1909年(明治42年)6月25日付『来電第49号』によれば、京城電気会社と日韓瓦斯会社の買受契約は、24日に調印された。
価格は120万円。

この中に、韓国の持ち分である50万円分が含まれているか否かは、不明である。
しかしながら、前回の売り込みの言葉を信じれば、「韓皇室ノ所有株金五拾万円ニ関シテハ当方ニ於テ別ニ支払ヲ要セス引受得ル方法有之候趣ニテ」である。
韓国分の50万込みであると考えるのが、妥当であろう。


さて、今回の『条約書類発見と玉璽偽造事件』シリーズは、どうせ寄り道だらけなので今回も寄り道。(笑)

この買受契約は、当分秘密の筈であったが、秘密とは漏れるもの。
これを原因とした、ストライキが起こる。

1909年(昭和42年)7月19日付の憲機第1443号から。
非常に長いし、表題と関係無い部分なので、超意訳。


電気会社が、日韓瓦斯会社に売却されると、同社韓人運転手及車掌等に不安と動搖が流れる。
そこへ、 「コールブラン」 が数日内に帰米するとの話が流れる。
解散についての慰労金(注:退職金か?)も交附せず、会社に供託している身元保証金の還付についても一言もないため、憤怒と狼狽が、各人申し合わせたように一時に起こる。
斯くて昨18日午前10時頃から、全線に亘って 「ストライキ」 を決行。
その後、何故か反日演説。(笑)

夕刻前から100余名が、 「コールブラン」 の私宅に押しかけた。
再び反日演説混じりに質問。

社長は、両三日内に帰国の途に就くと聞いたが、供托している保証金の還付はどのようにするのか。
又、我らは貴会社に依り、今日生活上の安全を得てきたから一意専心勤務に奮励しつつあったのに、今回、日本に売却すれば、今日会社のために尽くして日本の悪感情を受けており、再び日本の会社に雇われる筈がない。
従って、我等を解雇については、相当の慰労金を支給するのは、我等によって数年暴利を得た、会社の責任である。

これに対して「コールブラン」は、慰労金は支給する理由がないが、保証金は無論還付する。
しかし、会社は日本の会社と売買契約を結んだだけで、受け渡しは9月である。
9月を過ぎなければ何も払えないなどと言って、社員を激昂させる。(笑)
必死に言いくるめて、午後7時半、一応解散。

聞くところによれば、彼等の中ではキリスト教信者が多く、従って排日思想を抱いている。
日本への売却は容認できず、引き継ぐ際には、電車その他機械を破壊しようなどの協議をしつつある。

なお「ストライキ」は、 日本との売買契約を取消すか、自分たちが解雇された後のために、相当の保証を与えるか、日本においても、自分たちが満足するだけの処置をとらなければ、続けるとの事である。


憤怒と狼狽が、各人申し合わせたように一時に起こるは、当然の火病。
結局は「金」な訳だが、そこに日本を絡める意図が分からない。
つか、「コールブラン」の会社に勤めてても、お前等に特権がある訳じゃねーだろ。(笑)
今まで普通に生活できたのは、会社の後ろ盾のおかげでは無いと言うことすら分からぬ無知さ。
勿論、「金」をとる為だけの方便に過ぎないかもしれないが。


このストライキは、約10日に渡って続いた。
その結末が、1909年(昭和42年)7月19日付の憲機第1468号に記されている。


日韓瓦斯会社に引継の曉は、一般に解傭せらるものとの誤解は、瓦斯会社重役の解職せざる旨の明言に依り、其誤解なりしことを悟り、一般に感情融和したるものの如く、未だ運転手車掌全員の就業を見るに至らざるも、午後七時迄は市中を運転し殆んと、常態に復したり。


解雇しないと言っただけで収まるのか・・・。
本当に排日感情ってのは、根拠皆無なんだな。(笑)


さて、電気会社についてはここまでにして、次回からは玉璽の話。


条約書類発見と玉璽偽造事件(一)
条約書類発見と玉璽偽造事件(二)
条約書類発見と玉璽偽造事件(三)