牡蠣(カキ)は、1時間10~12リットルもの海水(含プランクトン、ミネラル等)を摂取して成長する。これに対し、蛤(ハマグリ)は1時間1リットルらしく、蛤の10倍だ。
牡蠣は、だから、ひょっとすると、海水中の放射線セシウムを他の貝類よりも多大に採り込んでしまうのではと、気にしてきた。
そもそも、コンタンさんがここ の"生態系における放射性物質の濃縮について”で述べていて、魚類毎に、濃縮係数(業類の放射能濃度/海水の放射能濃度)で決まるとIAEA(国際原子力機関)の文献を引用して、その濃縮係数(*)を掲出していたが、コンタンさんに失礼ながら、素人考えで、牡蠣の場合あてはまらず、とんでもない汚染をしてしまうのではないかと。 *牡蠣がどの分類に入るか私には不明
また、ウェブ上で見かける食物連鎖の恐怖も気になった。
そこで、自分を納得させるために情報を検索してみたところ、次の資料に出っくわした。(他にも様々な文献などいろいろあったが、これが一番良くポイントを整理している。)
水産生物における放射性物質について (pdf)
森田 貴己
水産庁増殖推進部研究指導課
元(独)水産総合センター 中央研究所 海洋生産部 海洋放射能研究室
ここでも、濃縮係数を掲出していて、次を結論づけている。
ヨウ素とセシウムは、水銀や有機塩素化合物などと異なり、食物連鎖を通じて魚体内で濃縮・蓄積しないのだ
(下記の結論では、”放射性物質は”と書いてあるが、この資料ではヨウ素とセシウムのことしか書いてない。)
次は、その濃縮係数を魚種毎に再確認して、牡蠣はどういう位置づけになるのかチェックしてみよう。
参考:
水産生物における放射性物質について の文字を抜き出してみた
1.ヨウ素とセシウム
ヨウ素............固体・気体(昇華性)
I-131 (半減期 8.04日)
セシウム........固体、カリウムと同じ挙動を示し、特定の臓器に蓄積しません。生体内での役割は不明。
Cs-137 (半減期 30.1年)、Cs-134 (半減期 2.07年)
2.食物連鎖を通じて生物濃縮・蓄積しないの?
濃縮係数=生物中の濃度/海水中の濃度
物質 海産魚の濃縮係数
セシウム 5 ~100
ヨウ素 10
ウラン 10
プルトニウム 3.5
水銀 360~600
DDT 12000
PCB 1200~1000000
・生物濃縮はかなり低い。
・食物連鎖を通じた生物濃縮・蓄積はほとんどない。=>なぜ、蓄積していかないの?
3.ヨウ素とセシウム
ヨウ素............固体・気体(昇華性)
I-131 (半減期 8.04日)
セシウム........固体、カリウムと同じ挙動を示し、特定の臓器に蓄積しません。生体内での役割は不明。
Cs-137 (半減期 30.1年)、Cs-134 (半減期 2.07年)
4.海産魚中の塩類の流れ
Cs+、Cl-、K+、Na+、Mg2+、及び137Cs+ が口より飲水と節餌により取り込まれ、鰓と尿より排出
・放射性元素は体外に排出されるので、蓄積していかない。
・魚中の濃度は海水に依存する。
5.海水中と海産魚中のCs-137の関係
グラフ:日本沿岸海水中と魚体内中のCs-137の経年変化
・魚中の放射能濃度は海水中濃度に依存する。
=>海水中の放射能の動きはどうなっているの?
6.放射性物質の排出
Cs-137の生物学的半減期=約50日 (室内実験) 137Cs+
↓
体内に入ったCs-137は、50日後には、半分が排出される。
7.海洋中での放射性物質の動き
8.結 論
・放射性物質は、水銀や有機塩素化合物などと異なり、食物連鎖を通じて魚体内で濃縮・蓄積しない。
・魚体内中に入った放射性物質は、体外に排出される。
・海中に入った放射性物質は希釈・拡散され濃度は、非常に薄くなる。
・大量に海中に入った放射性物質は、凝集沈殿したり、懸濁物に吸着し海底に運ばれる。
・海底に沈殿した放射性物質は、魚に対して 大きな影響を与えない。
8.モニタリングサンプルについて
・Cs-137を特に蓄積する種類はいない→ 県の代表的な魚種を調べれば良い。
・筋肉中の濃度のほうが高い傾向→ 可食部である筋肉(カリウム含量多い)を調べれば良い。