唐突ですが、「RENT」映画の感想を。

今、Disc2の監督・AP・アンソニーの解説を改めて聞いていまして…。

監督と映像監督は、映画の世界から入っているから、一番感動するモーメントを取り違えているんだと強く思った。「ミミが生き返る前に感動のモーメントが必要か?」ってさ、そりゃさ、RENTの感動のモーメントは、♪FinaleBじゃないんだよ。♪Your Eyesじゃないんだよ。

一幕で苦しいながら楽しいボヘミアン人生and交互に意識を与えてもらえる本当のコミュニティを描いていつつ、二幕は、冒頭は楽しいしいいんだけど、どんどんそれぞれの人生が辛く悲しい時を迎えていく。けして彼ら自身が哀しい人間なわけじゃない。ボヘミアンだしコミュニティの絆は強いけれども、でもとても苦しいモーメントはやってくる。それに耐えられなくて周囲にあたってしまうときもある。でもそれでも、やっぱりがんばって生きていきたいんだ。みんなと一緒に幸せに、そしてみんなを幸せにしたいんだ。

でも、二幕は苦しいことも多くて、なんとかがんばってやってきたけど、さすがにAngelの死をきっかけに、これ以上もう頑張れない。今までの我慢というか努力がもう限界になってきたよ…。そこで、喧嘩してしまう、つらい心情を吐き出してしまう♪GoodbyeLove。落ちに落ち切った感情がここで表出される。感情を表出することはとても大事なことだ…。でも、大事な友達までも傷つけてしまう。でもこれ以上、自分の中で感情を抱えていられない。

そんな中で、♪WhatYouOwnだからこその、WYOの感動なんだ、そしてそのあとの♪YourEyesとFinale Bなんだ。

舞台的には全ての感情が♪GoodbyeLoveで落ちに落ちきっての♪WYOがまさに、モーメントな瞬間なんだ。

それが映画製作者には伝わらなかったのかなーって思った。

あと思ったのが、♪GoodbyeLoveで、最後にRogerがSantaFeに行く前にBennyを見かけるところ…。

そういう、トレンディドラマみたいなのはいらないんだよ。タイミングとかたまたま見かけたシーンで相手を疑ったりするのはトレンディドラマの常套手段なんだ。私、ドラマ好きだけどね、RENTはそういうモーメントはとりあえずここでは全く描いていない。

RogerのMimiに対する態度って、Bennyへの嫉妬なのか、Mimiとなんとなくうまくいかなくなったからなのかは、ある意味白黒ついていなかったけど、でも、♪GLでわかるんだと思う。still jealous of Bennyじゃなくて、Mimi's gotten thin, Mimi has baggageなことに傷ついているのがRogerなんだって…。

誰しも、いろんなことがあると、何が原因なのか、自分は何を守りたいのかわからないところがあると思うけど、それが極まった局面では、極まったモーメントではよくわかるんだ。何を大事にしたいかが。それは、Bennyのことなんて実は疑っていない。まあ多少疑っていても、そんなことは、人生から逃げ出すかいなかの局面ではどうでもいい瑣末な出来事だ。それより自分が恐れているのは、Mimiが病気で、Mimiが弱っていて、Mimiがいつか死ぬということ、そしていつか自分も死ぬということ。自分が死ぬ怖さはずっと一人で考えてきて、それは死ぬのなら、それならばこそ、OneSongGloryを作りたいって心から思って居て、今も思っているということであって、でもMimiが死んでしまってはどうやって生きていけばいいのか、という話だと思う。

Bennyへの嫉妬じゃないんだよ。表面の感情と、真相の感情を、きれいに分けて、自分自身を見せてくれるのがRENTなのに、この映画の演出はひどすぎるなあ・・・

ホントの真相の感情を、RENTを見ても気づかない人はいるんだね。
気づく必要がないから気づかないんだろうとも思う。