”THE NEXT DECADE”(次の10年)


The Next Decade: Where We’ve Been . . . and Whe.../George Friedman
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この本の著者、

George Friedman(ジョージ・フリードマン)は、

1996年に「インテリジェンス企業ストラトフォー」

を立ち上げ、アメリカ政府や多国籍企業などに

情報提供とアドバイスを行ってきた。

「予測」は、そのままにしておいたら「予測」のままで

終わってしまうのだが、誰かがその「予測」を

実現しようとパワーを行使し始めると、

それは単なる「予測」ではなくなり、

それは「目標」となる。

そういう観点から、この本の各章の要点を

読んでみて欲しい。

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1.アメリカは、1991年に起きたソ連崩壊により、

意図せずして世界帝国となったが、それは

政治力というよりも軍事力と経済力のおかげだった。


この結果、アメリカは大統領の指揮下で

その持てるパワーを秩序を持って行使しなければならない。


そのため、次の10年で、世界中で勢力均衡に関与し、

冷戦体制を脱却して新たな同盟関係及び国際機構を

構築することになるだろう。



2.アメリカは帝国となったがゆえに、

共和制の存続を脅かされている。


理想的な秩序維持のために、アメリカは

帝国ゆえにその力を行使するとしたら、

その最高権力者たるアメリカ大統領には

「徳」が求められる。



3.2008年に起きた金融危機は、

過去に同様のことが起きており、

その都度国家と市場の境界が引き直されてきた

という事実がある。


この金融危機は、結果的にアメリカの支配というものを

世界に見せつけることになってしまった。


この流れから、次の10年では、

世界的に経済ナショナリズムが高まるだろう。



4.アメリカは、9.11テロ事件以降、

長年の勢力バランス政策を決定的に見失ってしまった。


アヒガニスタンとイラクでの戦争により、

イランの強大化を招き、この地域での

パワーバランスを崩すという、地政学的に最大の失敗を

犯してしまった。


この結果、次の10年で、アメリカはこの余波に

苦しめられることになる。



5.アメリカは対テロに執着しすぎて、

アフガニスタン、イラクと戦争に多くの資金や資源を

投入してしまった。


この反省から、アメリカは、対テロ戦争への深入りから

脱却し、経済的にバランスの取れた戦略に

方向転換する。



6.アメリカとイスラエルの協力関係は、

アラブ世界の反米主義を生んだのではなく、

逆に反米主義から生まれた。


したがって、アメリカとイスラエルが

お互いを必要とする「相互扶助」の時代は終わった。


次の10年で、アメリカは

イスラエルから密かに距離を置くようになり、

巨大化したイスラエルを牽制(けんせい)するようになる。



7.アメリカは、早急にアフガニスタンでの戦争を終結させ

パキスタン軍への援護と援助に力を入れるようになる。

将来、インドを抑え込むのにパキスタンの圧力が

必要となるからだ。


アメリカは自ら犯した戦略ミスで、イランを強大化させたことで

結局は、10年以内にイランと和解協定を結ぶ。


長期的にイランとイスラエルの対抗勢力になるのは、

トルコである。



8.アメリカが、イラクとアフガニスタンに気を取られた隙に

ロシアが台頭してきた。


ロシアは、長期的には弱体化するが、

当面はアメリカにとっては大きな脅威である。


次の10年で、アメリカはロシアとドイツの接近を阻止し、

対抗勢力としてポーランドの強化を図る。


さらに、グルジアとコーカサスからの撤退を交換条件に、

アメリカはロシアに譲歩を求める。


9.2008年の金融危機がきっかけとなって、

EUに亀裂が入り、ナショナリズムが噴出。


9.11テロ事件後は、NATOとアメリカが

軍事協力の面で利益が衝突し、戦略面で分裂し出した。


次の10年で、ドイツはEUに見切りをつけて

ロシアに接近するだろう。


アメリカは、イギリスやトルコなどをそそのかして

ドイツにプレッシャーをかけ、EUでの均衡を図る。


意外と、ここにきてポーランドの自立が鍵となってくる。



10.次の10年で、中国は国内問題に足を引っ張られ、

弱体化し始める。


日本は長期的には、軍事力を増強するが、

次の10年は、国内の経済、人口問題で手一杯となる。


アメリカ最大の懸念材料は、日本だ。

日本のアメリカへの依存度をこのまま出来る限り引き延ばし、

追い詰めないことが重要となる。



11.南米において、世界的勢力になる可能性のある国は、

ブラジルしかないが、そうなるには、まだ2,30年先のことだ。


ブラジルを押さえるには、アルゼンチンを対抗勢力として

育てることが必要だ。


メキシコに関しては、麻薬や不法移民など多くの

問題点があるが、アメリカ国内での低賃金労働において

必要な労力の供給元であるため、今現在は

深追いせず静観し、多少の犯罪にも目くじらを立てないこと。



12.アフリカに関しては、アメリカの地域戦略の対象となる

ような国家はほとんど存在しない。


アフリカでは、少数の主要国が生まれ、世界勢力を

目指すようになるだろう。


アメリカは、国家としてアフリカに深くかかわる必要はない。

企業の取引でもって必要な資源は、現在のところ

問題なく入手できるからだ。


次の10年において、アメリカは、

アフリカへの援助計画を通して、

国際的なイメージアップを図るだろう。



13.これから顕在化する諸問題を解決するための、

画期的な新技術は、2020年代以降にならないと

実現されない。


次の10年で、問題と技術のギャップが拡大する。


新技術に電力を供給するには、

短期的には化石燃料の消費を増やすしかない。

長期的には、宇宙太陽光発電など、

画期的な新技術の開発を、アメリカ国防総省の主導で

進めることになる。