この記事は、中部大学教授、武田邦彦氏のブログから

記事の転載許可を得て、以前ネコペンギンのブログ

『幸せな成功のための魔法の杖』で連載しておりましたが、

2011年2月18日朝、アメブロによってそのブログが

突然削除されてしまい、ご紹介ができなくなってしまいました。


そこで、ウルフペンギンのこのブログで改めて

ご紹介していくことになりました。

なお、本文中の誤字脱字は訂正してありますが、

基本的に内容はそのままにしております。


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「知に働けば角がたつ。情に棹させば流される」とは

夏目漱石の小説に有名なものですが、

確かに理屈を言うと角がたち、

そうかといって情に訴えると流されると言われると

さすが漱石!という感じです。


でも、私のこれまでの人生のいろいろな場面を振り返ってみると、

知に働いたから角がたつのではなく、

知に働いているのに情が絡むと角がたつという感じです。


たとえば、原発の問題で、原発推進派と反原発派の間で

「知に働いたこと」は無かった様に思います。

原発推進派は政府や権力者からの豊富な資金と

権限をもって強引に原発を進めようとしましたし、

それに対して反原発派も「知は要らない。運動だけ」

ということで反原発運動を繰り返しました。


どちらが正しかったかというと、

押し切ろうとした推進側が強引だったのが最初です。

本当は国民が主人公なのですから、

隠し事をせずに民主的手続きを貫く必要がありましたし、

反原発側も民主主義の手続きを求める必要があり、

その結果を尊重しないのは問題がありました。


日本では長く自民党が政権をとっていて、

原発についてはハッキリと推進でした。

ですから、全体として原発が推進されるのは

民主的な国家として適切だったと思います。

しかし、原発は作るけれど

「核廃棄物の貯蔵所」はどこにも作れないという状態でした。

奇妙なことです。


ある人がアパート経営を志して営業を開始したとします。

その時に「部屋は快適ですが、トイレがついていません」

と宣伝したら入居する人はほとんどいないでしょう。

家主にとっては部屋は貸してもトイレがなければ

ずいぶん、管理は容易になりますし、アパートも汚れません。


でも、「家賃は欲しいけれど、トイレを作るのはイヤだ」と言ったら、

アパート経営アドバイザーから

「それでは入居する人はいないでしょう。

お金は欲しい。損はしたくないでは・・・」というでしょう。

大人なら原発を作って電気を買うなら

核廃棄物の貯蔵所は必要です。


私は「トイレの無いマンション」というのは

反原発のスローガンとしては適切ではないと考えています。

原発はトイレがないからダメというのではなく、

原発も電気も核廃棄物貯蔵所も一緒に考えて

賛否を言うようにしないと、いかにも子供のようです。


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原発推進派と反原発派の人は

「知に働くと角が立つ」ということで、まったく議論をせず、

妥協点を探ることもしませんでした。


この過程で原発の安全議論は硬直化し、

「安全だ」という人と「危険だ」という人が感情的にいがみ合い、

それが今度の福島の子供たちを被曝させる

原因の一つになったのです。


かつての日本は社会が単純で、純情な人がほとんど、

それにまれに見るほど庶民のことを考えるお殿様・・・

という構成でした。

だから、政治も人生もお殿様に任せておけば良かったのですが、

今は違います。


選挙と代議員制度をとっている日本で、

「何が民意なのか?」ということもハッキリしていないと感じます。

歴代の首相の交代を見ても、

マスコミが世論を形成するために特定の人の人気をあおり、

その人が首相につくと突然マスコミが態度を豹変させて、

悪いことばかりを報道するというのが続いています。


首相を選ぶときも政策的ではなく、

選ばれた首相は直ちに考え方が変わるわけではないのに、

マスコミは1ヶ月も経つと叩きにたたきます。


今の原発再開問題も、

「原発を再開するべきかどうか」についての

エネルギー、環境、安全性、温暖化などの

主要な課題を議論することなく、

「ストレステスト」なる用語だけが宙に浮いて

活字が踊っているのでは、また同じことの繰り返しでしょう。


ここらへんで日本も

「知に働いても角がたたない」という社会風土を作りたいものです。


「takeda_20120212no.422-(9:36).mp3」をダウンロード


(平成24年2月12日(日))
武田邦彦


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「朝生」を見ていても、ニュース的ワイドショーを見ていても

原発問題について、推進派、反対派の知的バトルが

ほとんどなく、お互いが感情的に

言い合っているだけにしか見えない。


たまに、武田教授がテレビに出て何かコメントしても

わざわざ「これは一つの意見です」といったような

テロップを入れさせたりする・・・。


実は、武田教授が触れていない部分で

原発産業で多くの「暴力団」が利権を得てきた問題がある。


この問題についても、大抵のマスコミが

意図的に言及を避けてきた。

それは、あの朝日新聞西宮支局襲撃事件で明らかなように、

「暴力団」からのマスコミ従事者個人への攻撃を

恐れているからに他ならない。


知的武装と同時に肉体的にも武装しないと

マスコミは真相を語れなくなってしまった!


マスコミでほとんど取り上げられていない項目に

日本人が特許取得している、

直径1m程の「ミニ原発」の可能性などや

淡水藻を使ったバイオマス・エネルギー開発

などがある。


by ウルフペンギン