2/19夜公演@赤坂ACTシアターL列

見てきました。
楽しかった。感想としては、楽しかった、が一番しっくりくるかな?

エンターテイメント性は抜群。歌とダンスとパフォーマンスと、そして川平慈英の英語のナレーションがまるでショービジネス界の名司会のようなテンポ感で面白く、新納のダンスの美しさ、堀内敬子さんのストレート部分での声色の使い分けで何役もの別人のような演技、堀内敬子さんの歌のすてきさ、そしてやはりなんといっても華のある香取慎吾が見られ、エンターテイメントとしてはすばらしかった。

ただ、三谷はもっと「できる子」なので、脚本としてはもう少し煮詰めたら、もっともっと心にしんみり&楽しく胸に沁みる脚本になったんじゃないかなあと思って、そこがちょっと残念だった。

中盤までは脚本もいい感じで、特に、
・ターロウ(香取慎吾)が、なんで僕をみんなおかしいと思うのだろう、みんな僕をなんで嫌うのだろうと、孤独な心情をうたう場面や、
・歌を嫌っていた堀内さんがふと引き込まれ一緒に楽しく歌ってしまう場面や、
・なんといっても、ターロウとニモイ博士(堀内さん)が心を通わせる場面は、完璧だった。

ターロウとニモイ博士の場面では、
ただ満月が出ていて蛙がいるというありふれた夜なのに、そして「満月なんて…」と言ってしまうニモイ博士なのに、蛙で遊んでしまうターロウなのに、それでもただあなたがいるだけで、なんてこの世界は美しいんだろう。
なんて月は美しくて、なんて蛙はかわいらしくて、そしてあなたがいる…。

と、とてもすてきだった。

この世界はきらきらととても輝いていて、どうしてこんな普通のことがこんなにもすばらしく感じられるんだろう、という思いが伝わってきて、とてもすてきだった。

ただ、英語と日本語の二重化というか、あのすてきな歌を、あえてもう一度英語で繰り返すところから、なんというかテンポが止まった気もする。
でもその後も、ニイロが出てきて三人で歌って踊るところはよかったなあ。

なんか、その辺りで話が終わってしまったというか、一番の盛り上がりがその辺りになってしまって、以降はややダレて、そして脚本としての追い討ちというか、感情のたたみかけがないというか、落とし方はよかったように思うし、明るく前向きでとっても楽しい終わり方でそれはよかったと思うんだけど、そこにもっていくまでがダレたし、深みを感じられなかったように思って、そこからが本当に残念だった。

ダイソン博士(川平)のナレーションについては、あえて英語の方が、ショービジネス界みたいな感じのエンターテイメント性もあったし、面白かったけど、
満月と蛙と二人の歌のところで、英語で繰り返したのはちょっとどうかな、と思った。

あえて日本語と英語とを使うことで、言葉の面白さ的なものを目指したというようなことを聞いたように思うけれども、ミューのリプライズという感じでもなく、ただ単に英語にして繰り返しただけで、なんらかの感情や感動が生まれるというよりは、繰り返しで冗長だったかな、という印象を受けてしまった。

あと、堀内さん、日本語の歌だと、さすが元四季!と思わずにはいられないほどの上手さで圧倒されたけれども、英語がちょっとぎこちなくて、歌になっても英語だとかなりぎこちなかったかな、と。
ただ本当に日本語の歌と、演技がうまい。「コンフィダント」を生で見たかったものです。

三谷もようやく戸田恵子以外の、託せる女優さんが見つかって、よかったね。

ニイロは、「恐れを知らぬ川上音二郎」以来見ましたが、まさかこんなにダンスがうまかったとはしらなかった。ダンスの美しいこと、それはすばらしい。堀内さんも元四季だからダンスができるのに、ニイロは群を抜いて美しいダンスだった。すばらしいダンスです。「RENT」のAngelをやってほしい、とかちょっと思ってしまったw 最高のダンス!!!

川平慈英はエンターテイメント性にすぐれた演技がすごいけれども、この人は、ストレートの方がいいように思う。歌も悪くないけど、演技の方が断然いい。演技がうまい。あとすごくサービス精神が旺盛のようで、玉乗りはおそろしくすごかったけれども(生の舞台で、しかも終盤にあんな疲れることをやるなんて、すごすぎる!!!&三谷は鬼w)、それ以外の細かなシーンの全てでサービス精神旺盛でお客さんを楽しませようという思いが伝わってきて、いい人だなあと見ていて思ったw

慎吾ちゃんは、色々な方面において能力が高いというかポテンシャルが高いなと見ていて思った。

三谷にそのポテンシャルと、「まっすぐな人」を嫌味なく本当にまっすぐに演じられる素質を愛されたがゆえに、SMAPの仕事が忙しいのに重責の大河の主役をやらされて、体力的にもつらかっただろうし、そして力としてもつらかっただろうと思う。「龍馬伝」を見ていても、福山と香川照之の差が歴然としているように、「新選組!」でも終盤まではその他の面子があまりに芸達者すぎたから、差が歴然としてしまっていたし。でもそれでもやはり三谷に愛されるポテンシャルと能力の高さゆえに、最後はキャストの誰よりも輝き、近藤勇よりも近藤勇らしいだろうと思うような、本当にすばらしい憑依しているかのような演技を見せてくれたのと同様に、感想が長くなってきたが、今回も、オフブロードウェイでも公演して日本でも長丁場の公演をやって、それもまともな舞台経験がほとんどないだろうというのに、ダンスと歌とお芝居と盛りだくさんのミュー主演ということで、これは本当に大変だろうと思うけれども、やっぱり持ち前のポテンシャルと能力が高いんだろうなと思った。きちんと一定レベルまで持ってこれている、このポテンシャルの高さ。新納みたいなダンスでもないし、堀内さんみたいな演技でも歌でもないけれども、まず他の人はもっていない華があるし、演技も深みが出せているわけではないものの、一定レベルのクオリティーの演技ができ、歌も一定レベルのクオリティーの歌を歌え、ダンスも楽しくでき、なんといってもターロウにぴったりだった。

「新選組!」の近藤勇、「HR!」の先生、「合言葉は勇気」にとどまらず、あと「新・三銃士」のダルタニアンも、三谷が香取慎吾にやらせたがりそうな役だと思うけど、ああいうまっすぐな懐の深さ、みたいな役が、本当にぴたりとはまる。

普通に話せず歌うようにしか話せず、人に気持ち悪がられ、バカにされつつも、でもターロウにかかれば周りのみんなもついつられて楽しく歌いださずにいられない、そんな明るいまっすぐなターロウにぴったりだった。

でも、人にわかってもらえない悲しさとか、孤独な哀しみとか、そういうのも、慎吾ちゃんはすごくよくはまる。SMAPであるがゆえに、色眼鏡で見られ、あんなに能力はあるのに、「所詮アイドル」扱いされてしまい、単なる客寄せパンダ的キャスティングに思われてしまいがちというところと、リンクしてみえるからだろうか。

すごくターロウにぴったりというか、まあいかにも三谷がこういう役を書きたくて、この役には慎吾ちゃんがぴったりだから配役しました、という感じかな、と思った。

ただ、繰り返しになるけど、終盤に深みが出なかったのはちょっと悲しかったなあ。
他人と違っていたっていいじゃないか、自分らしく楽しく、くよくよ深く考えずに、楽しく気楽に生きていこうという雰囲気は伝わってきたものの、メッセージ性が弱い作品のように感じた。

三谷は、エンターテイメント性や笑える作品を目指していると口ではいいつつも、いつもその奥に心温まるような思いやメッセージを伝えてくれるのに、今作品はちょっとそこが薄かったなあ、と思った。終盤の畳み掛け方が弱いのと、テンポが悪かったのかなあ…。そこがとても残念だった。

「グッドナイトスリイプタイト」の方が格段によかったけど、「音二郎」よりはよかったかな、という感じかと。「オケピ!!」の方がいいなあ。

ただ、興行的には大成功だろうから、「オケピ!!」より興行的によかったかもしれませんが。


あとは、客席の感想としては、Jヲタさんの集会っぽい雰囲気が前面に出ていた感じで、ちょっとそれにとまどってしまいました。
もちろん非常識な人は少なくて、周りに配慮してくださっているJヲタさんが多かったですが、前かがみで見る、舞台中に私語をする、カーテンコールでは「慎吾!」の掛け声、手拍子や拍手をする際は顔の前ぐらいまで手をあげて、隣の客席まではみ出す大きさで拍手するという、まあ舞台ヲタでは見られない光景が。

あと、やまこ舞台でも見られるけれども、客席が率先してもりあげてあげなくちゃ!という思いを客席に感じた。笑うときでも、彼氏の家でバラエティを見ていて、彼氏の前でちょっと意識して「きゃは☆」とかってかわいくわらう感じというか、観劇層とは違う笑い、拍手、手拍子だったな、と思いました。


ああ、あとの感想としては、カーテンコールでの香取慎吾のサービス精神がすごかった。3回ぐらい出てきてくれた上に、客席に満面の笑みで手を振り、蛙の小コント?みたいなのもやっていて、あんな舞台俳優はいないだろう、さすがSMAP、サービス精神がすごいと思いました。

以上です。