アメリカ人のナポレオン・ヒルが書いた成功ノウハウ本、

『Think and Grow Rich!(思考は現実化する)』、

『The Law of Success(成功法則)』などは、

世界的ベストセラーで、中でも

『Think and Grow Rich!(思考は現実化する)』は、

これを読んで影響を受けたという成功者も多く、

未だに世界中で売れ続けている。


但し、何冊も出版されている、

ナポレオン・ヒル名義の本の大半は、

彼の死後に「ナポレオン・ヒル財団」が

まとめた物が多く、ナポレオン・ヒル自身が

生前に書いた本は、実際は上記以外に

冊子を含めて2,3冊程度しかない。


日本でも彼の成功法則を学べるという

高額(100万円以上する)通信教育講座も

結構受講者が多い(取次代理店も儲けた)。


そんな人物でありながら、本人の自伝はなく

(原稿は確認されているらしいのだが、

どういうわけか出版されていない)、

利害関係のない第三者による伝記もない。

かろうじて、唯一ナポレオン・ヒル存命中に

彼の秘書だったMichael J. Ritt, JR.が

1995年7月に知人のジャーナリストと共同で

書いて出版された、

『A LIFETIME OF RICHES』があるだけだ。


この本は何故か日本語訳も出版されず、

原著も一時期廃刊になっていたが、

最近になってようやく再版されたぐらいだ。


日本人でナポレオン・ヒルの本を読んだ人は多いが、

本当の彼(生い立ちや四回もの結婚や、仕事上で

何度も失敗したり借金を繰り返したことなど)

について知る人は少ない。


私の勘だが、彼について本当のことを

知られたくないと考えている人たちがいるようだ。


私が調べた範囲では、

ナポレオン・ヒルとアンドリュー・カーネギーが

並んで撮られた「ツー・ショット」の写真は残っておらず、

二人の間でやりとりされたはずの手紙も

一通も残っていない。

(著名人では、エジソンとヒルの不自然な

ツー・ショット写真だけは残っている)


さらに、アンドリュー・カーネギーの日記にも

只の一行もナポレオン・ヒルについては

書き残されていない。


また、様々な著名人にアンドリュー・カーネギーが

ナポレオン・ヒルを紹介した手紙

(ナポレオン・ヒルの本では、その数500通!)

すら、未だに発見されていない。


また、アンドリュー・カーネギーと

ナポレオン・ヒルの両者の「成功」に対する考え方

には、微妙な違いがありながら、

ナポレオン・ヒルは、一切そのことに触れていない。


では、本当のところは、どうだったのだろうか?


パソコンもインターネットも携帯電話もない時代、

記録は手書きかタイプライターしかなかった。

(レコード盤へのレコーディングという方法は

あったかも知れないが・・・)


ならば、残された記録を丹念に追っていけば

ある程度、本当のナポレオン・ヒルに

近づけるのではないだろうか?


彼は実に要領のいい人物だったが、

その「成功ノウハウ」を自分の結婚生活では

全く活かしきれず、四度も結婚をしている。

(最初の妻の実家から借金さえしている)


彼は、多くの人々に、金銭的にも、仕事でも、

そして家庭生活でも成功する(ストレスのない)よう

人生を送るべきだと説きながら、

彼自身の家庭生活はうまくいっていなかった。


それは、単に巡り合わせが悪かっただけなのか?

彼に人を見る目がなかったのか?

あるいは、単に女性に弱かったのか?

それとも、彼の性格に起因していたのか?


その辺りを、彼の出生から

少しずつ年代順に追って検証してみたいと思う。


ちなみに子ども時代の彼は、

ピストルが大好きな近所でも有名な悪ガキで

自分専用の6連発銃を所有し、

裏山などでいつもぶっ放しては

野生の動物を殺していたというくらい、

相当の悪ガキだったのだ。


そんな彼が変わったのは、

実母が亡くなった後の継母の愛情と教育の

おかげだったのだ。


彼女がナポレオンの銃を取り上げる代わりに

与えたのが一台のタイプライターだった。

それから、彼は銃をタイプライターに代えて

精力的に「書く」ことに没頭するようになる。


さらに付け加えると、

ナポレオン・ヒルが生まれ育った時代のアメリカは、

日本では明治時代から終戦後の

昭和末期までに及ぶため、

彼の生涯を追うことは同時にアメリカの近代化の

波を追うことにもなる。


もちろん、そこには彼のウソと真実が見え隠れする。