CAPTER ONE


The Secret Word:2


An Unexpected Gift


予想外の贈り物


店長と思しき中年の男性が、

彼の年齢の半分くらいの若さの

飛び跳ねるエネルギーとともに、

私の方へ向かってきました。


彼は、歓迎の意味で私に手を差し出しました。

私は、彼の大きな茶色の目に完全に引き寄せられました。

彼の顔は丸く、真珠のような白い歯は

彼の滑らかなチョコレート色の皮膚を強調するものでした。


彼は私の手を握っては振り、絶妙なウィンクで微笑み、

頭を傾けて、流暢な英語で言いました。

「こんばんは。

私の名前は、Pravinです。 Pravin Cherkoori」

(訳注:このインド人の名前の発音が不明だが、

発音はプラヴィン・チェクーリ?)


彼の声は、彼の店の名前の国の出身だった人の

憎めない柔らかいイントネーションでした。

それは「インド」。


「Kevin Hall(ケビン・ホール)です。

お会い出来て良かった」と、私は答えました。


自分の目を引き付けた生地の色や

品揃えをいつぐらいからここに置いているのか

尋ねようとしたまさにその時、驚いたことに、

彼が私に何かを尋ねようとしてきたのです。


「そのピンは、何ですか?」と、彼は尋ねました。
私は、オーバーコートの襟に付けていた、

pewter pin(ピューター・ピン)に触れました。

(訳注:pewterとは「錫(すず)のことで、

pewter pinとは、錫製のピン・バッジやブローチのこと)


私はそれを外して、もっとよく見えるように彼に渡しました。

彼は親指と人さし指でそれを摘んで尋ねました。

「各々の手首が握られる2本の手とは、

どういう意味なのですか?」


「それは、お互いがお互いを持ち上げることによって

お互いを軽くすべきだという我々の義務を描いています」と、

私は答えました。

するとプラヴィンはピンを半回転させて、こう言いました。

「両方の手がそれぞれ助け合いながら、

同じように助けられているように見えます」


「あなたは、アーティストが何を伝えようとしていたかについて、

ちゃんと理解されていますね」と、私は答えました。

「Emerson(エマソン)はこのことを

『自分のことを二の次にして、

他の誰かを心から支援することが出来ない人にとって

この世での美しい代償の1つ』と言っています」


「私たちは、他の人のためにと望むものを

しばしば受け取ります」と、彼は付け加えると共に、

その微笑は彼の口の端を上へとカーブさせました。


彼の言葉がもっともらしく聞こえたので、

私はうなずきました。


「それで、このピン が・・・

これが、あなたがここウィーンにいる理由ですか?」
プラヴィンは質問しました。


私は彼がこの話題を続けたことに驚きましたが、

その問いかけには直接コメントしませんでした。


アメリカ東海岸のブックエンド的記念碑の

自由の女神に対応して、Viktor Frankl(ビクトール・フランクル)が

西海岸に建設しようとした

「The Statue of Responsibility」のミニチュア・レプリカだと、

私は説明しました。

(訳注:The Statue of Responsibilityは、直訳すれば

「責任の彫像」となる。東海岸の「自由」に対しての

「責任」ということで、「自由」であるということは

「責任」を伴うという意味。形状などは、下記訳注参照)


私はその前の週にビクトルの家族と共に過ごしていました。

そして、彼らにこの模型を見せながら、

彼のビジョンを完成させる計画を一緒に議論したのです。


(つづく)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


訳注:その1

pewter pin(ピューター・ピン)は、

主にイギリス製だが、材料が「錫」なので

使っているうちに色合いが渋く変色する。

男女共にアクセサリーとして使うが、

男性の場合は襟に付けたり帽子に付けたりすることが一般的。

日本でもネットショップで@千円程度で購入可能。


デザインの一例。



ウルペンのドリームピラミッド-ピューター・ピン:2

<画像をクリックすると拡大表示されます>



訳注:その2

エマソンは、ラルフ・ワルド・エマーソンのこと。
【Ralph Waldo Emerson】
哲学者、思想家、作家、詩人、エッセイスト。

(1803年05月25日 - 1882年04月27日)



ウルペンのドリームピラミッド-ラルフ・ワルド・エマーソン

<ラルフ・ワルド・エマーソン>


ラルフ・ウォルド・エマーソン、

ラルフ・ウォルドー・エマーソン、

ラルフ・ワルド・エマソン、とも呼ばれる。

英語では、エマーソンのエにアクセントがあり、

エマソンに近くなる。


アメリカ合衆国マサチューセッツ州ボストンに生まれる。

18歳でハーバード大学を卒業し

21歳までボストンで教鞭をとる。


その後ハーバード神学校に入学し、

伝道資格を取得し、牧師になる。

ピューリタニズムとドイツ理想主義の流れをくみ、

超絶主義を唱えた。
代表作は、「自然論」、「エッセイ集」、「偉人論」など。


訳注:その3

The Statue of Responsibility(責任の彫像)

これは、アメリカ合衆国の西海岸に建設されるよう

提案された巨大なモニュメント。


プロトタイプ(プロジェクト・アーティストである、

Gary Lee Price【ゲイリー・リー・プライス】によって彫刻)は

垂直に正しい位置に置かれる一対の握られた手から成る。

そして、自由とともに来る責任を象徴する。


「責任の彫像」は、ウィーン生まれの学者

Viktor Frankl(ビクトル・フランクル)によって最初に提案された。

彼は、「東海岸の自由の女神が西海岸の責任の像によって

補われなければならない」と、説明した。


プロジェクトは、非営利のResponsibility財団 によって

現在も管理推進されている。


2010年に、アーティスト、Gary Lee Price氏の故郷である

ユタ州議会は、このプロジェクトへの支持を

満場一致で可決した。


建設予定地の候補は、五つ。

ロングビーチ、サンディエゴ、ロサンゼルス、

サンフランシスコ(カリフォルニア)、またはシアトル(ワシントン)。


しかし、残念ながら、これらのどの都市でも

具体的な計画は進んでいない。


財団での計画は次の通り。


*完成時の高さ300フィート(自由の女神と同じ)
*記念碑の上の展望デッキへ通じる

内部の階段とエレベーターを設置
*西海岸の主要都市の港に建設
*完成後は、国立公園とする



ウルペンのドリームピラミッド-責任の像:1
<デザイン・スケッチ>




ウルペンのドリームピラミッド-責任の像:2
<建設後の周辺地域予想図>




ウルペンのドリームピラミッド-責任の像:3
<Gary Lee Priceと製作中のプロトタイプ>




ウルペンのドリームピラミッド-Viktor Frankl
<ビクトール・フランクル>


Viktor E. Frankl M.D., Ph.D.,

(ビクトル・E・フランクル医学博士 1905~1997)は、

世界的に有名な神経科医&精神科医で、

生前に32冊もの本を書いている。


第二次世界大戦中、ナチスによって

「強制捕虜収容所」送りとなり、最初の妻はそこで亡くなり、

そのことから

戦後、「自由には責任が伴わなければならない」

という考えを広めるようになった。


そんな彼が提案したのが、「責任の像」だ。


彼の書いた"Man’s Search for Meaning"という本は

世界中で900万部以上売れ、

米国議会図書館が選ぶ

「アメリカで最も影響力のある本ベスト10」に選ばれた。



参考文献:

Aspire: Discovering Your Purpose Through the Po.../Kevin Hall
¥2,038
Amazon.co.jp


例え10年前のことであろうとも、

「その人」のおかげで何かが上手くいったり、

勇気をもらったり、癒されたとしたら、

今、改めて電話で「感謝の気持ち」を

伝えよう。


遠方なら、手紙を書いてみよう。

近くなら、会いに行ってみよう。


そういう「感謝訪問」によって、

感謝のきっかけとなった出来事が

もう一度鮮明に思い出されるはずだ。


あなたがいくつであろうと、

今それをすれば、間違いなく

今の自分が幸せだということを

しみじみと実感できるだろう。


人は知らない間に誰かを支え、

同時に誰かに支えられていることを知れば、

生まれてきて良かったと思えるはずだ。


by ウルフペンギン