この記事は、中部大学教授、武田邦彦氏のブログから

記事の転載許可を得て、以前ネコペンギンのブログ

『幸せな成功のための魔法の杖』で連載しておりましたが、

2011年2月18日朝、アメブロによってそのブログが

突然削除されてしまい、ご紹介ができなくなってしまいました。


そこで、ウルフペンギンのこのブログで改めて

ご紹介していくことになりました。

なお、本文中の誤字脱字は訂正してありますが、

基本的に内容はそのままにしております。


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今から3年ほど前でしょうか、

原子力委員会の研究開発部会で

原子力予算の分配をしている時に、

私は次のように発言しました。


「ここにおられる原子力関係の方は

原発が安全だと考えておられますが、

日本人の多くが原発に不安を持っています。

この際、私たちが間違っている可能性があるので、

原発の安全研究のお金を増やす方が良いと思います。」


これに対して委員長代理の先生が

「わかりました。それでは広報費を増やしましょう」と

言われたので、

私は「いや、原発が安全と言う広報をするのではなく、

原発は危険だという前提のもとで安全を見直す研究に

お金を投じたいという意味です」と説明しました。


科学者は自然に対して謙虚で、

研究をする過程でイヤと言うほど自分の考えが

未熟であることを知ります。

厳しい研究をすればするほど、

自分の至らなさを感じるものですから、

その点で、この委員長代理(東大教授)は

「科学者ではない」と言うこともできるでしょう。


また、人の意見が自分と違うとき、

人の意見が正しいかも知れないと思うことが

民主主義の基本と思うのです、この時の委員長代理の発言は

まだ良く覚えている衝撃の一言でした。

「これでは日本の原子力もダメだ」と感じたものでした。


(平成24年8月28日)
武田邦彦


「kouhouhitdyno.225-(4:01).mp3」をダウンロード


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この話は、原子力委員会だけの話ではない。


どんな業界においても、その業界独自の

「ルール」や「常識」というものがあり、

その業界に長くいると、それが身についてしまい

別の業界の目線や普通の社会人として、

あるいは世界各国では、という視点で見ることが

出来なくなってしまうことが多い。


しかも、これはビジネス世界だけの話でもない。


テレビのバラエティー番組「ケンミンショー」を観て

分かることだが、料理や習慣で、その地域独自のモノなのに

(ヤラセもあるだろうが)、そのことを指摘された地元の人が

「えぇ~、他の県ではそういう食べ方しないんですかぁ~?」

「えっ、本当ですか?こんなことするの、

この地方だけなんですか?」

などと驚く。


昭和の時代ならともかく、インターネットの時代に

「知りませんでした!」はないだろうと私などは思うのである。


「多点観測、高点決断」(たてんかんそく、こうてんけつだん)

は、私の造語だが、この言葉が、

今回の原子力委員会だけでなく、

あらゆる業界で通用する考え方を表している。


先ず日ごろから、対象となる製品やサービス、業界、顧客

などについて、自分の仕事の立場という視点からだけでなく、

様々な立場の視点から考えてみる習慣を身に付ける。


その上で、何かを決断する際には、

より高い所(より抽象度の高い概念)から

何を決め、何を断る(しない)かを決定する。


この場合の、「より抽象度の高い概念」とは、

「電気を安定的に供給する」ということではなく、

「地域住民の信頼に応える」というようなことになる。


是非、日ごろの仕事の現場において、

「多点観測、高点決断」を取り入れて欲しい。


by ウルフペンギン