都市伝説その3:

自分自身を売りこまなければならない


一部の賢いトレーナーやマネージャーが

「自分自身を売りこまなければならない」と、

繰り返し強調するのを、大抵の人が

自分のキャリアにおいて、

一度は聞かされてきたはずだ。


父親は息子に、
「その仕事に就きたいなら、お前自身を売りこまないとダメだ」

と言い、

セールス・トレーナーは、
「セールスの本当の鍵は、自分自身を売る、

あなたのその能力にある」とか、
「他の人に好かれたいのなら、

自分自身を売りこまなければならない」などと言う。


こういう考えは、我々のビジネス文化において

普遍的な事実のように思われているが、

本当にそうなのか?


ここでもまた、前回同様、

Jeb Blount(ジェブ・ブロント)の体験を

彼自身の言葉で紹介したい。


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最近、私は、

あるアイビー・リーブの大学を訪問したことがある。

そこで、世界中のトップクラスのビジネス・スクールから

やって来たMBAの学生グループに対して

ある成功したビジネスマンによる講演会が行われていた。


彼が会場である、その部屋に入って来た時、

会場は静まり返り、誰もが彼に注目していた。

聴衆は、誰もが前のめりになって、

彼の話を聴き逃さないようにしていた。


彼のメッセージとは何だったのか?

ビジネスでの成功の秘訣は何だったのか?


「先ず最初に、これだけは決して忘れないで下さい。

自分自身を売ることが営業していて、

どれくらい重要かということです」


会場にいた誰もが、一斉に頷いた。

この賢人とその場にいた多くの聴衆にとって、

このフレーズはその後に人気商品として、

使いやすい決まり文句になったように、

講師の舌先から転がり出るように出てきた。


私が出席したその講演会で、

まるで丘の上の一人の予言者が

まさにたった今石版からそれを読み上げたように、

聴衆の大半が、その発言に呼応するように大きく頷いた。


セールスの専門家として、一番売れている本の著者、

Jeffrey Gitome(ジェフリー・ギトマー)は、

シンプルな哲学、

「人は買うのは好きだが、売りつけられるのは嫌いだ」

を教えている。


言い換えると、大部分の人々は、

自分の理屈で買うのを好むということだ。


彼らは、猛烈な売り込みやこれ見よがしの

製品やサービスの特徴の一方的な説明を

求めたりすることもなければ、感謝することもない。


それでも、セールス担当者は、世界中で日々、

売り込み可能データに基づいて、

見込み客に電話を掛けたり、あるいは会ったりして、

自分の扱っている商品やサービスを売り込もうとしている。


それから、セールス担当者たちは、

世界中のあちこちで開催される

ネットワーキング関連イベントや見本市に

出かけて行っては、

見込み客や顧客、人事担当責任者などに

売り込みを始めるが、

彼らが手に入れるのは、

単に5分以上立ったままでじっと話を聞いてくれるだけの

人に過ぎない。


もちろん、そんなやり方ではうまくいかない。

なぜなら、人々は買うのは好きだが、

売り込まれるのは好きじゃないからだ。


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より一生懸命に誰かに売りこもうとすればするほど、

あなたは相手をさらに押しのけてしまう。


他の人が自分自身のことや自分の仕事の成果、

あるいは自分がいかに凄いかなどと

あなたにずっと話し続けていたとしたら、

そんな会話は、全部「ムダ話」なのだ。


それは、宣伝文句の押し売りに過ぎない。

それなのに、相手ともっと長く一緒に過ごせるには

どうしたらいいかなどと考えているあなたは、

そんな会話から逃げようともしない。


その代わりに、あなたはこんな風に思ったりする。

「ドン引きしちゃうなぁ」とか、「なんて退屈なんだ」、

あるいは、「わあ、こいつ単なる自惚れ屋さんだ」。


もちろん、我々は

自分自身を売り込む機会というのが大好きだ。

そんな機会を与えられれば、我々のほとんどは

自分の大好きな人や何かについて

何時間でも話すに違いない。


そして、それは

他の人から自分がどう見られるかについて、

その影響に我々は気がついていない証拠でもある。


自分自身を売り込めと

あなたに何気なく言ったプロは、

自分が売り込まれると、

どう対処したらいいか

正確に説明することができない。


確かに、従来のセールスのプロたちは

気の利いた何かを提供してくれるが、

その大部分は誇張に過ぎない。


あなたは、他の人に売り込むことはできない;

あなたは、他の人に彼ら自信の判断で

あなたを買うようにさせなければならないのだ。


例えあなたが、評判が高く、その上

他の誰かがあなたと対戦することを

楽しみにして待っているとしても、

自分自身を売り込もうとするあなたの試みは

逆効果となってしまうだろう。


ここでもまた、

Jeb Blount(ジェブ・ブロント)の苦い体験を

彼自身の言葉で紹介したい。


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私は、大勢が参加するディナー・パーティーで行った

スピーチで、この教訓を学んだ。


参加者の1人は、

私の本(Power Principles)の大ファンで

彼は、会の主催者に働きかけて

私の右隣りの席に籍を確保したのだ。


夕食の間、彼は私に質問をし、

そして、私は話して、話して、話した、自分自身について。


スピーチの数日後に、私は、フォローアップの意味と、

感謝を示すために、その会の主催者に電話を掛けた。


私は彼に、

ダニエル氏を隣の席に座らせてくれたことに感謝し、

そのダニエル氏が楽しい一時を過ごしたかどうか、

彼に尋ねた。

彼はしばらくためらって、ようやくこう言ったのだ。

「私はあなたが好きなので正直にお話します。

実は、ダニエルさんは、あなたについて

あまりいい印象をお持ちではなかったようでした」


それは、内臓に一発お見舞いされたような感じだった!

「我々は会話が盛り上がっていたので、

一体何がまずかったのか教えてもらえませんか?」と

私は尋ねた。


パーティーの主催者の話だと、

ダニエル氏は、私が自分のことしか話さなかったと

感じたというのだ。


真実は痛みを伴う。


私は売った、

しかし、ダニエル氏は買わなかった。


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人々は、自分のなりの理由であなたを買うが、

あなたの理由であなたを買うことはない。

それゆえ、相手が自分のことを好きだろうという理由で

誰かに何かを売りつけようとすれば、

それは逆効果となる。

(友人や親戚に安易に何かを売りつけようとすれば、

その人間関係自体がおかしくなってしまう)


しかし、相手が自分の理由でもって

あなたを買う方を選んだとき、

それは強力なコネとなり、

ほとんど何でも可能にしてしまうくらいの

人間関係を作り上げるのだ。

(頼みもしないのに、見込み客を紹介してくれたりする!)


(つづく)



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昔、私がキヤノン販売で

コピー機の飛び込み訪問販売をしていた時、

ある月の最終週になっても

まだ、ノルマ達成の見通しが立っていなかった。


そんな時に、見込み客のところへ伺うと

そこの建築設計事務所の所長に

「君は、今月のノルマが未達であせっているんじゃないの?

そう顔に書いてるよ。

君は何度も熱心に通って着てくれたから、

もし他でどうしても売れなかったら、

その時は、最後にウチにおいでよ。契約してあげるから」

と言われた。


それを訊いて正直私はホッとした。

おかげで、別の新規飛び込み先で

契約してもらい、ノルマは達成できた。


お礼に、その建築設計事務所に

菓子折りを持って報告しに行った。

「どうしてもダメなら、最後にここへ行けばいいんだ

と思うと随分気が楽になり、おかげで

目標達成できました!」


ノルマ達成のために売り込みたいのは

私自身の理由で、そんな切羽詰った私は

「売り込んでやる!」という意気込みが

顔に出ていたのに違いない。


それでは、買いたい見込み客も

買う気がなくなるというものだ。


その建築設計事務所には

翌月の1第一号分として、その場で

翌月1日の日付での先付け受注を頂いた次第だ。


人が買うのは、間違っても嫌いなヤツからではない。

好ましい相手からだ。

いくら安くても、嫌な相手からは

決して買ったりはしない。


例えあなたがWeb3.0の新たな戦略をとっていても

そこから見え隠れする、「あなた」が好かれなければ

意味はない。


押し付け(アウトバウンド)セールスの時代は

終わったのだ。

これからは、引き寄せ(インバウンド)セールスの

時代だ。


是非、「あなた」を買ってもらおう!


【参考文献】

The Power of Who/Bob Beaudine

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The Likeability Factor: How to Boost Your L-Fac.../Tim Sanders

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A Whole New Mind: Why Right-Brainers Will Rule .../Daniel H. Pink

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People Follow You: The Real Secret to What Matt.../Jeb Blount

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People Buy You: The Real Secret to what Matters.../Jeb Blount

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