この記事は、中部大学教授、武田邦彦氏のブログから

記事の転載許可を得て、以前ネコペンギンのブログ

『幸せな成功のための魔法の杖』で連載しておりましたが、

2011年2月18日朝、アメブロによってそのブログが

突然削除されてしまい、ご紹介ができなくなってしまいました。


そこで、ウルフペンギンのこのブログで改めて

ご紹介していくことになりました。

なお、本文中の誤字脱字は訂正してありますが、

基本的に内容はそのままにしております。


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3月11日、福島原発が時々刻々、破壊に向かっているとき、

発電所と政府は共に国民に事実を知らせなかった。


1) 発電所長は消防に通報しなかった、


2) 政府は国民に危険を知らせなかった。



しかし、この二つならまだ「準備不足」とか、

「普通に見られる隠蔽体質」とも言えるが、

逃げる方向について政府が発表したとき、

私は「まさか!」と耳を失った。


原子力の専門家ならすべての人が知っていることなので、

「悪意」としか考えられないが、本当だろうか?


・・・・・・


「放射線」というのは「光」だから、

自分の目で福島原発が見えなくなったら、

「福島原発から直接来る放射線は来ない」。


だから「被曝する」のは「放射性チリ」からだ。


原発が爆発するとき、原発の建物は

「天井方向に抜ける」ように設計されている。


これは爆発の可能性のある建物を

設計するときの常道で、「爆発のエネルギーが

原子炉や人のいる下の方に行かないように」という配慮である。


福島原発の水素爆発でも、屋根が抜けてまっすぐ上に

100メートルほど煙(放射性チリ)が舞い上がった。


もし、そのまま無風の「状態」が続けば、

吹き上がった放射性チリの「粒」は

そよそよとそのまま原子炉建屋の中に帰って行っただろう。


でも、現実には無風の状態が

それほど長く続くわけではない。

上空にまっすぐ上がった放射性チリは、

風に流されて徐々に西北(一部は南)に向かった。


その時、政府は驚くべき発表をしたのである。それは、


「放射線の強さは距離の二乗に比例するので、

遠くに逃げれば良い」ということであり、

それを受けてNHKのテレビでは東大教授が、

「10キロ地点から20キロ地点に逃げると、

被曝量は4分の1になります」と解説をしていた。


「かけ算」をせずに1時間1ミリシーベルトを

「レントゲンの600分の1」などと言っていた時代だ。


それを真に受けた多くの人たちは、

「原発から遠くに逃げろ」と思ったのは当然である。


これほど簡単なことを間違えるはずはないから、

どうも「悪意の政府」、「鬼の東大教授」のように見える。


なぜなら、「正しいことが判っていて、

わざと国民がより多く被曝するように指導した」からだ。


原発の事故では「原発を背にして、

遠くに逃げる」のはダメである。


この図を見て欲しい。



ウルペンのドリームピラミッド-放射性物質の飛散と風向き




福島原発が爆発すると、

そこからの放射性物質は風で流れる。

どちらの方向でも同じだが、もし「西北」の方に流れたとしよう。


その時に、政府が「原発から遠ざかれ!」と言った。


国民はまさか政府が悪意を抱いているとは思わないので、

原発を背にして逃げた。


でも、図のAさんは風下に当たっていたから、

逃げれば逃げるほど

原発から襲ってくる放射性物質の中にいた。

事実、逃げたところで粒が上空から降ってきたので、

もと居た場所より多く被曝した。


Bさんも、Cさんも風下には当たっていなかったので、

逃げる必要はなかったが、政府を信じて逃げた。


そうして、Bさんは郡山まで逃げ、

そこで迂回してきた放射性チリで被曝し、

元のところの方が低かった。


・・・・・・・・・


つまり、


1) 風下に当たっている人は、

原発から遠ざかれば遠ざかるほど、長時間被曝する、


2) 「横に」10キロも逃げれば、被曝しない。

つまり「原発から遠ざかる」のではなく、

直角に逃げろということだ、


3) 風下の当たっていない人は遠ざかっても関係がない、


ということが判る。


私が最初のころ、火山の噴煙の動きを貼りつけて

「風下はダメだ」と言い、気象庁に「風の向きを予報してくれ!」

と叫んだのはこのことだ。


気象庁は知らない顔をしていた。

彼らも放射性チリの流れを知っていて、

言わなかったのかも知れない。


・・・・・・・・・


もちろん、原子力安全委員会、原子力保安院は知っていた。

専門家集団であり、普段から

原発のシビアーアクシデント(大事故)を考えに考えているのだ。


こんなことを知らなければ職務が遂行できない。

私は彼らが知っていたことを知っている。


ということは、国民がより多く被曝するように

「放射線は半径の二乗で・・・」と言い、

「遠ざかれ」と言ったと思わざるを得ない。


事実、それを信じた首長さんは

住民を連れて原発から遠ざかろうとして、さらに被曝した。


何ということだろう!


万が一、今回の事故で病気の人がでたら、

政府と安全委員会は「傷害罪」ではないか? 

あちらに逃げれば火傷をすると知っていて、

その方向に逃げるように指示する人などいるだろうか?


何でこんなに大きな間違いをして、平気なのだろうか? 

今からでも修正しておけば、今後も役立つのに、

なぜ謝罪しないのだろうか? 


・・・・・・


今回の事件は、多くの面で、「一体、政府とは何か?」、

「知識とはなにか?」を訴えているように思える。


(平成23年6月9日 午前8時 執筆)

武田邦彦


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核兵器が開発されていたとき、

科学者たちは、自分たちが生きている間に、

あるいは、現役で仕事をしている間に、

どこまで技術的に進歩させられるか気になっていた。


出来れば、他国や同じ国の他のチームに

先を越されたくないという気持ちが強かった。


そして、一旦自分たちの手で開発、製造に成功すると、

今度は、どうしても使ってみたいという誘惑に駆られた。


先ずは、人体にどういう影響が、時間経過とともに

どう現れてくるか、知ろうとした。


その結果、アメリカでは、秘密裏に

被験者に内緒で、プルトニウムを注射するという

実験を行った。


マンハッタン計画―プルトニウム人体実験/著者不明
¥1,835
Amazon.co.jp

(なお、ここで「著者不明」とされているが、

実際は、Eileen WelsomeがAlbuquerque Tribune紙に

発表した記事を翻訳したもので、彼女はピューリッア賞を

受賞している。何故、Amazon.co.joまでが、このことを

隠さなければならないのか?彼女の記事やこの事実を

検索してもらいたくない組織によって、圧力が掛けられた

のだ。)

さらに、爆発したときの影響力、被害度も

確認したくなった。

さらに、実際に、街の上に核爆弾を落としてみたくなった。


かくして、日米での終戦交渉をギリギリ遅らせてでも

何としてでも、日本へ原爆を投下することになった。


その結果、広島、長崎で多くの一般の人たちが

犠牲になった。


無差別に、一般市民を殺戮することは、

「ジュネーヴ協定」違反だったのだが、

政府高官と科学者たちは、実際に使って、その効果を

この目で確かめたい、

将来の敵国、ソ連に対して

自国の技術力を見せつけておきたい、

という強い誘惑に誰も逆らえなかった。


時代は下って、2011年3月11日。


日本国内で、多くの一般国民が被曝する可能性のある

事故が起こった。


防衛省関係者、厚生労働省関係者、米軍関係者、

御用学者たちは、自分たちの「悪意」を隠ぺいしてまでも

被爆者の拡大と、その対応のシュミレーションを

行おうとした。


万が一、北朝鮮が通常ミサイルで

日本国内の原子力発電所を攻撃した場合を想定しての

被害拡散を知ろうとしたのだ。


最大の関心事は、東京への被害拡散度だ。


そこで、あえて被爆者が増えるような間違った情報を流し、

人々を誘導させたのだ。

風向きを一切無視した、「同心円での避難地域指定」。

まさに、福島県の人々は、今回モルモットにされたのだ。


そんなこととは知らない人々は、

事故発生当初の半径2km以遠から、

次に3km圏外へ、そして10km圏外、20km圏外と

避難退避エリアが少しずつ段階的に拡大される度に、

とにかく遠くへ逃げればいいと、

日本政府の発表を信じて移動して行ったのだ。


その結果、被曝しなくてもいい人たちまでも

多数体内被曝してしまった。

その影響が表面化するのは、数年先か

10年先か、誰にも分からない。


こういうことを、あらゆるマスコミが揃って無視している。

「記者クラブ」のせいもあるが、

もはやマスコミから「ジャーナリズム」が

消えてしまった証拠でもある。


ジャーナリストの上杉隆は、

そんな日本のマスコミにとことん嫌気がさして

ついに「絶筆宣言」までした。


「終わり」の始まりである。


by ウルフペンギン