コトラーが「マーケティング3.0」と言いだし、
徐々に浸透してはいるが、
この国では程遠いのが現状だ。
「マーケティング1.0」は、
かつての松下幸之助が力説していた
「蛇口理論」に重なる。
企業は、より良いもの(サービス)を
生み出して、顧客に売りつけることが使命であって、
「マーケティング」とは、それを効率良く行うための
ノウハウだった。
「蛇口理論」とは、水道の蛇口のように
捻れば水が出て、水が出れば人は飲む。
水が飲みたい人に、「ここに蛇口があるよ」と
教えて上げることが「マーケティング」であり、
企業の務めだと松下幸之助は考えていた。
ゆえに、同業他社が売りだした新製品が
ヒットすると、松下幸之助は、
「ウチでも、もっといいもの作りなはれ!」と
開発担当者にけしかけた。
「他社より、性能が良くてデザインが良くて
しかも安ければ、後発だろうと関係ない。」
という理屈だ。
もちろん、特許や実用新案の問題もあり、
実現するのは、簡単なことではない。
しかし、松下幸之助の命令に忠実だった
当時の「松下電器産業」は、
他社から「まねした」と揶揄されるくらい、
後発参入が多かった。
松下幸之助が亡くなり、
日本の高度経済成長にも陰りが見え始めた頃、
「顧客満足」志向というマーケティングが
世界中に広がっていった。
これは、本来は日本の企業の「お家芸」だった。
顧客(&見込み客)のニーズを探り、
それに見合う製品やサービスを生みだしていく。
その結果、小型低燃費という日本の自動車が
アメ車を窮地に追い込んだ。
あるいは、「ウォークマン」が世界中で
爆発的に大ヒットしたのも、
大賀典夫がアメリカで若者が
街中で大きなラジカセを肩に担いで
音楽を聞きながら歩いていたのを見て、
小型で再生専用カセットプレーヤーを
作るべきだと役員会で進言したことがきっかけだ。
当時は、インターネットもなく
名もない若者たちの「ニーズ」は現場に行かない限り
掴めなかったのだ。
こうやって、顧客の「ニーズ」に合わせた
製品を生み出し、宣伝するようになったのが
「マーケティング2.0」だ。
しかし、世の中にモノが溢れ返るようになると、
人々は、自分にとって何が必要なのか
次第に分からなくなっていく。
大型テレビもパソコンも全自動洗濯機も
自動車もエアコンも携帯電話も揃うと
人々は、己にとってのニーズが不確かとなり、
テレビのCMで繰り返し放送される商品こそ
次に必要なモノなのだと思うようになっていった。
(ダイエット・サプリなど)
やがて、一部の人々が
そういう押しつけられたニーズではなく、
本当に欲しいモノにだけ集中しようとしだした。
給与が毎年右肩上がりで増えていく時代は終わり、
老後の不安も年々増大していく中で、
そういう人たちは「今」を楽しもうとし出した。
「一点豪華主義」とも言える人たちだ。
ポルシェに乗っているのに、
家は築40年の2kの安アパートだったり、
服も家具も最小限しか持たない代わりに、
毎年違った国へ海外旅行する人たちだ。
そうなると、メーカー側のマーケティングも
変えざるを得なくなってくる。
顧客の「ニーズ」よりも「ウォンツ」に
フォーカスするようになってきた。
(但し、あくまでも一部のメーカーでの話)
この段階で大飛躍したのが
ご存知アップルだ。
ジョブズ自らが「欲しい!」と思えるような製品を
生み出してきた。
これが「マーケティング2.5」だ。
この時代になっても、
日本の家電メーカーのほとんどは
「マーケティング2.0」のままで、
中には「マーケティング1.0」のままという
企業もあった。
気付いたら、アジアでの家電シェアは
韓国のメーカーに追い抜かれてしまった。
世の中が「マーケティング2.5」になっているのに、
お上と結託して「エコポイント景気」を作り出して
どこの家電メーカーも、
テレビの増産体制に資金や人を一気に投入した。
その結果、「地デジ化」が終わると、
案の定、テレビ不況が家電メーカーに
押し寄せてきた。
工場を閉鎖したり、資本の半分近くを
台湾のメーカーに出してもらうようになったり、
1万人規模でリストラしたりと、
散々な有様である。
さて、世の中は、次の「マーケティング3.0」へ
向かっている。
これは、
「儲かるなら何を売ってもいい」というような
「エゴ」から、
「少しでも多くの人々や世の中のためになる」
製品やサービスを生みだしていこうという
「エヴァ」の発想だ。
つまり、最初に「お金」ありきではなく、
「社員」や「顧客」も含めて、
最初に「幸せ」ありきという考え方だ。
コトラーは、このことを指摘しているが
残念なことに日本には、東電や関電のような
「マーケティング1.0」から抜け出せない企業も
多い。
それを助長させてきたのが、政治家や官僚だ。
アップルは、既にiPadを使った教育分野に
進出している。
これも最初に「幸せ」ありきの発想だ。
単に、タブレットという形だけ真似しただけの
日本の製品は、SONYタブレットも含めて
「マーケティング1.0」の松下幸之助の発想から
抜け出せずにいる。
各局のテレビ番組がつまらないバラエティーと
再放送と似たり寄ったりのドラマと
韓国ドラマばっかりでは、
東芝の「レグザ・タブレット」もむなしい限りだ。
このままだと、2020年頃には
かつて一流と言われた日本の企業の多くが
倒産するか、外資系となってしまうだろう。
今こそ、世の中を少しでも良くして
人々の幸せに貢献出来るような
製品やサービスを生みださないと
領土問題以前に日本はビジネスで
乗っ取られてしまう!
by ウルフペンギン