「映画版RENT」感想の続きです。
You'll See。これは難しい曲だと思う。舞台版だともっとシンプルだけど、映画版だと逆にBennyの方が正しく聞こえる。ただ貧乏な売れないArtistをやっているよりも、せっかく金持ちになったのなら、おされビルを作ってその一階にミュージアムを作って二階以上の賃料収入で生きていく、それってすごいかしこいArtとの共存に思う。
でも、実はそうじゃない。
最初にYou’ll Seeを聞いたとき、Bennyが商業的には正しいと思って、なのになぜRogerさんやMarkはなんともいたたまれない顔をするのかわからなかった。負けたからではない。Bennyに負けたから、あんな顔をする人はいない。そうじゃなくて、純粋に嫌な気持ちがものすごくあるんだろう。自分の立場じゃない、自分じゃない、ただ単にArtとしてのそういう気持ち悪さがあるんだろうと思ったのに、私はArtistじゃないから、初見時はよくわからなかった。
でもそれでもRENTを見てきて思ったのは、やっぱりBennyのやりかたじゃだめなんだろうなと思った。商業主義反対じゃないけど。でもだってただ単に押し付けのスポンサーありきの芸術じゃなくて、もっとクリエイティブな、心からの叫びの芸術をやりたいからこそやっているんであって。かっこつけで芸術をやっているわけではない。
なんとなく町的にかっこいいから芸術をやるといわれたら、それに沿わないArtはどんなに立派でも排除される。なんとなくオーナーがArt好きだからといって一階に自分のArtを展示できていても、オーナーの気に入らなくなればいつでもArtは展示できなくなる。芸術は近代からずっと、もっとまえからずっとそういう道を歩いてきたのだろう。それだけでは稼げないから。でもそうしていたら、大政翼賛会じゃないけど、もっと古くは教会賛美じゃないけど、そうやって権力翼賛しかできなくなってしまう。
そうじゃなくて、心からの思いを描きたいからArtistを目指しているのに、権力者に依拠していたら、どうしようもあないじゃないかっていうのがRENTのように思う。
その点、クリスコロンバスは、権力者に依拠していても問題ないテーマを描いているので、あんな頓珍漢なコメントをするんだろうなと思う。それじゃだめだと思うし、それでも別に生きている分にはいいし、Artistでもいいけど、RENTの精神は全くわかっていないと思うよ、ほんとに、こころから。