの中に行くつもりだったでしょ♪ こんないかつい番人がいるぐらいだしこの先にお宝があるのは確定よね!」

千歳は突然立ち上がり宝物庫の扉に向かって小走りに近づいていく。

「あ~。チトちゃん…ぼくの予想だけどその宝物庫の中は…」

柊真がそう呼び止めようとしたときには遅し、すでに千歳は扉を威勢よく開けており、悲鳴を上げる。

「何…で…ほとんど空っぽなのよ。番人はちゃんといたじゃん…遠慮なかったじゃん!」

千歳は後姿だけ見てもとれるほどわなわなと小刻みに身を震わせている。声も震えているのでどうやら涙目になっているのだろうと柊真は推測した。

「多分。このお城に住んでいた人たちが持って行ったんだと思うよ~。ほらここの人たちの死体は見当たらなかったしきっとどこかへ逃げる時に出来るだけ資金になりえる財宝を持って行ったとか…?」

「うわぁぁぁぁ! 何でこんなに中途半端に残ってんのよ――っ! 宝石とかはパパはなぜかくれること許してくれないから期待してたのにぃ――!」

千歳は頭を両手で帽子ごと抑えるように抱えた。悠斗や柊真の位置からはせいぜい横顔しか見れなかったが、目に涙を溜めていることを判断するにはそれで十分だった。

柊真はのろのろと千歳に寄って行き、頭をポンポンと優しく叩いた。どうやら愚痴に付き合うようだ。一方悠斗は何やら考え事をしているようだった。

 

「チトちゃん。先ほど中途半端に残っていると言いましたね?」

「……へ? …う、うん」

発言の意図を読めないまま、千歳は反射的に答えた。

「ちょっと行ってみましょう宝物庫に。もしかしたら何らかの書物が秘蔵されているかもしれませんし。」

書物…? と千歳が問おうとした時、悠斗は既に歩き始めていた。柊真と顔を見合わせ首を傾げながらも悠斗の言ったままに、ひとまずはと宝物庫に入ってみることにした。