人が買うのは、「あなた」だ


この連載記事では、

人々にあなたを買ってもらうための

実行可能な戦術を、

いくつか紹介して行く予定だ。


『人が買うのは、「あなた」だ』では、

都市伝説や誇張ではなく、

あなたの望み(例えば、あなたの扱う製品やサービスを

購入してもらう、あなたに問い合わせてもらう、

あなたを雇ってもらう、あなたをプロモートしてもらう

などなど)を叶えるために

いかにして他の誰かに

買ってもらい、決定してもらうかという

「フレームワーク」を提供していきたい。


『人が買うのは、「あなた」だ』のコアとなる考えは

人間の普遍的な行動法則であり、

その一つに、

人は最初に感情に従って行動(購入)し、

後で論理的にその行動を正当化する

というのがある。


我々は、日々の生活の中で

小さな決定から大きな決定まで

それこそ何百という決定を下している。

中には、純粋な直観力によって

瞬時に決定するケースもあるが、

自分の選択が満足のいくものだと

確信できるまで、繰り返し考える人たちもいる。


ある人は素早く決定するが、

別の誰かは決定するのが遅かったりする。

何人かは自分の選択したことについて

細かく考察するが、選択と同時に

一気に飛び込む人たちもいる。


感情は、論理に先立って

人々をお構いなしに行動に駆り立てる。

例え、それまでにどんな経験的証拠があろうとも

人は最初に感情によって動かされる。


だからといって、

事実やデータ、観察結果や統計などが

重要でないというわけではない。

証拠や根拠となるデータは

意思決定において重要だが、

実際に我々を行動に駆り立てるのは

感情なのだということだ。


ところが、世の中には

感情に左右されずに決断を下せる人がいると

主張する人がいる。


彼らは、事実と論理だけで決定が

どう下されたか、自分の体験や実例を挙げながら

雄弁に説明しようとする。


しかし実際は、ほんの少し質問しただけで

彼らが論理的に決断を下す前に

既に感情的に決断を下していたことが

分かってしまうものなのだ。


事実や論理に基づいて判断したと言っても

100%、あと知恵に過ぎない。

例外はない(『スタートレック』のMr.スポックは別として)。


最高の購買部長(その人はデータに基づいて

購買を決定するよう訓練されているはず)でさえ

感情によって動かされるのだということを

多くの事実が証明している。


近年、日本の企業の調達部門(購買部門)でも

まだ限られたケースで全部ではないにしろ、

取引を「オンライン」にしたり、

「リバースオークション」(*)に

切り替えたりしたところもある。


その狙いは?


購買プロセスから人間の要素(感情)を

除外すること。


セールスとビジネスにおける「コア」は、

一人が別のもう一人の抱えている問題を

解決してあげるという

実に「シンプル」なことなのだ。


誰かの問題を解決するためには、

先ず最初に、

自分が抱えている問題点について

あなたに話してくれる相手を見つけなければならない。

それは、「好かれる」ことから始まる。

「好かれる」ことは、感情的な繋がりを築く「扉」を

開けてくれる。


さらなる「つながり」を感じた人々は、

自分たちの抱えている問題点の情報を

あなたと共有することで、

さらに絆を深めようとする。


彼らの本当の「問題点」にフォーカスできれば

あなたの手にあるその情報で、

解決」することができる。

人々は、自分たちの問題を解決してくれる人に、

とても忠実なのだ。


しかし、例えあなたの買い手が

あなたと取引することについて

感情的に気分がよくなっているとしても、

ここで油断してはいけない。

これらの感情を裏付けてくれる論理の基盤を、

彼らはまだ探しているのだ。


そのために、あなたは、

自らの行動を通して相手と信頼関係を構築しながら、

彼らの抱いている感情的な繋がりを補強し、

前向きな感情的経験でもって、

あたた自身を信用させるように

慎重なステップを踏まなければならない。


(つづく)

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(*)リバースオークション(Reverse Auction)

売り手が買い手を選定する通常のオークションと異なり、

買い手が売り手を選定する逆(Reverse)のオークション。

買い手が欲しい商品の条件や希望金額を提示し、

売り手企業が自社で提供できる価格を示して、

最も安い相手と取引をするという取引方法。


私がコピー機の営業をしていた頃、

相手との感情的交流がまだできていない時に

相手が現在使っているコピー機の調子について

質問をしてみても、なおざりな答えしか返ってこなかった

という経験がある。


「まぁ、別段どうこう言うほどのことはないよ」

「所詮、コピー機なんだから、調子のいい時もあれば

悪い時もあるよ」

「そりゃあ、最新型の機種がいいに決まってるだろうけど

先立つものがないとね、何も買えんわな」


それが、何度か見込み客に通うようになると

(中には、初めて飛び込んで数時間粘って

受注したというケースも何度かあったが)、

相手との感情的交流が生まれる。


相手の方から

「どう?今月売れてるの?」

「今日は外、暑いでしょう?少しここで涼んでいったら?」

「金のなる木があったら、

今すぐにでも契約してあげられるんだけどね~。」

などと、話しかけてくれるようになる。


やがて、こちらから聞かなくても、相手の口から

「このコピー機、調子いい時は何の不満もないんやけど

一旦紙詰まりしたら、取り出すのが面倒でね。

今朝もおかげで、事務員と私で20分以上かかって

ようやく直ったくらいでね・・・」

などと言ってくれるようになる。


そこで、

「事務員さんと所長のお二人が

20分も紙詰まりの復旧に時間を取られたとしたら

その間、お二人とも何ら生産的はお仕事は

されていなかったということですよね?

そういうことが、何度も起きているとしたら

これほど無駄なことはないんじゃないですか?」

などと、話を続けるのだ。


そうすると、今度は相手から

「君のところのコピー機は、そうじゃないっていうわけ?」

などと切り替えしてくれる。


こうなれば、受注は、もうすぐだ。

先を急がずあえて慎重に、次のステップへと進む。


人が買うのは、間違っても嫌いなヤツからではない。

好ましい相手からだ。

いくら安くても、嫌な相手からは

決して買ったりはしない。


例えあなたがWeb3.0の新たな戦略をとっていても

そこから見え隠れする、「あなた」が好かれなければ

意味はない。


押し付け(アウトバウンド)セールスの時代は

終わったのだ。

これからは、引き寄せ(インバウンド)セールスの

時代だ。


是非、「あなた」を買ってもらおう!


【参考文献】

The Power of Who/Bob Beaudine

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The Likeability Factor: How to Boost Your L-Fac.../Tim Sanders

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A Whole New Mind: Why Right-Brainers Will Rule .../Daniel H. Pink

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People Follow You: The Real Secret to What Matt.../Jeb Blount

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People Buy You: The Real Secret to what Matters.../Jeb Blount

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