沢田研二さん
ロックだぜ!
いや、ロックスターだぜ!
「たとえお客さんが一人でも俺は歌う」って言っている人も凄いけど、実際に客が一人ならレコード会社やプロモーターはライヴを認めない。「無理」。そしてアーティストは生活できない。
集まった7,000人のファンの方々は本当に残念で仕方なかったことについては本人も謝罪しているとおり、悪い結果を招いてしまったと思う。
私も過去にバンドでツアーに出始めた頃、お客さん4人の前で演奏した事がある。バンドのメンバーは5人だったので客より演者の方が多かった。ロックバンドだったのでお客さんの方が緊張している様子だった。(ボーカリストは激しくお客さんを煽るしね。)
沢田研二さんのライヴ中止の結末は「ロックだぜ」という言葉に尽きる。
ファンではない人たちは沢田研二を忘れかけていたり、知らなかったりしてきていたでしょ?
今回の件で結果として「沢田研二が70歳でツアーをしている」事が多くの人に知らされた。
そして多くの人たちが(それが否定的な発言であっても)色々な熱心な発言をしている。
Yahooだけでも、のべ7,000件近くのコメントがあり、その多くは否定的、そして幾つかは過激な発言だ。
これがどういう意味か分かるかい?
その結果音楽のダウンロードサイトではダウンロード数が急上昇している。
この出来事はものすごいプロモーションになったと思う。テレビ各局や新聞などでこれだけ取り上げてもらえたのだから。普通であればこれだけのメディアに一斉に報道されることは無いからね。
どうであれこれが沢田研二さんの「意地」の結果なのだ。
まあ、昨年たけしさんがテレ東の生放送を無断欠席したことがあったけどあれも凄かった(昨年たけしさんは70歳でしたね)。 日本の70歳!尖がっていますね。
今の若い人は上品だからできないかもしれないね。
昔なら、例えば「気分が乗らないからギターを放り投げてライヴを中止した」なんていうことを耳にする事があり、ファンはそのような貴重なライヴに足を運んだ事を自慢げに貴重な経験として話していた。
SNSに書かれているように、やりたくない気分や事情があってもやるのがプロだという言い方も正しいと思う。「Show must go on.」
しかしやりたくない気分や事情がある中で不完全なものを見せたくないからやらない(お金の問題に限らず)、完全な形で完全なショーをする事ができないならやらないというプロとしてのプライドも持っていなければならない。
つまり(契約どおりに事が進んでおらず)気持ちが不安定だけど「ヤッツケ」で適当にやってしまう事は無理、というのが今回のトリガーになっていた訳で、それを否定する事はできないと私は理解している。(まあ、仕事を言いつけどおりにやらされているタイプの演者は「適当」なスタンスでやっていても許される雰囲気を私は勝手に感じるのだが。)
今の時代、例えば俳優たちが映画公開のタイミングで全く関係の無いバラエティー番組で宣伝するのが通例になっているけど、あれはなんて言うか媚を売っているようで“カッコ悪い”と思う。普段は縁の無い芸人さんたちの土俵に入っていって、しばらくの時間面白おかしい雰囲気をかもし出し、それと引き換えに宣伝をさせてもらう。(普段からそのようなスタンスではない人が芸人さんの真剣な仕事場と時間を借りているわけだ。) もちろんプロモーションは大事だと思うけど、ならば映画のCMをガンガン流せよ、と思う。
俳優さんたちがバラエティーに出ることは否定しない。企画が面白ければそれなりに楽しめる。その場合は単にゲストとして出演して宣伝なんかしないで欲しい。(これについては萩本欽一さんが昔そのような発言をしていたように記憶している。そして私は全くそのとおりだと思う。)
昔はロックコンサートを見に行く時、チケットは買ったものの本当にあのアーティストが今日この街に来ているのだろうか?なんて思いながら足を運んだものだ。昔の常識を押し付けるつもりはないが・・・。
危険な奴がかっこ良かったからね。だからこそ何が起きるかわからない。ワクワクできた。そして新しいものが生まれ長きに渡って語り継がれた。
今はSNSの時代。そして平和で「みんな仲良く」の時代。誰かが困っていたら平等に助けようと考えること「も」できる人たちが増えてきた。素敵な時代。 その反面、セクハラやパワハラなど被害に対する感情にも過敏に(必要以上に)なっているように思う。
だからこそ、予定されていた事が予定通り(思い描いていた通り)にならないと「被害」にあった気持ちが生まれる。
そして、今の時代はそのような優しい人が多いので、関係ない人たちもまるで自分が被害にあったかのように声を上げ攻撃的な声を上げる。
これ自体は否定すべき事ではないのかもしれないけど、裏を返せば多くの人たちをそのような方法で簡単に「コントロールする事ができる」時代であるということ。
分かるかい?
自分の目で見て、自分の耳で聞いて、自分の意見を持つ事が重要である事を、この時代だからこそ忘れたくないね。
「意地っ張りがかっこよかった時代」がシンプルで好きだ。ロックだぜ!
#沢田研二