日清戦争開戦までの話が、いよいよ緊迫感を増していく中、唐突に休憩。(笑)

ってことで、やたらとタイトルの長い今回の話。
1月21日のエントリーで、「この後度々出てくる「朝鮮総督の定むる所に依り特別の縁故」と、「朝鮮総督の定むる資格を有する木材業者」については、1912年(大正元年)9月『総令第10号』として具体的に出されているようなんですが、これまた改正後のものが『朝鮮法令輯覧』で見られるだけで・・・。」と、公布当初の条文が見つからずにイライラしていたわけですが、ようやく見つけたのでご紹介。

んでは早速、1912年(大正元年)9月3日付官報第30号から、『朝鮮総督府令第10号 朝鮮國有森林未墾地及森林産物特別處分令ニ依ル森林ノ縁故者及木材業者ノ資格』について。

森林の縁故者及木材業者の資格 (クリックで拡大)

朝鮮総督府令第10号

朝鮮国有森林未墾地及森林産物特別処分令に依る森林の縁故者及木材業者の資格、左の通定む。

大正元年9月3日
朝鮮総督 伯爵 寺内 正毅

第1條
朝鮮国有森林未墾地及森林産物特別処分令第1條第4号及第4條第3号に規定する森林の縁故者とは、左記各号の1に該当するものを謂ふ。

1 陵、園、墓、其の他遺跡の存する森林山野に在りては、其の遺跡に縁故ある者
2 古記又は歴史の証する所に依り、寺刹に縁故ある森林山野に在りては、其の寺刹
3 保安林に在りては、之に直接利害の関係を有する者
4 入会の慣行ある森林山野に在りては、其の入会の慣行を有する者
5 森林に関する旧法に依り、地籍届を為さざりし為国有に帰属したる森林山野に在りては、其の従前の所有者
6 開墾、牧畜、造林又は耕作物の建設の為貸付を為したる森林山野に在りては、其の借受人
7 森林に関する旧法施行前、適法に占有したる森林山野に在りては、其の占有者
8 部分林に在りては、其の分収の権利を有する者
第2條
朝鮮国有森林未墾地及産物特別処分令第3條第2号に規定する森林の縁故者とは、前條第2号、第4号、第5号又は第7号に掲ぐるものを謂ふ。

第3條
朝鮮国有森林未墾地及産物特別処分令第4條第4号に規定する木材業者とは、左記各号の1に該当するものを謂ふ。

1 木材売買を業とする会社にして、資本金2万円以上のもの
2 会社に非ずして2年以上木材売買の業を営み、信用確実なる者
附則
本令は、発布の日より之を施行す。
さて、まず朝鮮国有森林未墾地及森林産物特別処分令の第1條は、国有森林の売払い又は貸付けを随意契約で行う事のできる対象者についてです。
その第4号は、「朝鮮総督の定むる所に依り特別の縁故ある森林を、其の縁故者に売払ふとき」でした。
第4條は、産物の売払いに関する対象者で、その第3号は、「朝鮮総督の定むる所に依り特別の縁故ある森林の産物を、其の縁故者に売払ふとき」です。
で、その各縁故者ってのは左の通りだよ、と。
1号から8号まであるわけですが、ここでは「売り払う場合」なので、あまり意味が無く。(笑)

寧ろ重要なのは、次の第2條ですね。
朝鮮国有森林未墾地及森林産物特別処分令の第3条は、国有森林を「無料」で借りる事のできる対象者です。
その第2号は、「朝鮮総督の定むる所に依り特別の縁故ある森林を、造林の目的を以て其の縁故者に貸付するとき」。

その、無料貸与を受ける事が出来るのは、第2号の古記や歴史で明らかに寺のものである場合、その寺。
第4号の入会慣行を有する者。
第5号では、2月25日のエントリー辺りとも関係しそうですが、森林法に基づく地籍届を行わなかった所有者。
第7号の森林法施行前に適法に占有した森林山野については、その占有者、と。

勿論、無料貸付を受けて造林に成功した後は、森林令第7条に基づいて譲与を受けることができるコースへ乗るんでしょう。

第3條は、いきなり朝鮮で材木業やるためには資本金2万円がなきゃ駄目って事かな?
勿論、それでは朝鮮の業者はほぼ弾かれるわけで、第2号として会社ではなく2年以上材木業をしており、信用確実な者、と。
日本で2年以上材木業をしていた者は含まれんのかなぁ?


ってところで、今日は簡単に。



土地調査事業のここまでの整理
土地収奪の具体例 ~ 李震の場合 ~ (一)
土地収奪の具体例 ~ 李震の場合 ~ (二)
土地収奪の具体例 ~ 李震の場合 ~ (三)
土地収奪の具体例 ~李啓恆の場合~
地籍無届の森林山野の関する件