CAPTER ONE


The Secret Word:6


A Mother's Love:1


母の愛:1


ちょうど数時間前、今夜は忘れがたい夜になる

という予感とともに、私は大聖堂を後にしました。


グル(導師)のようなガイドを

上目使いでもう一度ちらっと見ながら、

「忘れがたい」という表現では、

その年の最も大重要な言葉に対して

控え目過ぎる言い方ではないかと思いました。


「Pravin(プラヴィン)、カルカッタの聖人、

マザー・テレサに会った時のことについて、

私にもっと話してくれませんか?」


「いいですよ」と、彼は切り出しました。

「彼女はおなじみの白い綿のサリーを着て、

群集の中を歩いていました。

私は、彼女の方に向かって叫んで、

金切り声を上げながら、走り出しました。


そして、何とか追いついた時、

彼女は手を伸ばして私の口に当てると

私に懇願したのです。

『'stop talking and start doing.'

(話すのを止めて、行動を始めてください)』、

私はこのことを今でもしっかり覚えています。

まるでそれが・・・」


「あなたの言うまさしくこの通りに

今夜私を連れてきたのは、マザー・テレサでした」、

興奮を抑えることができなくて、

私は彼の話を途中で遮ってしまいました。


「ほんのちょっと前、私は聖スティーブン大聖堂

(シュテファン大聖堂)の中で立ち止まって、

彼女の人生に対して敬意を払っていました。

自分の人生で、もっと多くのことをしたいと熱望すると

誓って後にしたのです。

私が次に足を止めたのは、

あなたの美しいファブリックのお店の前だったのです」


プラヴィンは話を中断して、熱心に私の目を見つめると、

大胆に言いました。

「我々の行く手は、元々交差するはずでした。

我々は、会う運命にありました。

あなたは、そのために私の店に入ったのです」


私は、自分の母親のことを思い出させてくれた

その新しい友人の目をじっと見つめましたが、

母は私にとってGenshai(ゲンシャイ)

の最初のモデルそのものですが、

彼女がその言葉を聞いたことは絶対なかったし、

その意味も知らなかったと確信しています。


「ケビン」と、母は私のあごを持ち上げて、

こう言ったのです。

「あなたは、人生で望むことは何でもすることができるの。

あなたは、価値ある夢を全部成し遂げるという

人生を送ることができるの。

あなたは、きっと人生で大きくて意味があることをするわ」


子供の頃のことを思いだすと、その言葉は

母がそう言ったのと同じくらい明白に感じられました。

まさにその時、同じテーブルのプラヴィンの隣の空席に

私の守護天使が優しく微笑みながら

座っているかのようでした。


(つづく)


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ウィーンの街で、

ショーウィンドーの飾りに惹きつけられてフラッと入ったお店は、

インド人が経営する洋服などの生地を売っているお店だった。


偶然にも、ウィーン出身でアウシュビッツを生き延びた

世界的な実存的精神療法の権威、ヴィクトール・E・フランクルを

著者と店の主人が共に知っていたことから、

急にそのインド人の主人、プラヴィンは、

著者を早目の夕食へと誘い出す。


近くの中華レストランで、そのプラヴィンが

母親から教わった幾多の大切な教えの中で

最も大事な教えがあると話し始めた。

それは、英語の「チャリティー」に似た言葉だが

意味することはもっと深いものだと。


それが"Genshai”という言葉だった。

ゲンシャイ」とは、相手を軽く扱わないこと。

相手に敬意を表することだ。


著者は、この言葉を聞いて、子供の頃に

自分の母親が言った言葉を思い出した。


子供がまだ一歳未満の頃(出来れば三歳くらいまで)、

母親がしっかり抱きしめて愛情を表現すれば、

その子供は、他人に対してだけでなく、自分さえも

愛せる大人になれる。

そうでないと、大人になっても「愛着依存症」になりやすい。


また、同様に、子供が幼稚園児から小学校低学年の頃、

「あなたには、こういう大人になって欲しい」と、

母親がその子供に期待することを話せば、

それが潜在意識に刷り込まれやすい。

それがいい期待なら、その子はもしかして

歴史に名を残すような人物になるかも知れない。



参考文献:


Aspire: Discovering Your Purpose Through the Po.../Kevin Hall

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例え10年前のことであろうとも、

「その人」のおかげで何かが上手くいったり、

勇気をもらったり、癒されたとしたら、

今、改めて電話で「感謝の気持ち」を

伝えよう。


遠方なら、手紙を書いてみよう。

近くなら、会いに行ってみよう。


そういう「感謝訪問」によって、

感謝のきっかけとなった出来事が

もう一度鮮明に思い出されるはずだ。


あなたがいくつであろうと、

今それをすれば、間違いなく

今の自分が幸せだということを

しみじみと実感できるだろう。


人は知らない間に誰かを支え、

同時に誰かに支えられていることを知れば、

生まれてきて良かったと思えるはずだ。


by ウルフペンギン