昨夜、日曜洋画劇場で放映された映画、『明日の記憶』を観ました。

明日の記憶
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評判は噂に聞いていましたが、地味な映画ながらも感動して、何度も何度も涙を拭いました。


昨年、日本劇場映画市場において、洋画と邦画の興行収益を逆転させた立役者と言っても良いかもしれません。
いいえ、むしろこれまで映画館に足が遠のいていたM3/F3層が劇場に戻ってきたことが大きな意味を持っています。

実はこのポイントは、それに気づかず、いや、気づかないフリをして、ハリウッド大作をそのままスライド方式で上映するメジャー系映画配給会社にとって正念場をいきなり今年迎えることになった、事にも貢献しているのです。
昨年は「パイレーツ・オブ・カリビアン」が劇場でもパッケージ商品(DVD-HE)でも売上数字だけみると突出していますが、それ以外のハリウッド系洋画は、『ハリー・ポッター:炎のゴブレット』くらいしか制作費からみて大ヒットと呼ばれる作品は無かったのです。

ハリー ポッターと炎のゴブレット 特別版
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いい映画はいっぱいあるけど、メジャー系(外資)映画配給会社には本国からの作品につけられた優先順位があって、宣伝費、宣伝時期、宣伝媒体も優先してしまうので、結果的には、良い作品であっても,メジャー(=大作)タイトル作品の方によりに力を入れてきたてしまった、ということです。
特にソニーピクチャーズの戦略は個人的に色々残念に思っています。
(逆にソニーは今年は「スパイダーマン3」「007:カジノ・ロワイヤル」で大儲けですけど。)

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要は、マーケティング先行型で、最初の1週間の興行収益にばかりとらわれずに、良い作品をキチンとターゲット層に伝える努力をして欲しい、そして結果的に日本の映画産業が20代だけのものではなく、もっと広い層から指示され、もっと言えば、1,800円なんてぼったくりはしない成熟娯楽産業にしてね、ってことなんです。

へい、大きなお世話でした。(笑)


「日本人ハリウッドスター」。
最近の謙さんの紹介に必ずついて回る冠ですね。
うーん、うーん・・・。
確かに映画「ラスト・サムライ」でアカデミー賞・最優秀助演男優賞の候補にまでなったのですから、すごいっちゃーすごい。
獲れてたらもっとすごかったけど、もちろん。
でも・・・・。んが、んが・・・。
映画見ましたけど・・・。

ボケーっとした顔目上手でしたか??むふっ目

はっきり言うと、真田広之の方がいい演技してましたよね。
【老けた独眼竜正宗】にしか見えませんでした。
実はオイラ日本で公開される前に海外旅行中にこの映画を見ました。
もちろん日本語字幕はありません。アクションも多いし大丈夫だろうな、と思ってたんですが、英語があまり聞き取れないんです。
トム・クルーズの?
いいえ、渡辺さんの英語が、です。(笑)
あの英語のアクセントは、相当に個人レッスンを積んで努力した跡がうかがえました。
でも、個人的にはそのせいで武将=最後のサムライの威厳が半減して、軽い印象になった気がします。
その上映回の、しかもそこの劇場のお客さんだけにしか言えないことですが、結構若いチャラ男系の現地のお兄ちゃん達もラストシーンは泣いてましたし、何故か帰りのタクシーの運転手にまで「小雪はいい、小雪はいい。」とか"ラスト・サムライ論"を吹っ掛けらたりと、上々の評判でしたけど。

そして実はこの役、元々は役所広司さんに来ていた役だったとのこと。役所さんはギャラに納得できずお断りされたときいています。
・・・本当にもったいないことしましたねぇ~、役所さん!

NHK大河ドラマ「独眼竜正宗」の渡辺謙さんは光り輝いていました。あの頃は個人的に大好きな俳優さんでした。
残念ながらご病気で角川大作映画は降板されましたが、その後復帰、さる女優さんとの不倫報道、元奥さんの借金報道、娘さんの女優デビュー&失敗、色々とグレイな時代もあったせいかな、何となく積極的に好んで渡辺さんの作品を見ることはなくなっていたような気がします。

さて、いつもの通り前置きが非常に長くなってしまいました。
結果的に言うと、オイラの謙さんに対する偏見は50%位は無くなったかもしれません。
というよりもこの人は圧倒的に邦画の方が(←ダジャレみたいあっかんべー)似合います。
『バット・マン』でチョウ・ユンファでも代わりがきくような安い役を受けるべきではないと思いますね。
(戦略的には理解できますが。)

そして『SAYURI』。

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これで決定的に渡辺さん出演のハリウッド映画は見ないことが決定していたのです、オイラの中で。
ですので、昨年この映画が劇場上映された時も、あるご招待を頂いたのですが、お断りしていました。

なので、昨日この映画をTVで観たのはちょっとしたきっかけだったんです。
正直に言うと、本当は特に見たいTV番組が無かったので、たまたま見たというだけでした。
それもあってか(?)、『明日の記憶』の謙さんには驚きました。

広告代理店の営業部長役はすごくしっくり来ていました。
あんな人いるもん、実際に。(笑)

あと脇を固めていた役者も素晴らしかったです。
田辺誠一さん。この人はナイーブで一見冷たいが心根は優しい青年を演じさせると抜群ですね。
袴田くん。何でジュノン・ボーイ優勝者なのか未だに納得いかないけど(大きなお世話だって!笑)、結構仕事をキッチリとしてます。

名優・大滝秀治さん。
最近はヤズヤのCMで「肉が大好きで、野菜は苦手なの。」と子供のようなプチ告白をしていますが(笑)、この人の出てくる山の中で一夜を過ごすシーンは、完全にファンタジーで素敵でした。(かなり黒澤映画チックでしたが。)
焚き火の前で大滝さんが叫んで言う台詞。
《《俺はボケてなんかおらんっ!ボケているかどうかは自分が決めるっ!!》》


この映画の裏のテーマはおそらく【家族愛】だと思うけど、この台詞は多くの人に勇気を与えたと感じました。
それにしても『特捜最前線』の時からおじいちゃんに見えたけど、今いったいこの人はいくつなんだろう???
声はめちゃくちゃ出ててハリもありましたよ~。

そして日本の宝石・樋口可南子さん。
この人の演技の素晴らしさと言ったら、毎回感動します。
主婦、有能なキャリア・ウーマン(表現古い、ですね。笑)・・・どんな役でどんな汚い台詞を吐いても、決して下品にならない。
そしてあの天才・糸井重里さんのご細君。
樋口さんは、大竹しのぶさんと並んで「天才」と称されるべき日本の女優さんだと思います。

映画自体は特にインパクトがあったり、奇をてらった仕掛けなど全くありません。
ぶっちゃけていうと、火サス系2時間TV番組でも十分行けるんじゃないかとさえ感じます。
それにも関わらず大ヒットしたのは、やはり現代の日本を象徴する社会を反映している映画であったことと、口惜しいけどオイラの認識を改めなければならないくらい、
渡辺謙さんのプロデュースの才能が素晴らしかったからだと思います。

なのでレンタルでも全然問題のないタイプの映画ですので、見逃されて気になっていた方にはおススメです。

オイラが泣けて泣けて仕方なかったのでは、最後に創作の結果、山に夫を迎えに行った妻が、決定的な状況に慌てながらも夫の状態に合わせて返事をするが、思いあまって泣き出してしまう。
それを不思議そうに、でも優しいまなざしで見つめる、まるでであった頃の若い二人がそこにいるかのごとき演出には感動しました。
そしてその二人を大きく包み込む、ずっと以前からそこにあった変わらない深い緑の夏の自然。家族の愛。


素晴らしい映画でした。