「いつもまにか暦のうえでは冬になったんだよな。まだ秋の味覚を楽しんでいないというのに」
「さっき甘栗を30個もたべたばかりじゃないの。たしかにまだ暑いから、秋の気配は感じないけど」
「夜はさすがに空気が冷えこんでくるいいが、前のBBQではすっかり日焼けしちゃったぞ」
「雨よりかはいいじゃない。そういえば、そろそろ町内会の運動会にお呼ばれするころだけど」

それほど町内行事に関わってはいないが、運動会は別である。自身の体力チェックが必要だ。

「どうせ参加賞狙いなんでしょ。それに走ったあとのビールが目当てだって、わかってるからね」
「まあ、そういうなよ。なんにしても青空の下で体を動かすのはよい。そのあとの喉越しの刺激もな」
「いつも二人三脚しか出てないけど、たまには別のに登録してみたらいいのに。借り物競争とかね」

そこは彼女を参加させたいからだ。汗を流しながら二人で何かをやり遂げるのは、記憶にのこる。

「ありがと。私も最近は運動してないからなあ。文字どおり、足を引っ張っちゃかもしれないわよ」
「まあ、それはそのときだ。いっそのこと、ベストなタイミングで転んでみようか。注目されるぞ」
「そんなので目立ちたくないわ。でも、ひさしぶりだからちょっと練習してみたいわね。いいかしら」

なんだかんだいって、やる気をみせてくる。さっそくビニールテープで足首を巻いて、肩に手をやる。

「まずは、ゆっくりとな。イチ、ニ、イチ、ニ、イチ、ニ、と。おい、なんで両手を俺の腰に回すんだよ」
「うん、ちょっと疲れるのよね。あなたって無駄に大きいから、肩に手を回すと腕がダルくなるのよ」

最初から腰に手をやってたくせに、何をいいやがる。人生の二人三脚もこんな感じになるかもな。