この記事は、中部大学教授、武田邦彦氏のブログから

記事の転載許可を得て、以前ネコペンギンのブログ

『幸せな成功のための魔法の杖』で連載しておりましたが、

2011年2月18日朝、アメブロによってそのブログが

突然削除されてしまい、ご紹介ができなくなってしまいました。


そこで、ウルフペンギンのこのブログで改めて

ご紹介していくことになりました。

なお、本文中の誤字脱字は訂正してありますが、

基本的に内容はそのままにしております。


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川のエネルギーは、

1)河畔の樹木を育てる、

2)川のサカナや藻を育てる、

3)土砂を運んで平野を作る、などに消費される。


日本の東京、名古屋、大阪をはじめとして多くの日本人は

川が作った平野に都市を造って住んでいる。


平野を作るのは洪水だ。

ときどき、とんでもない規模の洪水が起こり、

川上の岩石や土を運んで海を埋め立て、土の上に土をのせる。


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「地層」というものがある。

普通は地下にあって見ることが難しいが、

その土地が隆起すると地層が目に見えることがありし、

特に道路を造るときに山を削ると

その山肌には決まって地層が見える。



ウルペンのドリームピラミッド-地層


地層は川の洪水、風で運ばれた土、

そして火山の爆発などでできる。

下に行くほど年代が古いが、それは木の年輪のように

毎年、または何10年ぶりに洪水が起こった印(しるし)でもある。


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今度、タイで起こった洪水は

タイ政府の発表では「50年に一度」程度の大洪水であるという。

タイの首都バンコクは万国平野(チャオプラヤ平野)にあり、

もともと海だったところがメナム川(メナム・チャオプラヤ、

正しくはチャオプラヤ川)の洪水でできた平野にある。


(日本ではチャオプラヤ川を「メナム川」と読んでいたが、

これは日本人が「川の名前は?」と聞くと、

「メナム・チャオプラヤ」と言ったので、「メナム川」と思ったのだが、

実は「メナム」というのは「川」という名前なので、

メナム川というと「川川」ということになる。)


【上流の保水能力】


日本企業はタイに進出し、奥地の山林を伐採して木材を輸入し、

平野に組み立て工場(アッセンブル工場や縫製工場)を作った。


なぜ、タイの森林を伐採したかというと、

日本の森林を伐採すると環境運動家がうるさいからだ。


日本の環境運動家の多くは日本の森林さえ伐採しなければ、

木材や紙の消費量には関心がない。

木材や紙の消費量に変化がなく、

日本の森林を伐採しないということは、

外国の森林の伐採が増えていることは明らかだが、

それには興味がない。


【工場建設とリスク管理】


なぜ、タイの平野に工場を造ったかというと、

人件費が安いからだ。

日本の若者が就職先がなくてニートになろうが、

地方に工場ができなくても、

そんなことは日本の経営者には無関係である。

彼らは日本人である前に商人であり、

「商人である前に、日本の子供たちに

仕事を作らなければならない日本人の大人」ではない。


計算高い日本人経営者のことだ。

タイの洪水の歴史、バンコク平野の成因、

そして森林伐採によるチャオプラヤ川の上流の

保水力が低下していることもそろばん勘定に入っている。

だから、今回の洪水はあらかじめ、

彼らの収益計算には織り込み済みである。


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でも、災害による補助金も欲しいので、ビックリして見せ、

それをマスコミ報道部も追従している。

テレビのコメントを聞くと、「日本企業は歴史も、平野も、地層も

何も知らないバカ」であると言っているようなものだ。

それをさらに「温暖化が原因」といって

温暖化防止のお金を取ろうとしている乞食もいる。


タイの洪水の教訓は、日本人がより長期的に、より深く、

「子供たちに働く喜びをもたらすこと、そして世界の環境を守ること」

について考えなければならないことを示している。

それにはテレビも新聞も報道部の考察が

不足しているように感じられる。


(平成23年11月6日)

武田邦彦


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福島原発の事故もそうだが、多くの大事故や自然災害には

その原因を作った人間がいる。


福島原発の場合、歴史的な地震や津波を想定していては

その対策費が当然膨れ上がる。


ならば、想定範囲を低く見積もって、浮いた予算を

補助金や地元対策費、裏金などに回そうとした結果が

今回の大事故を招いたのだ。


タイの洪水も、マスコミ報道では

記録的な豪雨が今年続いたからだとされている。


しかし、福島原発同様、その原因を作った人間がいた。

日本の製紙メーカーや住宅メーカーだ。

彼らが、チャオプラヤ川の上流の森林を大規模に伐採したのだ。

その中には、同族経営でギャンブル狂いの会長を

誰ひとりとして止められなかった「大王製紙」も含まれている。


このことは、日本のマスコミは一切報道してない。


多くの自然災害には、

必ずその原因を作った人間がいることを

我々は忘れてはいけない。


by ウルフペンギン