- 007 白紙委任状/ジェフリー・ディーヴァー
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久しぶりの007だ。
もちろん、作者はイアン・フレミングではない。
イアン・フレミングは、007シリーズの長編を
1953年の『カジノ・ロワイヤル』から
1965年の『黄金銃の男』まで計12作品、
短編を8作品書いた。
イアン・フレミング亡き後、
様々な作家がその後のボンドを書いている。
先ず最初が、イギリスの作家キングスレー・エイミス。
彼がが未亡人の許可を得て1968年に
ロバート・マーカムの名で『007/孫大佐』を書いた。
シリーズ化される予定だったが、
評判は芳しくなく、シリーズ化には至らず、
これ一冊で終ってしまった。
次に映画、『007 私を愛したスパイ』と
『ムーンレイカー』の脚本家だった、
クリストファー・ウッドが、この2作品の
ノベライゼーションを担当した。
続いて、新作を手がけシリーズ化に成功したのは
ジョン・ガードナー。
1981年の『メルトダウン作戦』から
1996年の『COLD』(未訳)まで計14作品。
しかし、年々パワーダウンし、
『COLD』を最後に007作家を降りてしまった。
その次が、レイモンド・ベンソン。
彼は、1997年の『007/マイナス・テン』から
2002年の『007/赤い刺青の男』(日本が舞台)まで
計6作品を書いた。(他に短編が3作品)
そして、今回の『007/白紙委任状』の作者は、
ジェフリー・ディーヴァー。
007を手がけるのは今回が最初だが、
シリーズ化されるかどうかは不明。
彼は、昨年の秋に来日し、
その間にこの作品を書き上げたらしい。
Jeffery Deaver(ジェフリー・ディーヴァー)は、
1950年生まれの61歳。
弁護士の資格も持っている元記者だ。
頭頂部がすっかり禿げ上がっている。
彼の名前が世界中に知れるようになったのは、
四肢麻痺の科学捜査の天才、
リンカーン・ライムが登場する
『ボーン・コレクター』からだ。
これはシリーズ化され、マット・デイモン主演で
映画化もされた。
では、最新の007 ジェームズ・ボンドは
どう描写されているのだろうか?
イアン・フレミングの原作当時から
そのまま生き続けていたとしたら
ボンドは間違いなく80歳代だ。
それでは、アクションもベッドシーンも
なくなってしまうので、この新作では
30歳代前半となっている。
当然、何故スパイ(諜報員)になったのか
という理由も、今の時代に合わせて
新たに設定し直されている。
身長183cm、体重78kg、髪の毛の色は黒。
右頬に長さ8cmほどの傷跡。
元英国海軍予備軍中佐。
アフガニスタンでの軍功で
コンスピキュアス・ギャラントリー・クロス勲章を
授与。
現在の肩書は、従来のMI6ではなく、
イギリス企業の海外進出や投資を支援する
政府機関、”海外開発グループ(ODG)”の
セキュリティ・アナリストとなっている。
もちろん、007という暗号名はそのままだ。
そのため、イギリス以外の海外では
英国政府から「白紙委任状」を授与された
立場として、必要とあらば殺人も不問に付される。
しかし、逆に英国国内では
そういうわけにはいかないことを
この小説ではしっかり説明されている。
舞台も、セルビアで始まり、
あのドバイや南アフリカなどへ続いていく。
もちろん、白紙委任状のある海外での
追跡やアクションも
しっかり盛り込まれている。
登場人物の中には、おなじみの
CIAのフェリックス・ライターやマニーペニーなども
出てくるので、つい読んでいてニヤっとしてしまう。
私は、子どもの頃、
映画「ロシアより愛をこめて」(公開当時の題名は
『007 危機一発』だった。
正しくは、「危機一髪」とすべきところを
当時のユナイト日本支社の宣伝総支配人だった
水野晴郎が意図的に当て字にしたらしい。)
を観て、魚料理には「白ワイン」だということを
知った思い出がある。
さて、今回の敵は
世界的なリサイクル企業、
グリーンウェイ・インターナショナルの社長、
セヴェラン・ハイトだ。
なぜ、彼がボンドに敵対するのか?
彼の陰謀とは?
さて、それは読んでのお楽しみ・・・。
しかし、厳しい「007おたく」の期待を裏切らない
内容だと思う。
ジェフリー・ディーヴァーは、他のシリーズ同様、
しっかりと伏線を張った上でどんでん返しを
用意してくれている。
物語は日曜日に始まって金曜日に終る。
この『007 白紙委任状』では、
ご本家のイアン・フレミングに
負けじと劣らず、細部の描写が生きている。
機会があったら、次回、少しそのあたりを
ご紹介したいくらいだ。