8月6日のエントリーなんかで、「これ以上は1912年(大正元年)朝鮮総督府令第6号の「土地調査令施行規則」見ないと何とも言えんなぁ・・・。まぁ、見つけられてないんですけど。(笑)」なんて言ってた、土地調査令施行規則。
土地調査令と共に土地調査事業の根幹となる法規ですので、是非取り上げたかったわけですが、ようやく見つけまして。

それでは早速。
1912年(大正元年)8月13日『総令第6号 土地調査令施行規則』。

土地調査令施行規則 (クリックで拡大)

朝鮮総督府令第6号

土地調査令施行規則、左の通定む。

大正元年8月13日
朝鮮総督 伯爵 寺内 正毅

土地調査令施行規則

第1條
土地調査令第4條の規定に依る申告は、土地所有者に於て別記第1号様式の申告書を調製し、朝鮮総督府臨時土地調査局又は出張の当該官吏に提出して之を為すべし。
土地所有者前項の申告書を提出せざるときは、其の土地の利害関係人に於て申告書を調製し、之を提出することを得。

第2條
土地調査令第8條の規定に依り、当該官吏土地に立入り、測量標を設置し、又は障害物を除去せむとするときは、予め其の土地占有者に通知すべし。
日出前・日没後、邸内に立入り調査及測量を為す場合に於ては、占有者の承諾を受くべし。

(※1912年(大正元年)8月14日官報第13号で正誤があり、以下の通りに)
第2条
日出前・日没後邸内に立入り調査及測量を為す場合に於ては、占有者の承諾を受くべし。


第3條
土地調査令第9條第2項の公示は、朝鮮総督府官報及土地の所在の道の道報に掲載し、且地方官庁の掲示場及適当の場所に掲示して之を為すべし。

第4條
臨時土地調査局長土地調査令第9條第1項の査定を為したるときは、其の公告を為すの外、土地調査簿及地図を土地所在の府郡に備へ之を縦覧に供し、且其の旨を公示すべし。

第5條
土地調査令第4條の申告、又は通知後同令第9條第2項の公示の日に至る迄の間に於て、其の土地に付左の各号の1に該当する事項を生じたるときは、土地所有者又は保管官庁は、別記第2号乃至第7号様式に依り、直に其の旨を朝鮮総督府臨時土地調査局に申告又は通知すべし。

1 土地所有者又は管理人に異動を生じたるとき
2 1筆の土地を2筆以上に分割したるとき
3 数筆の土地を合併して1筆と為したるとき
4 地目を変更したるとき
5 民有地にして国有地と為り、又は国有地にして民有地と為りたるとき
6 土地所有者又は管理人、其の住所、氏名又は名称を変更したるとき
前項の申告書には、土地所在の洞長、里長の証印を受くべし。

第6條
高等土地調査委員会の裁決又は再審を求めむとする者は、其の申請書に事由を記載し、証憑書類を添付して之を高等土地調査委員会に提出すべし。

第7條
第3條の申告を為さざる者は、30円以下の罰金又は科料に処す。

(※1912年(大正元年)8月14日官報第13号で正誤があり、以下の通りに)
第7条
第5条の申告を為さざる者は、30円以下の罰金又は科料に処す。


附則
本令は、発布の日より之を施行す。
別記の第1号書式~第7号書式については省略。

まずは第1条から。
土地調査令の第4条の規定による申告は、土地所有者が別記第1号様式の申告書を作って、朝鮮総督府臨時土地調査局か臨時土地調査局の出張官吏に提出すること、と。
8月2日のエントリーで、「別途施行規則あたりで申告書式が定められている可能性が高いですけどね。」と書いたわけですが、やはり施行規則で決まってましたね。
当たり前か。(笑)

んで、土地所有者が申告書を提出しない時には、その土地の利害関係人が申告書を調製して提出できる、と。
これを読み違えて、1月22日のエントリーのような、借家人や小作人が自分の名前で申告書を調製して提出した場合もあったんだろうなぁ。

内容自体は、土地調査法施行規則の第2条の「土地調査法第5条の申告は、別記書式に依り地主に於て之を調製し、土地調査局に提出すべし」に出張官吏が加わった感じ。
前回のエントリーでは、やはりそれだけでは不足で、結局取り纏めについては各地主→地主総代→面長→臨時土地調査局出張局員という流れになりましたけどね。

続いて第2条。
日の出前や日没後に家に立ち入って調査や測量をする場合には、占有者の承諾を得るって、当たり前の話じゃ・・・。
まぁ、取りあえず土地調査令の第8条 では、所有者や占有者に通知という事になってるわけですが、夜に所有者の承諾を得てもしょうがないわけで、実際に使っている占有者の承諾を得てね、と。

第3条は、土地調査令第9条第2項では、「30日間之を公示す」とだけ書かれて、具体的な公示方法については書かれていなかったわけですが、朝鮮総督府官報と所在の道の道報に掲載し、プラスして地方官庁の掲示場と適切な場所に掲示して行うこと、と。

第4条では、土地調査令第9条第1項の査定を行ったら、公示する他に、土地調査簿と地図をその土地が所在する府郡に備えて縦覧させ、且つその旨も公示しろ、と。
ああ。
1月22日のエントリーでの「土地調査簿及地図を閲覧する者の如き、其の数僅少」は、土地調査令施行規則からきてたのか。
ま、臨時土地調査局の査定の確認の話です。

第5条は、土地申告書による申告や、国有地の場合の保管官庁からの通知の後、査定の公示の日までにその土地について以下の各号に該当する事が起きたら、土地所有者や保管官庁は別記第2号書式から第7号書式で、直ぐにその旨を臨時土地調査局に申告・通知すること、と。
省略した第2号書式が「土地売買申告書」、第3号書式が「土地分割申告書」、第4号書式が「土地合併申告書」、第5号書式が「地目変更申告書」、第6号書式が「国有地成又は民有地成申告書」、第7号書式が「住所変更申告書」となっていまして、それぞれに応じて1号から6号までの申告又は通知を行うわけですね。
その場合、申告書には、土地所在の洞長・里長の証印を受けること、と。

1月22日のエントリーの「4 申請後、異動を生じたるときは、直に異動申告書を提出すること。」は、この辺の事言ってるのかな?

第6条は、高等土地調査委員会への不服申立・再審請求のやり方。
その申告書に理由を書いて、証拠書類添付の上高等土地調査委員会へ提出、と。

第7条は、第5条の申告や通知後から公示前までの間に、所有者の異動等があった場合の申告を行わなかったら、30円以下の罰金又は科料。

えーっとですね。
1月17日のエントリーでも見たとおり、土地調査令での所有権の確定で、登記や証明の抹消が申請できるわけで、その段階の登記や証明より効力が上なんですね。
だから、申請してから査定するまでの間に申請事項の異動があったのに、その旨の申請がされないと、以前の申請内容そのままで査定されてしまうわけです。
そうなると、公示期間終了後に不服申立とか、でも調査当時には当然立ち会ってないし、と、更に面倒な事になるわけです。

ま、笞刑なんか見ても、土地調査令の第18条や第19条の罰金等と併せて、土地調査令関係で罰金や科料を受けた人は居なそうな雰囲気ですが、果たしてどうだったんでしょうねぇ?(笑)


長くなりましたが、今日はここまで。



土地調査令(一)
土地調査令(二)
土地調査令(三)