んー、何か最近起伏に乏しい構成になってると思ったら、韓国から歴史系のニュースの発信が無いのね・・・。
だから話題が変わらないんだ。
うんうん、そうだ、悪いのは韓国だ。(笑)

さて本日は勿論前回の続き。
アジア歴史資料センターの『1.政況/14 韓国地方政況ノ概要(統監府政況報告並雑報)(レファレンスコード:B03041514200)』、1908年(明治41年)12月28日付『機密統■■1769号』について。


【13画像目】

一進会の状況に就ては既報と異なるところなく、地方会員中無頼徒食は常に一進会の威勢を発し、不正行為を敢てし、非違を遂ぐる者其後を絶たず。
且同会出身の官吏は徒らに■■を標榜し、旧慣を無視するを以て一般人民との阻隔益々甚しきを加え、一進会員に対する悪感情は■て憎悪の念を増長し、之を排斥する為めに耶蘇教徒に投ずる者あり。
或は大韓協会に加入する者、少なからず。
■に一進会員と耶蘇教徒及大韓協会員は、犬猿も啻ならざる関係にして、互に反目排斥しつつあり。
殊に耶蘇教徒は、公私の会合等に在りても一進会員と相伍し席を同ふするを■■するが如き状況なりと云ふ。



バックが強くなると増長するのは毎度の事。
こうして治安を悪化させたり、統治に対する悪感情を増幅させる馬鹿が居るのである。

で、民衆は一進会に反対してキリスト教や大韓協会の味方をする、と。
キリスト教徒と一進会の反目は、7月31日のエントリーにおいて宋秉畯が宣教師を責めたように、この後明確な形で表出化する。
尚、7月31日のエントリーの史料について、報知新聞の報道としているが、朝日新聞であるとの史料もあるので、追って調査・確認したい。

一方で、もう一つの大韓協会とは、李完用内閣攻撃のために呉越同舟する事となる。

たまに思うのだが、統監府に対する非難、政府に対する非難、一進会に対する非難、西洋文明的なものに対する非難、個人的な「恨」等が、全て日本への非難とされている気がするのだが、本当の所はどうだったのだろう?


【13画像目】 【14画像目】

昨年来、暴徒の為め一進会員は頻々殺害の災厄に遭ひ、或は家屋を焼毀せられ、其妻子眷族に至るまで迫害惨殺せられたる者少なからざる状況にして、甚だしき惨殺を被りたる結果地方会員は大に激昂し、本年6月中、評議員は続々出京して同会本部に会合し、不平を鳴らし、同会出身の内部大臣宋秉畯の態度を非難し、結局内閣総理大臣を弾劾し内閣の更迭を促さんことを決議し、辞職勧告文を草し、会長に之が送達方を迫り一時紛擾を極めたりしが、宋内相・李会長の慰撫に依り漸く鎮静に帰したり。
尚、同会は現今■■窮乏頗るこんな意を極めつつあるものの如く、会員中、時に葛藤を醸し内訌絶えざる状況にして、会長等は之が救済に苦心しつつあるものの如し。



えーっと、大体の流れを整理すると一進会について宋秉畯の入閣ハーグ密使事件高宗の譲位韓国軍隊解散内田良平の自衛団視察報告宋秉畯内部大臣就任→今回の史料となっている。

杉本幹夫氏の『「植民地朝鮮」の研究―日本支配36年』にあるとおり、宋の辞任を契機に内閣弾劾を始める予定だったのかどうかは不明だが、宋秉畯の態度を非難し李完用の弾劾と内閣更迭を決議したが、宋秉畯と李容九の慰撫で沈静化したのは事実のようである。


【14画像目】 【15画像目】 【16画像目】

大韓協会成立の由来は既報の如し。
同会は、設立後専ら会勢の拡張に力め、と時々地方に役員を派遣して遊説を試み、或は檄文を頒布する等種々の方法に依り会員の募集、支会の設置に奔走しつつあり。
同会は、元自強会西支会の変身にして排日派の団体なるが故に、■地方の元自強会西支会員は多くは同会に加入し、排日思想を有する者は自然同会に投じ、近来追々会員増加の模様ありと雖も、地方の勢力は未だ微々たるものにして、何等の活動を為す能はざるものの如し。
尚、同会は■■表面に在りては大に其の言動を戒め、慎重なる態度を保ちつつあるが如しと雖も、地方遊説中の役員及地方会員等は往々にして不穏の言動を試み、一般人民を煽動して暗に排日思想を伝播せんとする如き状況にして、一進会に拮抗せんとするものの如し。



・・・既報ってどれだよ・・・。_| ̄|○
まぁそれは兎も角として、大韓協会はこの時点では直接的な運動は殆ど行っておらず、専ら勢力拡大に尽力している、と。


【16画像目】

大同会は、基礎甚だ不鞏固にして、何らの根帯あるにあらず。
其の役員は市井無頼の徒の集合に過ぎず、勢力更に振はず、徒らに■■を装ひ各地に支局を設け、悪手段を弄し愚民を籠絡して以て金銭を詐取するが如き治安を妨害する行動ありしを以て、韓国政府は10月中之が解散を命じたり。



オイオイ・・・。
前回の史料では「政治に関係するに至り解散の運命に陥りたる」とされてるけど、単に犯罪紛いの行為で解散させられたんじゃねーか?
勘弁してくれよ、全く。


【16画像目】

基督教青年会は■■■も優勢なる団体にして、同会員たる耶蘇教徒は排日思想頗る旺盛なるものあり。
今後に於ける同会の行動は、注意を要すべきものとす。

其の他の団体に至りては、特記すべき事項なし。



基督教青年会は要注意団体としてマーク。
まぁ、韓国におけるキリスト教の状態が以前紹介したような有様だったわけで。
ある意味当たり前なわけですが。


次からは政社等から離れ、官民の意向についてである。


【16画像目】 【17画像目】 【18画像目】

一.韓国官民の意向

イ.一般の状況
行政組織の改善と共に官紀を振粛し、頑迷固陋の地方官吏を淘汰し新進の人物を登用し、大に其面目を革しめたりと雖、本邦人官吏の配置なき僻遠の地方官吏に在りては動もすれば職権を濫用し、収斂誅及を恣にせんとするもの少なからず。
渠等は漸次非行を敢てすること能はざるに至れるを以て、本邦人官吏の使用に付ては不快の疑念を抱き居る者ありと云ふ。
元来韓国人は、表裏反覆、去就常なく、面従腹背的の特性を有する者なるが故、常に我官憲に信頼し本邦人官吏の指導に依り、何れも恭謹柔順に執務しつつあるものと雖も、裏面にありて不平を抱き、怨声を洩す者多きは事実なるが如し。
殊に、本邦人官吏に対する韓国政府の給与が、彼等に対するものと著しく差違あるを見て、嫉視する者比々皆然らざるはなしと云ふ。



既得権益層であることを割り引いても、どうしようもねーな、韓国官吏。
李朝時代からずっと続いてきた伝統だから、しょうがないかも知れないけどね。
しかし元来韓国人は表裏反覆、去就常なく、面従腹背的の特性、か。
慧眼、慧眼。(笑)
現代においても、六カ国協議やそれを含んだ対米関係において、それを垣間見る事が出来る。

給料の話については、詳細不明である。
WEB上の話でも給料格差の話は稀に見られるのだが、何の史料によるデータを、どのようにして比較したかさっぱり不明。
実際、傭聘された者とそうでない者に格差が出るのは、ある意味当たり前なわけだが、一々それ言及する以上は、それらを明確にして欲しいものである。


【18画像目】 【19画像目】

本邦人官吏を配置したる地方人民は、諸般の事務取扱公正なるを以て、漸次従来の圧政誅求を免るることを得るを見るに及んで、追々信頼の念を加ふるに至り、諸般の出願等も本邦官吏に■すもの日に月に増加し来りたると云ふ。
而れども、彼等の頑迷固陋なる儒生、退官者及長老の輩にありては、容易に排日思想を脱却すること能はず、本邦官吏の任命、新政の施行を悦ばず、不平の年を抱く者十中八九にして、■年輩の日語に通ずる者又は本邦官民と親交する者を疎にし、其の本邦官民の頤使に甘んずるを概し、之を軽蔑し常に排日的談合に耽り居るものなりと云ふ。
下等社会の良民に至りては、衣食に汲々たる外余念なく、何等感想あるものなし。
寧ろ、本邦人の事業勃興に伴ひ種々の職業に使役せられ、衣食の途を得て安全なる生活を営むに至り、喜び居る地方少なからず。

要するに、軍隊、憲兵隊、其の他我官憲の増設と、韓国行政機関の整理と共に本邦人官吏増加するに従ひ、自然其勢力に威圧せられ、官民とも努めて我歓心を求め、仮令排日思想を抱くものと雖滅黙を守り、表面に於ては我官憲の意を迎合するが如き状況にして、地方官民にして我が風習を学ぶ者、追々増加するの傾向を呈するに至れり。



一般的には、圧政からの開放と公正な行政機能の普及により、好印象なようである。

儒教に染まっている層はこんな感じ。
この頃には儒教は衰退の一途を辿っており、冠婚葬祭にその形式を見ることが出来るだけとする報告もある。
一方で、中流以上の階級は、それなりに儒教を信奉する者もいたようである。
ただ、儒生もこの頃には様々な者が居り、開化を支持する者も出るようになるわけで、十把人からげには出来ないのは当たり前の話。

下級の良民は特に感想はないものの、職にありつくことが出来る分喜んでいると。
まぁ、政治や思想に関心の無い層にとっては、当たり前の話ですな。

総合的に考えるに、日本の勢力が強くなってきた事を感じ取っての「事大」である、と。(笑)


ということで、今日はこれまで。


韓国地方政況ノ概要(一)