「じつはさ。最近、ちょっと友人の相談にのっていてね」
ようやく話をきりだしてみた。
この複雑な状況を口だけで説明するのはむずかしく、図を書きながら伝えた。
ときおり深いうなずきをしながら、彼女はじっと耳をかたむけていた。
「そんなことに巻きこまれていたの。だから私の話を聞きたがっていたのね」
「巻きこまれるというか、目がはなせない状況にね。なんとかしてやりたいんだけど」
「これは純粋に彼女の問題だから、他人のあなたがどうこうすることじゃないわ」
「それはわかってるんだけどね。でも目の前で泣かれては、男の面子がすたるというか」
「・・・彼女を愛しているから?」
突然のセリフに、すこし言葉をうしなった。
いままで否定していたはずの想いが、一気に噴きだしそうになった。
一緒に夕食をとるようになってから一年半、ほのかな想いがなかったわけではない。
ただ、いまさら愛や恋だと騒ぐ歳でもないし、この関係が単純に心地よかった。
「わからない。正直、この想いが恋愛と一致するかは判断つかない」
「私と旦那のように、つかず離れずがいいってことかしら」
「彼女の妊娠をしる前まではね。ただ今は、どれが最善策になるかだけを考えている」
「あなたはどうしたいの。彼女と結婚したいの?」
「話が飛躍しすぎだよ。カオスな状況を整理したいだけさ」
「それは、あなたの心が混乱しているだけじゃないかしら」
痛いところを突かれた。たしかにここ数日、自分の思いが複雑に絡みあっている。
たんなる彼女への同情心か、それとも別なものが深くきざまれてしまったのか。
しばらく言葉につまっていると、彼女がさとすように語ってきた。
「私がこんなこといえる立場じゃないけど、無理に型をはめる必要はないのよ」
「それはどういうことかな」
「幸せの基準なんて、一人ひとり違うってこと。いまの私と彼との関係のようにね」
「籍を入れないまま、暮らし続けることが?子供はどうするつもりなの」
「愛情と責任さえあれば、誰が育ててもいいんじゃないかな。息苦しくなければね」
息子の写真を眺めながら、一息つく彼女。そこには強い意志を持つ母親の顔があった。
(つづく)
ようやく話をきりだしてみた。
この複雑な状況を口だけで説明するのはむずかしく、図を書きながら伝えた。
ときおり深いうなずきをしながら、彼女はじっと耳をかたむけていた。
「そんなことに巻きこまれていたの。だから私の話を聞きたがっていたのね」
「巻きこまれるというか、目がはなせない状況にね。なんとかしてやりたいんだけど」
「これは純粋に彼女の問題だから、他人のあなたがどうこうすることじゃないわ」
「それはわかってるんだけどね。でも目の前で泣かれては、男の面子がすたるというか」
「・・・彼女を愛しているから?」
突然のセリフに、すこし言葉をうしなった。
いままで否定していたはずの想いが、一気に噴きだしそうになった。
一緒に夕食をとるようになってから一年半、ほのかな想いがなかったわけではない。
ただ、いまさら愛や恋だと騒ぐ歳でもないし、この関係が単純に心地よかった。
「わからない。正直、この想いが恋愛と一致するかは判断つかない」
「私と旦那のように、つかず離れずがいいってことかしら」
「彼女の妊娠をしる前まではね。ただ今は、どれが最善策になるかだけを考えている」
「あなたはどうしたいの。彼女と結婚したいの?」
「話が飛躍しすぎだよ。カオスな状況を整理したいだけさ」
「それは、あなたの心が混乱しているだけじゃないかしら」
痛いところを突かれた。たしかにここ数日、自分の思いが複雑に絡みあっている。
たんなる彼女への同情心か、それとも別なものが深くきざまれてしまったのか。
しばらく言葉につまっていると、彼女がさとすように語ってきた。
「私がこんなこといえる立場じゃないけど、無理に型をはめる必要はないのよ」
「それはどういうことかな」
「幸せの基準なんて、一人ひとり違うってこと。いまの私と彼との関係のようにね」
「籍を入れないまま、暮らし続けることが?子供はどうするつもりなの」
「愛情と責任さえあれば、誰が育ててもいいんじゃないかな。息苦しくなければね」
息子の写真を眺めながら、一息つく彼女。そこには強い意志を持つ母親の顔があった。
(つづく)