この記事は、中部大学教授、武田邦彦氏のブログから

記事の転載許可を得て、以前ネコペンギンのブログ

『幸せな成功のための魔法の杖』で連載しておりましたが、

2011年2月18日朝、アメブロによってそのブログが

突然削除されてしまい、ご紹介ができなくなってしまいました。


そこで、ウルフペンギンのこのブログで改めて

ご紹介していくことになりました。

なお、本文中の誤字脱字は訂正してありますが、

基本的に内容はそのままにしております。


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第一回に日本の電気代が異様に高いのは、

電気会社がサボって「稼働率」が低いまま、

工夫をしていなかったことを明らかにした。


第二回に東電が計画停電をしたのは、


1) 発電量は十分にあるのにジェスチャーだったこと、


2) 「津波で原発がやられた」というのはウソで、

「地震で火力発電がやられた」のが主たる原因だったこと、


であり、言いたくないことだが、

東電は芯からウソつき体質なのだろうか?


もし、東電が事実を言えば、次のようになる。


「福島原発1号機から4号機では地震と津波で、

大量の放射線漏れの事故を起こし、

大変、申し訳ありませんでした。


この事故で現実に電気が作れなくなったのは、

弊社(東電)の発電量のわずか3%です。


しかし、火力発電も含めて

地震対策ができていなかったこと、

設備はあるのですがそれを十分に活用していなかったこと、

から、電気が足りなくなる可能性もあります。


今のところ、お客さんが少し節電していただければ、

2倍の発電量を確保できる見通しです。」


正直に言った方が、良かったように私には思えます。


・・・・・・


ところで、次の段階に進む前に、

少し「電気のこと」を整理して起きたいと思います。


まず、日本は経済的に高度成長を遂げてきましたが、

その中でも特に電気の消費量が増えました。



ウルペンのドリームピラミッド-電力変化:1
<画像をクリックすると拡大表示されます>


グラフからわかるように、昭和27年を1(イチ)とすると、

平成20年頃には、GDPは13倍にもなりましたが、

電気の消費量はさらにその3倍の36倍にもなっています。


私たちもずいぶん、電気をふんだんに使った

贅沢な生活になったものですね。


・・・・・・


かつて暖房といえば石油ストーブ、冷房はほとんど無し

というのが日本人の生活でしたが、

それが徐々にエアコンに変わり、

さらには「オール電化住宅」になったのです。


石油ストーブなら石油の持っている熱を

100%使えるのですが、

電気は作るときに重油の熱の3分の1しか電気が起こらず、

さらに送電や変電の時にロスをするので、

現実には設備を作るときに使う石油も含めると、

電気というのは、10%の熱が使えれば良い

というほどのものです。


でも石油を運ばなくても良いこと、

ヒートポンプなどの高度な技術が使えること、

それに部屋がクリーンで火災の心配が無いことなどから、

所得が増えるとどうしても人間は電気になってしまいます。


・・・・・・


ところでさらに「季節」と「時間」によって

どのぐらい電気の使い方が変わったかを

東電の資料で見てみましょう。

まずは季節の変動からです。



ウルペンのドリームピラミッド-電力変化:2
<画像をクリックすると拡大表示されます>



昭和43年には東電は

1000万キロワットを発電すれば良かったし、

季節毎にほとんど変化はありませんでした。


夏は冷房を使わず、団扇、打ち水、風鈴などで

涼しさを求め、冬は石油ストーブを使っていたからです。

それでも「熱中症」のようなものは

ほとんどありませんでした。


一つには自然の中での生活で、

汗腺が発達して自分で体温の調整が出来たこと、

都市の設計が亜熱帯に近い日本にあったものだった

ことなどが上げられます。


今では、

エアコンがなければ生活が出来ない感じですし、

「熱中症」になる人も増えました。

現在では気候の良いときには4000万キロ、

気候が悪い時期には6000万キロにもなっています。


それでも電気会社は、オール電化、

電気自動車などさらに電気を作ろうとしていたのです。



ウルペンのドリームピラミッド-電力変化:3
<画像をクリックすると拡大表示されます>


次に、一日の中での電気消費の関係ですが、

このグラフのようにかつてはかなり低かった電気の消費量が

ドンドン増え、今では7月には

「夜間が3000、昼が6000」という状態です。


昭和の間は、電気を使うと言えば

家電製品の普及でしたが、

平成になるとエアコンが増え、

昼間の電気は3000から6000に跳ね上がっています。


・・・・・・・・・


一見して奇妙に思うかも知れませんが、これは


「エアコンの技術開発」が進み、


「安くて省エネタイプのエアコンができた」ことによります。


新技術ができることは良いのですが、

それによってエネルギー消費量が増えるというのが

産業革命以来の私たちの社会で、

エアコンの値段が高く、電気代が高いと

誰も買わないのですが、

エアコンが数万円で買えるようになり、電気代も安くなると、

多くの人がエアコンを使い、

その結果としてさらに電気の消費量が増えるのです。


「一つの製品の省エネは、日本全体の増エネになる」


というのは学問的な真実です。


みんなが電気を使うようになった、

夏にエアコンがなければ生活できないようになった、

都市の設計がエアコンが前提になった、

太陽活動が盛んになり夏が暑くなった・・・などが原因して、

今では東電は6000万キロを準備しなければならなくなったのです。


(平成23年7月02日 午前8時 執筆)

武田邦彦

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当たり前のことだが、

7年前の古い液晶テレビを最新の「省エネ」液晶テレビに

買い換えただけなら、

文字通り「省エネ」かも知れないが、

安くなったからと言って、各部屋に一台増設すれば

結局は、「増エネ」になってしまう可能性がある。


中でも、エアコンは特にその可能性が高い。


昔は、一家に一台のエアコンが

リビングに付けられたものだが、

価格の下落と共に、子ども部屋、寝室と増えていき、

今では全室エアコン付きは普通になってしまった。


その結果、都会はエアコンの室外機からの放熱で

夏場は「ヒートアイランド現象」となり、

都会の平均気温を確実に高くしてしまった。


「便利さ」を手に入れたことによる、

副産物の「不都合さ」と言えるだろう。


「電力不足」は、明らかに電力会社のウソだが、

効率の悪いエネルギー利用自体も大きな問題なのだ。


国や首長が「安全だ」と言うのなら、

消費電力の大きい都会にこそ

「原子力発電所(別名:核燃料発電所)」を作るべきなのだ。


東京湾、伊勢湾、大阪湾などにだ。


それが、どうしても出来ないというのなら、

やはり原発は今現在の人間の能力では

完全にコントロール出来ないシロモノということになり、

計画的に廃炉としていく必要があるだろう。


都会に設置して不安なモノを「安全です」と言って、

過疎対策という「あめ」で地方に設置するのは

根本的に、論理的に破綻していることなのだ。



by ウルフペンギン