この記事は、中部大学教授、武田邦彦氏のブログから

記事の転載許可を得て、以前ネコペンギンのブログ

『幸せな成功のための魔法の杖』で連載しておりましたが、

2011年2月18日朝、アメブロによってそのブログが

突然削除されてしまい、ご紹介ができなくなってしまいました。


そこで、ウルフペンギンのこのブログで改めて

ご紹介していくことになりました。

なお、本文中の誤字脱字は訂正してありますが、

基本的に内容はそのままにしております。


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福島原発事故が起こってから、

地方交付税と関係があるのかも知れませんが、

本来なら市民を守る立場の自治体が、

それまで市民を放射線被曝から守ってきた

さまざまな法律や前提に違反して、

「被曝は大したことはない」というキャンペーンを続けています。


今回、取り上げるのは「放射性物質の海洋投棄」という

これもまた破天荒な決定をした横浜市を取り上げます。

横浜市は将来の日本の宝である児童の給食に

汚染された牛肉を出し、「汚染されていたことは確かだが、

児童に影響はない」として謝罪もしていない自治体です。


横浜市が最近、大きな税金を使って作った

「広報よこはま 放射線特集」に放射線の解説を載せましたが、

その内容は「いかにして市民を被曝させるか」という内容を持ち、

「どうせ、市民は法律も科学も知らない」という前提に

立っているように見えます。

おそらく裏の目的は「経済とお金」にあると思いますが、

横浜に長く住んでいた私にとっては耐え難いことです。



ウルペンのドリームピラミッド-広報よこはま:1

<画像をクリックすれば拡大表示されます>

この図は横浜市が「食品の暫定基準を守れば安心だ」

ということを示すために広報よこはまに示している図で、

食品に含まれるセシウムの暫定基準値を合計しても

1年間に5ミリシーベルトになるに過ぎないと強調しています。


この図では、まず第一に

「セシウム」のみで食品から被曝する上限を

「5ミリシーベルト」としています。

福島原発から出た放射性物質は

ヨウ素、セシウム、ストロンチウム、プルトニウムなどがあり、

特に最初の段階では放射性を持つヨウ素が多いのです。

それにも関わらず「セシウム」だけで

5ミリシーベルトになっています。


また、空気中や地表に落ちている

放射性物質からの空間線量は

毎時0.2マイクロシーベルトを超えるところが多く、

0.5マイクロシーベルト以上のところも散見されます。

0.5マイクロというと年間で4.4ミリシーベルトになります。


また、運動をする子供などは土ホコリを吸って、

空間線量からと同じような被曝をするでしょう。


それも入れると4.4+4.4=8.8になります。

つまり「食材からのセシウムの被曝だけで5ミリ」ということは、

セシウム以外の放射性元素を全部足しても

セシウムだけとしても(このような楽観的な推定は

毒物ではしてはいけないことになっていますが、

ここでは横浜市の考え方にそって計算します)、

{食材からのセシウム(5ミリ)+セシウム以外(5ミリ)+

外部被曝(4.4ミリ)+土ホコリなど呼吸から(4.4ミリ)}で

合計18.8ミリ、つまり約20ミリシーベルトに達します。


つまり、どう見ても1年間10ミリから20ミリの被曝は

問題なしとしています。

ところが、同じ広報よこはまの中には、次

のような図があります。

ウルペンのドリームピラミッド-広報よこはま:2



<画像をクリックすれば拡大表示されます>




ここでは「一般公衆の年間被曝限度」を

ハッキリと1年1ミリシーベルトとしています。

同じ広報に、一つは5ミリ(実質10ミリから20ミリ)、

一つは1ミリと違うのですから、

よほど横浜市民はバカにされたものです。


また、どうして横浜市が勝手に

1ミリを20ミリまであげることができるのでしょうか? 

この矛盾を突かれないために横浜市では

もっとも権威のある病院のお医者さんのコメントを載せて

「心配ない」と言わせています。


でも、お医者さんももう少し慎重に取り組んで貰いたいものです。

というのは、お医者さんは医療被曝についての

決定権を持っていますが、一般公衆の浴びる放射線については

コメントする権限自体を持っていないのです。

医療被曝がお医者さんに任されているのは

「お医者さんが患者の容体を監視している」という

条件がついているのです。


それに対して一般公衆は

常に病院にかかっている訳ではありません。

だから、一般公衆被曝についてお医者さんがコメントするには

前提を変えなければならないからです。

日本人が素朴に信頼しているお医者さんを使って

子供の被曝を増やそうとしているとしか思えませんし、

お医者さんもご自分の権限を越えたところについての

コメントは控えて貰いたいものです。


もう一つ、説明が間違っています。

「それらを毎日、1年中食べ続けても5ミリ」ということですが、

食品はもともと1年中、食べ続けます。

今週は食事をとったから来週は絶食する

などという人はいないのです。


食材の基準値というのは標準的な食事を仮定して、

それを毎日食べても大丈夫ということで設定されます。

「食事を1年中、食べ続けることはない」というこの文章は

実に奇妙です。


間違った説明で子供が被曝していくのですから、

耐え難いことです。


(平成23年9月14日)

武田邦彦


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横浜市に住んでいる子どもたちにとって、

横浜市長は悪魔としか言いようがない!


by ウルフペンギン