ある肌寒い土曜日の朝、

すき間風の入る講堂で

演劇クラスでの舞台稽古中の私の娘の一人を

立ってじっと見ていました。


今から2,3週間前のオーディションで

彼女はその他大勢の端役に選ばれるはずが

才能ある女優として、

主役に選ばれていたのです。


娘はこのことについては一切話してくれず、

彼女の友人の一人がうっかり喋ってしまうまで

私には、その理由が分かりませんでした。


今回の舞台の監督が新任の監督に

引き継がれたとき、

別の13歳になる女の子が、

その監督に自分の舞台経験について

嘘をついたのです。


私の娘の親友でもあったその子は

私の娘が演じることになったその役を

自分にやらせてくれるよう説得するために

嘘をついたというわけです。

(この事件の詳細部分は、

違っていたかも知れませんが・・・)


私がこのことを

彼女の母(その日のもう一人の見物人)に

気遣いながら持ち出したところ、

彼女は私の話を遮って、肩をすくめながら、

「でも、それが人生じゃないかしら」と、

彼女は軽やかに答えました。

「そうじゃありません?」

(訳注:その子の嘘がバレて、主役から外され

結果的にこの本の著者である、

リン・マクタガードの娘が主役となる)


私は驚きましたが、

彼女の言うことには一理はあると

認めなければなりませんでした。


確かに、それが、我々大人が

自分たち自身で作りだした人生です。

「競争」は、現代の大抵の先進諸国の

社会のまさしくその基本的要素を

作り出しています。


「競争」は、我々の経済のエンジンであり、

それは大部分の我々の人間関係 の

基本だとされています。

(ビジネスでも、近所付き合いでも、

そして最も親しい友人とでも)


例え理由がどうであれ、「競争」は

既存の事実として、真っ先に

我々の語彙(ごい)に浸透しました。


*愛と戦争は手段を選ばない。

*適者生存。

*勝者は、すべてを手にする。

*最も多くのおもちゃを手にして死んだ者が勝者だ。

(1980年代にアメリカで流行った、

自動車のバンパー・ステッカーやTシャツの標語)


「違反する」という、

非常に競争力のある戦術が

我々の子供たちの社会的関係に

大なり小なり、忍び入ってきたことは

それほど意外でもありません。


私は、自分自身の近所付き合いだけでなく、

心理学者が「相対性認識」と呼ぶものの多くが

どんな影響を及ぼしてきたかということについても

考え始めていました。


あなたには、何人の子供たちがいますか?


あなたは、どんな車を運転していますか?


あなたは今年、どれくらい休暇を取りましたか?


あなたの子供は、どこの大学に入りましたか?


彼または彼女の学業成績は、平均的でしたか?


言い換えると、どこで、

あなたは自分の社会的地位を

身にまとうのでしょうか?

(訳注:どういう価値基準で己のステイタスを

判断するのかということ。役職なのか?

家族なのか?車なのか?休暇日数なのか?

子どもの学歴や成績なのか?)


我々の中で最も優秀な人にさえ

小説『アメリカン・サイコ』の主人公、

精神異常者でウォール街の投資家、

パトリック・ベイトマンのような

「内なる瞬間」が潜んでいるのです。

(訳注:心の中に一瞬浮かぶ、邪な考えのこと)


彼は自分の同僚の

洗練された新しい名刺を

警戒心でもって見ながら、こう思うのです。

「オー、マイ・ゴッド、透かしまであるのか」

(この小説は1991年に出版され、

2000年には、メアリー・ハロン監督が

クリスチャン・ベール主演で映画化した。

優秀な投資家には、殺人鬼という

もう一つ別の顔があった)


(つづく)


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参考文献:”THE BOND”


The Bond: Connecting Through the Space Between Us/Lynne McTaggart

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参考DVD:『アメリカン・サイコ』

アメリカン・サイコ ―デジタル・レストア・バージョン― [DVD]/クリスチャン・ベイル,クロエ・セヴィニー,ウィレム・デフォー
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大人自身が競争社会に生きていることは

当たり前のこととして、その中で

勝ち抜いてきた人は賞賛されるという

暗黙の了解が、子ども社会の中でも

当然のこととして今は通用している。


入学試験、おケイコごと、学習塾、学校行事

期末試験、偏差値、IQなどなど・・・。


それでいいのだろうか?


競争社会では、真の友情なんてあるわけない。

『アメリカン・サイコ』でも、主人公の

パトリック・ベイトマンの同僚たちも

食べに行ったレストランの優劣や

取引先でもらった名刺や

オリジナルで作った自分の名刺を見せ合って

自慢し合っていたりする。


それは、時として「プロセス」よりも「結果」

という価値基準となり、

「結果」を出すためには何をやってもいいという

間違った価値観を生み出した。


そう、「ズル」をしたって、「ウソ」をついたって

勝てばいいのよ、というわけだ。


それで、いいのか?


”Bond”は、あの007James Bondの”Bond”と

同じ綴りだが、

ここでは「絆(きずな)」という意味で使われている。


他にも名詞としては、次のような意味がある。


a 縛る[結ぶ,つなぐ]もの 《ひも・なわ・帯など》.
b [通例複数形で] 束縛,拘束; かせ.→
c [しばしば複数形で] 結束; きずな,ちぎり,縁.→
2 契約,約定,盟約; 同盟,連盟.→
3a (借用)証書,証文; 公債証書,債券,社債.→
b 保証人.
c 保証.
d 保証[保釈]金.
4 【建】 つなぎ,(石・れんがなどの)組み積み,畳み式.
5a [種類・個々には]接着剤,ボンド.
b [a ~] 接着(状態).
6 【化】 原子の手,(1 原子の)結合,価標.