この記事は、中部大学教授、武田邦彦氏のブログから

記事の転載許可を得て、以前ネコペンギンのブログ

『幸せな成功のための魔法の杖』で連載しておりましたが、

2011年2月18日朝、アメブロによってそのブログが

突然削除されてしまい、ご紹介ができなくなってしまいました。


そこで、ウルフペンギンのこのブログで改めて

ご紹介していくことになりました。

なお、本文中の誤字脱字は訂正してありますが、

基本的に内容はそのままにしております。


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この夏は電気が足りないと言う。


でも、どうもうさんくさい。


一説では


「原発を再開したいから、

電気が足りないと脅しているだけだ。

寝苦しい夜を過ごさせて原発賛成にするためのあくどい宣伝だ」


とも言われる。


東京電力は日本の代表的な企業だから、

本当はこんなことを言われるようなダメ企業では困るのだが、

なにしろ


「東電はウソを言う企業だ」


というのは、原発事故以来、

常識になっているので仕方が無い。


そして、福島原発事故の直後、

東京電力が「計画停電」というのをやり、大きな影響がでた。


電気機器をつかって患者さんの命を守っている病院や、

1度止めたら製品がダメになってしまう工場などは

ビリビリしていたものだ。


・・・・・・


明らかにおかしい。


東京電力がもっている発電の能力は、6300万キロワット。


これに対して計画停電が実施された3月14日の電力消費量は、

たった2800万キロワットだった???


それで「足りない」??? ???


・・・・・・


何かを製造する「製造業」では、

設備をどのぐらい使うかという「稼働率」は、

収益の死命を制するほど大切なもので、

多くの会社は設備稼働率が80%以下にでもなると、

経営はピンチになる。


ところが、


「原発事故で電気が足りなくなるので、

計画停電をする。国民は協力しろ」

と東電が言った日の設備稼働率は、実に44%!!


さすが東電だ。

これまで、営業成績が悪くなると、

電気料金を上げれば良いという気楽な商売をしてきた。

事実、日本の電気料金はほぼ世界一、

アメリカの3倍とされる。


それでもお客さんから文句は来ない。

もし文句を言えば

「じゃ、電気を売らない」と言えば、それで良い。

「やらせ番組を放送しているから、受信料を払わない」

と言う視聴者を不払いで

裁判に訴えるというNHKと同じ体質だ。


・・・・・・


稼働率が低い理由は、

真夏の昼間に多くの人が「エアコン」を使う。

かつてはこれに「高校野球」が加わってテレビを見るので、

さらに電気が必要になる。


だから、半分しか使わない

春の稼働率が44%になるのは仕方が無いというのが

「東電の言い分」である。


もちろん、東電の言い分はウソだ。


ウソをつく人というのは、

「原子炉が壊れているか?」

ということだけウソをつくのではない。


「原発事故が起こったから、電気が足りない」

というのも、

「日本は質の良い電気を供給しているから、電気代が高くなる」

というのも、全部、ウソなのである。


電気の蓄積方式(集中蓄積、分散蓄積)、

発電方式(設備費と燃料費の関係)、

電気機器会社とタイアップした電気の平準化システムなど、

設備の稼働率を上げるためには、

やることは山ほどあるけれど、このような「面倒な事」より

「たっぷりと発電所を作って、時々、動かしたらよい」

という方が楽だ。


・・・・・・


稼働率が下がり、経費が嵩むようになれば、

電気代を上げればよい。

簡単で誰にも文句を言われない。


それに対して、電気が足りなくなると、文句を言われる。


だから、発電所をたっぷり作って

悠々と生活した方が良いと思うのは

お公家さんの東電の経営者としては当然だからである。


電気会社のシステムが悪い。

個別に「これもすればよい、あれもすればよい」と言っても、

巧みに言い訳されて終わりだ。


こんなことは個別にいくら言っても、

ケンカになるだけで電気代が安くなることはない。


でも、もし東電に競争相手が居たら、

設備の稼働率はたちまち80%になり、

電気代は半分になるだろう。


その点では技術も大切だが、

安全を守り、電気代を安くするには、

「電気を供給する社会的なシステムに競争原理を入れる」

ことも重要であることが判る。


(平成23年6月29日 午前10時 執筆)

武田邦彦


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タクシー会社が、自社のタクシーが何台も車検中で

お得意様からの送迎車の要請に応えられなかったら、

タクシー会社は、顧客に「利用を控えてくれ」と

頼むだろうか?

そんなことすれば、間違いなく、

そのお得意様は他社へ頼むことになるだろう。


あるいは、航空会社が

自社の飛行機が続けて故障したので

同型機を総点検するので、

離発着の便も減らさざるを得ないので、

今まで出張の度に乗って「マイレージ」を

貯めておられた利用客に、

午前中の当社の便のご利用を控えるよう

お願いするだろうか?

そんなことをすれば、

クレームが殺到するだろう。


マスコミが率先して、「その会社」のサービスの

利用を控えるよう、購読者や視聴者に

わざわざ訴えるだろうか?

皆で利用を控えて、その不便さを分かち合いましょう

なんて言うだろうか?


逆に、顧客サービスを逸脱した会社に取材して、

こういう事態をどうして避けられなかったのかと

その会社を批判するに違いない。


なのに、電力会社だけは勝手が違うらしい。


あらゆるマスコミが、お役所が、

揃いも揃って、問題の東電の発表したデータを

使って「でんき予報」だなんていうモノを

紹介している。


本来ならば、別の第三者機関にでも

その電力使用データの真偽を確認させることを

真っ先にやるべきではないのか?


この国は、少しずつ崖っぷちから

滑り落ちようとしている・・・。


足元の土や石は、

こんな風にして少しずつ少しずつ崩れていくのだ。



by ウルフペンギン