この記事は、中部大学教授、武田邦彦氏のブログから

記事の転載許可を得て、以前ネコペンギンのブログ

『幸せな成功のための魔法の杖』で連載しておりましたが、

2011年2月18日朝、アメブロによってそのブログが

突然削除されてしまい、ご紹介ができなくなってしまいました。


そこで、ウルフペンギンのこのブログで改めて

ご紹介していくことになりました。

なお、本文中の誤字脱字は訂正してありますが、

基本的に内容はそのままにしております。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


家に帰ると口うるさい女房がいるけれど、

愛人のところは居心地が良い・・・

とつい昔の粋な男は愛人の家に足を向けてしまう。

なんで、男にとって奥さんより愛人のほうが良いのだろう。


昔からなじみで心優しい飲み屋の女将さんも

「それで止めときなさいよ」とはいわない。

それに比べて女房は

「また飲むの!検査で引っかかるわよ!」といやな顔をする。


自分のことを本当に心配してくれる人をいやがる・・・

人の心はふわふわと飛ぶ綿のようだ。


人の関心を引こうと思ったらその場限りで、

相手の喜ぶことをすれば良い。

でも、本当にその人のことを愛していたら、末が心配だ。

元気で人生を全うしてもらいたいと思うと、

どうしても口うるさくなる。

それが「妻」と「愛人」の差だが、

しょうがない男の性(さが)で愛人の口車に乗ってしまう。


なぜ、「福島の人がかわいそうだ。

被曝など大したことはない」と言うのだろう。

なぜ、放射線の高いところで子供を育てている人を

そのままの状態で応援するのだろう? 


なぜ、汚染された土地で農作物を作る農家の人を

励ますのだろう? 

原発事故以来の私の疑問だったが、

最近、読者からのメールもいただき、

わかってきたような感じがする。


被曝による健康被害は5年、もしくは10年先にでる。

でも、地震と原発で心に傷を負った人を「かわいそう」と思い、

「そこにいても大丈夫だよ」と言えば、健康被害がでるまでは

相手はいい気持ちのなってくれるだろう。

「良薬口に苦し」だ。


「武田さんは冷酷だ。

福島の人をこれ以上、苦しめるのか!」と言われて、

正直、なにを言っておられるのかわからなかった。


「愛人の論理」なら、

福島の人の心を短期間だけ慰めることができるだろう。

これが今のNHKの路線だ。

最近、NHKのアナウンサーが

人の良さそうな顔をして「絆!」と叫んでいると、

「ああ、愛人路線だな」と思ってしまう。


奥さんの論理なら、

1平方メートル4万ベクレル以上のところに住んでいれば、

心配で心配でたまらないので、

一言、「逃げた方が良いですよ」と言うだろう。


どちらの論理もあり得るが、

私はこれからも「奥さんの論理」で行きたいと思う。


私は日本人だ。これからも日本に住むし、

子供たち(日本人のみんなの子供たち)も長く日本に住む。

私のことを「子供たちをダシにして」と非難する人もいるが、

そんなことは私にとって意味もないことだ。


瓦礫でもおなじだ。

瓦礫を心配するのはこれから10年先、20年先に

日本列島が汚染されたら子供にすまないと思うからで、

今だけを考えれば瓦礫を引き受けて

お金をもらった方が良い。


ちなみに、東京都が瓦礫を引き受けて処理するところは、

東京電力の子会社(95%株式保有)の

「東京臨海リサイクルパワー」だ。

原発を爆発させ、その瓦礫を処理して膨大な税金をもらう。

それが東電である。


ある自治体では、

市長がかつて社長を務めていた会社、

今は親族が社長を務めるところが

瓦礫を引き受ける決定をしている。


お妾さんでも口汚く奥さんをののしることは少ない。

それなのに、危険な地域に住んでいる人や

汚染した土地で農作物を作っている農家の方に移動を勧めると

バッシングを受け、瓦礫を引き受けない方が良いと言うと

罵倒される。


愛知県の幼稚園の給食から

実に1キログラム1400ベクレルという高濃度のセシウムがでた。

暫定規制値の14倍。

子供の安全をまもる値の32倍である。

それでも県は「健康に影響はない」と言っている。


「aijintdyno.20-(6:38).mp3」をダウンロード



(平成24年4月10日)

武田邦彦

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


日本人だけではないが、

誰もが「刹那的」になってきたような気がする。


ビジネスにおいてもしかり。

「今現在、とりあえず儲かればいいじゃないか!」とか、

「将来どうなるか分からないことに、

今現在、高額な安全対策費はいらんだろう!」などという

発想をする経営者が多くなってきた。


パナソニックは、いずれテレビの買い替えが一段落すれば

国内需要は急激に冷え込むと分かっていながら

目先の「エコポイント需要」のために

尼崎にプラズマ・テレビの工場を新設した。


その工場を誘致すれば、雇用の拡大と

将来の税収アップが見込まれるからと

尼崎市は税制面でパナソニックを優遇してまで

必死に誘致したのだ。


案の定、テレビ事業は急激に冷え込み

パナソニックは尼崎の工場を閉鎖する事にした。

すると、尼崎市が折角税制面で優遇した意味がないと

パナソニックに対して、優遇した分を返せと

訴えた。


パナソニックも尼崎市もどちらもアホである!

武田教授流に言えば、

両者とも愛人の声に耳を傾けたことになる。


目先の利益を追う経営スタイルは、

かつてはアメリカ型の経営スタイルと言われた。

株主からの追求をかわし、自らの給与とボーナスを

高額なものにするために、短期的な収益アップに

経営者たちは躍起になったからだ。


そんな経営者にとって、

10年後その会社がどうなっているかなんて

知っちゃこっちゃないというわけだ。


部下には、「愛社精神」を説きながら

彼ら自身は「愛社精神」の欠片も持ち合わせていない!

もちろん、10年後の自社の顧客がどうなっていようが

そんなことは関心外だ。


オリンパス、大王製紙、東電だけが問題なのではない。

パナソニックだけではない。

SONYも、シャープもそうだ。


「今さえ良ければ」という考え方ほど

将来を危うくするものはない。


10年後の新製品のために

技術者を新規に雇い、高額な研究開発費を

予算計上する。


その結果、世界初、世界最小、世界最軽量、世界最薄

などの製品が、いつも日本製品で占められていたのだ。


そんな当たり前のことが

日本を代表する大手家電メーカーでは過去のものと

なってしまった。


この国は、静かに崩壊しつつある。



by ウルフペンギン