それでも、
競争が基本的な人間の衝動であるという概念は、
科学的観点からも私にとっては、
意味をなしませんでした。
ここでは
最先端の科学について紹介していきますが、
多くの専門分野(神経科学と生物学から
量子物理学まで)からの最新の研究結果は
自然の最も基本的な動因(動機付けの要因)が
古典的な進化論が維持するような
競争ではなく、統一的なものであることを
示唆しているのです。
私が今までに見てきた
あらゆる生き物(人間も含めて)を対象とした
非常に多くの新しい研究によると、
生き物には、実質的に他のどんな衝動
(パーソナル・サイエンスでさえ)よりも
コネクション(相手との繋がり)を求めるように、
予め((DNAに)実装されているということです。
さらに、お互いが生き残るために
背を向け合っていかなければならないように
別々に分けられたせいなのか、
生きて行くには何かが欠けている場所としての
宇宙の姿を維持していることも
最新の研究では証明されているのです。
(訳注:別れた片方の魂を求めることが
最愛の伴侶探しとも言われている)
私たちは皆、誰もがまさにそれこそが
生命なんだと思い込みました。
さらにまた、それは
我々の人生観だったのかもしれませんが、
私の身近にいる一匹の動物、我が家の飼い犬、
Ollie(オリー)にとっては
間違いなく真実ではありませんでした。
オリーの行くところはどこであれ
彼には私利私欲というものが
見当たりませんでした。
彼は人間のためには多くの時間を
とってくれようとはしませんが、
彼は散歩で出会うあらゆる犬に親切なのです。
彼は、我が家の隣人のメスの飼い犬の、
アフェンピンシャー(*)のために
自分の餌であるTボーンをフェンスの下から
時々押しこんでやっていたのです。
(訳注:Tボーンは、骨付きリブロースのことで
骨がTの字になっているところから
こう呼ばれている**)
実際、彼はアフェンピンシャーのために
最も大きい骨を取り置いて保存していたのです。
Tボーンとのオリーの関係は、
利己的に行動するよう義務付けられているという
あらゆる最新の生物学への挑戦としか思えません。
Tボーンの出来事以後も、
血筋を延長する可能性はありません。
(訳注:交尾しようとはしなかったということ)
それでも、Tボーンがなかったときは、
オリーは、我が家の台所のゴミ箱を漁り、
中から食べ残してた鶏肉を丸ごと
引っ張りだしては、彼女に
御馳走までしていたのです。
そして、彼専用の餌入れボウル、
彼のブタの耳
(犬の餌で乾燥した豚の耳)(***)や
彼専用のおもちゃに、彼女が触ったり
かじりついたりするのを自由にさせていたのです。
オリーが彼女と遊ぶときは、
Tボーンが彼より小さいとは言え、
彼は彼女と一緒にゲームをし続けるために
しばしば、ゲームで彼女に勝たせるのです。
(訳注:餌が小さな肉片でも
オリーは自分の取り分よりも多く、彼女に
あげていたということ)
私は、基本的なことを自問自答し始めました。
「こうなるべきことだったのか?」
「私たちって、お互いそれほどまでに
競争すべきものなのか?」
「これは、動物と人間の生物学において、
それぞれ固有の問題なのだろうか?」
(訳注:つまり、オリーだけがってことなのか?)
「どうやって、こんな風になったんだろうか?」
「それに、私たちがこうならないとしたら、
私たちはどうなるんだろう?」
例の舞台稽古以来、いくつかの点で
私は、自分たちが
社会契約(****)を破棄し、
一緒に集う方法を忘れたと、思っていました。
途中で、私たちは、どうやったらいいか
忘れてしまったのです。
(つづく)
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*Affenpinscher(アフェンピッシャー)
ドイツ原産のネズミ狩り・愛玩用の犬種。
犬種名はドイツ語で「猿顔のテリア」という意味があり、
別名はアッフェンピンシャー、
モンキー・テリア(英:Monkey Terrier)、
ブラック・デビル(英:Black Devil)などがある。
性格は普段は物静かで忠実、しつけもしやすいが、
敵と思った相手に対しては激しく吠えたて
猛然と立ち向かっていく勇敢な一面も持つ。
体高25~30cm、体重3~4kg。
日本では一頭約30万円程。
**Tボーン(T-bone)
***Pig Ears(豚の耳)
****社会契約(Social Contract)
政治学、法学、哲学等で使われる用語で、
ある国家内で、その国家とその市民との関係についての
理論上の契約をいう。
参考文献:”THE BOND”
The Bond: Connecting Through the Space Between Us/Lynne McTaggart
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”Bond”は、あの007James Bondの”Bond”と
同じ綴りだが、
ここでは「絆(きずな)」という意味で使われている。
他にも名詞としては、次のような意味がある。
a 縛る[結ぶ,つなぐ]もの 《ひも・なわ・帯など》.
b [通例複数形で] 束縛,拘束; かせ.→
c [しばしば複数形で] 結束; きずな,ちぎり,縁.→
2 契約,約定,盟約; 同盟,連盟.→
3a (借用)証書,証文; 公債証書,債券,社債.→
b 保証人.
c 保証.
d 保証[保釈]金.
4 【建】 つなぎ,(石・れんがなどの)組み積み,畳み式.
5a [種類・個々には]接着剤,ボンド.
b [a ~] 接着(状態).
6 【化】 原子の手,(1 原子の)結合,価標.